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この作品は二大禁です。全てがフィクションであり、実際に存在する方々や団体などとは一切関係ありません。ありがたいことにコメントを頂ける際は、伏字など対策をお願いします。ルールを守って楽しみましょう。
また、書いていることの意味が分からない方は閲覧を控えてください。
cp: 玖村×海
あな奪から玖村、ナイトフラワーから海のクロスオーバー作品です。
書きたいところだけサッと書いたので、ストーリー分かりずらいかもしれません。
ナイトフラワーのネタバレが多く含まれます。
ご注意ください。
(自我であんなこと言ったのに、結構投稿しててすみません……詐欺みたいになってしまってる…………)
ふら、と体が揺れる。
風が当たり、体温は見る間に下がっていく。
鉄の柵を掴み寒さに耐えようとするも、今から己がしようとしている事を考えたら自然と柵から手を離した。
「ぅわ……っ」
一際強い風が吹かれた瞬間、足がたどたどしく動き、ズレた。
ヒュッ、なんて音と共に眼下を見れば、数百メートルは確実に離れている遠い地面が見えた。
その時自身の心を支配した感情は、救いを待つ待望のみ。
やっと、報われるのだ。
やっと救われる。
やっと……、俺も、そっちへと、
「おはよう、毅」
「…………ぁ?」
目が覚めたら、病院の一室にいた。
意識がブラックアウトした後、なにがあったか俺は今、海くんを目の当たりにしている。
じゃあ、死ねたのか。
ぽろぽろと己の瞳から零れる涙をそのままに、俺は今傍に居る海を目いっぱい抱きしめた。
海くんは、大人しく俺に抱きしめられた。
「俺、おれ、会いたかった」
「うん」
「海くんにずっと”、……ッよかったぁ…!」
「……な、毅」
「なに」
「目、開けてよ」
「……は、え?」
海くんは妙なことを言い出す。
目を開けて?俺はとっくのとうに目を開けている。
この目は確かに、海くんを捉えている。
「毅はさ、疲れてんだよ」
「何言ってんの……?」
「俺が見えるのはほんとはおかしいって、気付いてるだろ」
「ちがう……海くんはここに……」
「俺は、毅に生きていて欲しいの」
「…………」
まるで話が噛み合わない。
なんで、海くんは喜んでくれないの?
だって俺たち、久しぶりに再会したんじゃん。
あの日海くんはさ、また明日なって言って、どっか行ったじゃん。
海くんがいつも居た場所に行ってもさ、そこには拭ききれていないような乾いた血の跡しかなかった。
ラーメン屋の割引クーポン、俺持ってたんだよ。
海くんと行くのを楽しみにしてたの。
餃子も付けたりとか、さぁ。
また笑って海くんと過ごしたかったの。
海くんと同じ場所で働いていきたかったの。
海くんとなら、俺はまだ人生諦めずにいられたの。
「やだよ」
「俺は、おれはまだ海くんと一緒にいたい」
「もう、一人にしないでよ」
「やだよ、いやだ……」
あまりに弱々しく、情けない声音で海くんに縋りつく。
仮にも成人してる男性がすることとは思えないけれど、それどころじゃないんだ。
俺は……ただ、嫌なだけなんだ。
「……なあ毅」
「なに……」
「海見に行こうぜ」
「は?海……?」
「そう。海。今の海は何色かな」
「……海は青色だろ」
海くんは居なくなる前、青色ではない海を見たことあるんだと言っていた。
当時はふぅんと返して気にとめなかった。
その時言っていた色は、確か。
「俺さ、毅とならまた紫色の海が見える気がするんだ」
「…………」
海くんが長年恋している女性、たまえさん。漢字は知らないし会ったことも勿論ないけれど、海くんは昔たまえさんと一緒に海を見に行って、その時の海の色は紫だったそうだ。
そんな特別な海くんの思い出を、俺となら更新できる気がする。そう言ってくれたのか、海くんは。
「……分かった」
「!」
「一緒に、海行こう」
「……ふはっ。ありがとな、毅」
そして場所は病院から一転。近くにある海に、二人でやってきた。
「ねえ海くん、まじで寒いんだけど」
「いいじゃんか。海なんてそんなもんだし」
