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「おまえさ……」
「はい?」
「いや、いい」
「言いかけてやめないでくださいよ、気になります!」
瞬時に今後の展開を悟り、言葉を飲み込んだというのに、宮本は橋本の耳元で騒ぎたてた。
「陽さん、そうやってわざと意地悪して、俺の気を惹こうとしてますよね?」
橋本を見つめる宮本の視線は、言わないと何かするぞという、脅しのようなものを感じさせる。
「別に意地悪じゃねぇよ」
「だって好きな人の言葉は、どんなものでも気になるのに。俺が同じことをしたら、知りたくて堪らないでしょう?」
「どうだろうな」
言いながら視線を逸らして宮本から逃げると、わざわざ耳元に顔を寄せてきた。
「もういいです。意地悪な陽さんなんて知らない!」
宮本は大声で叫ぶなり、握りしめていた橋本の手を放り投げ、ぷいっと背中を向ける。
そこまで怒ってる感じは伝わってこなかったものの、直前までイチャイチャしていたので、余計に寂しくなった。
「雅輝……」
逸らしていた視線をもとに戻すと、大きな背中が目に留まる。その肌には自分がつけたらしい、爪痕がくっきり残っていた。散々感じさせらて、しがみつくように宮本に抱きついた記憶がある。
「…………」
宮本を傷つけないようにすべく、きちんと爪を短く切ったはずなのに、残ってしまったひっかき傷は、橋本の中にある黒い部分を引き出すものになった。
「今の愚痴、江藤ちんに報告するんだろ?」
恋人を傷つけたくないのに、言いたくないことをわざわざ告げてしまう、自分の不器用さに、イライラが増していく。
「どうでしょうね」
橋本の言葉を真似したのか、同じ対応をされてしまった。
「あのさ、俺……」
「――なんですか?」
「ふざけていないと、つい口走りそうになってさ」
渋々橋本が話しかけたら、ちょっとだけ顔を向けた宮本。見つめられるその視線に耐えられなくて、まぶたを伏せながら言の葉を紡ぐ。
「雅輝が好きだって言いそうになるんだ。その……変なタイミングで気持ちが込み上げるってゆーか、脈略もなく言いたくなるときがあって、すげぇ困ってる」
橋本は一気に言い終えたあとに、ぶわっと頬が熱くなるのを感じた。
「なんですか、それ」
「なんですかって、そんなことばかり言ったら、ウザすぎると思われても嫌だし、さ」
どうにも堪らなくなって、視線を彷徨うように動かすと、はーっという大きなため息をつかれてしまった。
「俺が陽さんのこと、かわいいって言うじゃないですか」
「ああ……」
しょっちゅう言われてるので、なんだかなぁと思っていた。
「本当は好きって言いたいんです」
「ぶっ!」
「でも好き好き言いすぎて嫌われたら困るなぁと思って、かわいいに変換してました」
宮本は瞳をくちゃっと細めるなり、縮まっていた距離を埋めるように、橋本の躰に抱きつく。じわりと伝わってくる体温に、橋本は心の底からほっとした。
「陽さん、大好きです!」
「わかってるって。おまえの気持ちは、ケツに当たるブツと同じだって、言いたいんだろ?」
なんのタイミングで大きくなったのかわからない、宮本自身に困惑しながら、息つぎもままならない状態で告げるしかなく――。
「陽さんだって、ほら……俺と同じになってるじゃないですか」
あっと思ったときには、隠す間もなく触れられてしまった。
「陽さんの、しゃぶって可愛がってもいい?」
「だっ、ダメだ。おまえのフェラで、すぐにイっちゃうかもしれないから」
「我慢せずに、イけばいいのに」
言いながら相変わらずお触りを続ける宮本の両手を掴み、なんとか動きを封じることに成功した。
「雅輝と……一緒にイきたい」
「陽さん?」
掴んでいる自身の手に力が入り、宮本の手ごとカタチが変わってしまったモノに触れているため、いやおうなしに快感が駆け巡ってしまう。
「大好きなおまえと一緒に感じて、愛されながら一緒にイきたいんだっ」
告げたことや躰の事情が恥ずかしすぎて、顔から火が出そうだった橋本。真後ろで宮本が嬉しそうに、くすくす笑う。
「んもぅ、陽さんってば卑猥!」
「ど、どこがだよ?」
「だって陽さんの中を、俺のが出たり挿いったりして、散々感じさせるってことでしょ?」
「うっ。ま、まあな」
「卑猥だけど、一緒に感じられるのってやっぱり、愛し合ってるなぁって思えるよね。陽さん、こっちを向いて」
宮本の両手を拘束していた自分の手の力を抜き、モゾモゾしながら寝がりして対面する。