朝起きて、学校へ行って、勉強して、帰ってきて。
そんな日常のはずだった。
異変は日常を侵食し、普遍的な日々は消え去って行った。
こうなったのはつい1週間前のこと、
初めは視界に自分と全く同じ姿をした人が見えた気がした。しかし、自分はいつも制服を着ているし、単なる見間違えだろうと思っていた。
けれど、異変は収まることを知らず、「彼女」はより鮮明に私の目に映るようになった。
そして異変から3日後、「それ」はぱたりと見えなくなった。
そしてそれから4日経った今も「それ」が見えることはなく、今もゆっくりと家路に着いた。
両親のおかえりという声に答えながら、自室へと足を運ぶ。
肩にかけていた鞄を下ろし、閉ざされたモノを開けた。
「それ」の中にいるのは……
四肢を切断され、もがき苦しむ
「私」だった。
「やぁ、気分はどうだい?」
四肢のない私に「それ」は話しかける。
「なんで…こんなこと…」
絞り出すような呻き声で答えた。
「ずっと言ってるだろ?ほら、今日の記憶も共有してやるよ。」
「それ」は私の頭を掴む。電流のような衝撃が走る。
「誰も私がお前になりかわってるなんて気づいていない。残念だったな。」
「それ」は不敵な笑みを浮かべた。
「うぐ…こんなもの…」
必死に抵抗する。
「おいおい?あんまり暴れると傷が開くぞ?」
焼けるような痛みと、恐怖と、孤独感に涙が止まらなかった。
「まぁ好きにすればいい。どうせ無駄だ。
それより、今日の分をいただくぜ?」
それの手が触手のようにうねり刃物のような形になる。考える暇もなく、足の塞がりかけた傷を切り落とすかのように切断された。
鮮血が溢れ出し、痛みで気を失いそうになる。
しかしそれは容赦なく全ての手足を切断した。
急速に失われる血液に意識が沈むつつも、この地獄のような日々が終わり、悪夢から覚めることを願わずに居られなかった。完全に意識を失い、生命活動を終了した「私」だったものに、
「あれ?死んじゃった?まぁ脳さえ傷つかなければ修復できるからいいか。じゃあね、偽物くん。」
と、言い残し、空間は閉ざされた。
闇の中、徐々に再生する体に嫌悪感を抱きつつも、生きずにはいられない自分を呪いながら、
存在を失ったモノは眠りについた。
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