「知らないよ、海なんて行かないもん」
気付けば時刻は夕刻で、海は一層深い色を示していた。
落ちていく太陽の光に乱反射し、水面に浮かぶそのキラキラが、どうも眩しくて目を細める。
しかし、見なければと思った。
この景色を、俺は目に焼き付けなければならない。
グッと目を開き、懸命に海を見る。
海は……何色か。
そう思えば隣にいる海くんが口を開いた。
「紫じゃなかったなぁ」
「……そうだね」
「毅となら見れると思ったんだけど」
「期待外れでごめん」
「どんな理由で謝ってんだよ」
惜しくも海は、紫色ではなかった。
海くんが望む景色を俺が見せられなかったその不甲斐なさに思わず謝る、けれど海くんがそれを必要としている訳はなかった。
「……なんか食べに行こうぜ」
「親子丼はナシな」
「いや、ラーメンももう飽きた」
「なんだよ、餃子もつければいいじゃん」
そしていつもと変わらない会話をするのが、楽しかった。
いつもと丸っきり違う幻想的な景色に包まれながら、飯の話をする。
なんて贅沢で、なんて素晴らしいんだろう。
気付けば、俺の海くんに対する執着を忘れていた。
だって、海くんはそばに居るから。
「…………ぁ」
目が覚めたら、俺は病院の一室にいた。
俺は知っている、この部屋を。
ついさっきまで、海くんとそこに居た。
でもそこから移動して海に行ったはずだ。なんで俺は、またここに?
…………夢だった?
「目が覚めましたか、玖村さん」
「……は?」
ガララ、と扉が開いて見えたのはどうやら医者の先生。
俺の容体を確認してベラベラと説明しているが、聞く気になれない。
それよりも、俺の頭の中にはさっきまで海くんといたあの景色がこびり付いていた。
「今日一日は安静にしていてくださいね」
「はい、はい……」
「それでは、失礼します」
何も聞かぬまま適当に返事すれば、先生は適当に去っていった。
「行かなきゃ」
俺は先生が出ていった扉をすぐさまガラリと開け、さっき見た夢の中にはなかった病院から出る道を探り探り歩いていった。
そしてやっと出れたかと思えば、空は夢で見たよりも暗くて太陽は今にも沈んでいる瞬間だった。
間に合わない。いそげ、間に合わない!!
無我夢中で走って、走って、走って。
分からない道も突っ切って、ついたのは夢で来たあの海。
道も何も知らないはずの俺がまたこの海に来れたのは、奇跡に違いなかった。
バッと上を向けば、そこにあったのは俺が求めていた景色…………よりも綺麗なものだった。
「…………むらさき、だ」
海は夢よりもずっとずっと深く、引き込まれるような紫の水面だった。
海に沈みゆく太陽の光が水面に乱反射し、キラキラと光るその景色は、身体が震えるほどに幻想的だった。
海くんは、この景色をたまえさんと見たのだ。
それはとても忘れられないものであったに違いない。
それと同時に悔しさが込み上げた。
俺はこの景色を、夢で海くんと見ることが叶わなかった。
こんなに素晴らしい景色も、海くんと一緒じゃなければ、俺一人では…………。
……この景色を見せてくれたのは、海くんだ。
海くんと海に行くあの夢を、もし俺が見ていなければ、俺は紫色の海を拝むことは一生できなかっただろう。
俺は最後まで海くんに貰われっぱなしだった。
俺は海くんに紫色の海をもう一度見せることはできなかった。
でも、でも。
俺が海くんに恩返しをするには、きっと俺が生きるしかないのだ。
海くんがいなくても、俺は生きるしかない。
だってそれが、海くんへのほんの少しの恩返しになるのかもしれないから。
海くんは夢で言っていた。俺に、生きて欲しいのだと。
ならば生きてみよう。
また一人になっても、今度こそ俺に何も無くても、生きてみよう。
そう思えるのは、やっぱし海くんのおかげなのだ。
海は気付けば紫ではなく黒に染まっており、太陽ももはや主張を弱めている。
海くん。お前は、俺の太陽だよ。
だからさ、
「見ててね」
俺の、不格好な生き様を。
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