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宮本と視線が絡まった瞬間、さらに頬の熱を感じて、思わず顔を俯かせる。
「いつもの男前の陽さんもいいけど、照れてる陽さんも大好きです」
「……てっきり、かわいいって言うのかと思った」
上目遣いで宮本を見つめると、目の前にある唇がにゅっと尖がった。明らかに宮本の機嫌が悪くなったことについて、ヤバいと思ったもののすでに遅し。
「俺がかわいいを言わずに、自分の気持ちを告げたことを、陽さんに褒めてほしかったのに」
不機嫌にさせるつもりがなかったため、橋本は変な焦りを感じてしまった。額に、変な汗がじわりと滲んでくるのを感じる。俯いているため、それが流れ落ちてくるんじゃないかと、無駄な心配をした。
「だってこんなふうに、好き好き言われ慣れてないから、困ってるっていうか」
「だったら――」
宮本は俯いた橋本の顔に、両手を優しく添える。鼻先まで顔を寄せて、にっこり微笑んだ。
「陽さんも好きって言えばいいだけですよ、言ってください」
「えっ、す、す…す、好きぃ?」
ひっくり返ってしまった橋本の声。そんな言葉を聞いているのに、宮本は目尻を下げて、あからさまに喜ぶ。
「陽さん、もっと言ってください『雅輝が好きだ』って」
「さっき言ったろ……」
「言われ慣れる前に、陽さんが言い慣れてください。そしたらきっと俺が言っても、そこまで照れたりしないと思いますよ」
説得力がありそうで、実際はどうなのかわからないものの、言わないと先に進まないことが容易に想像ついたから、意を決して口にしてみる。
「……雅輝が好き」
「俺も陽さんが大好きです!」
「俺のほうが雅輝が好きだ」
告白することに神経を集中していたため、思いっきり無防備だった。宮本はそのタイミングを計ったかのように、ふたたび橋本自身に触れる。
「んっ、ああっ!」
「まだまだ足りない。もっと言ってください」
橋本の耳元で告げるなり、かぷっと耳朶を甘噛みする。唇を使って柔らかく噛む行為に、次第に息があがっていった。
「そ、そんなこ、と、された、んじゃ、言えねぇ、って」
感じるように自身に触れる行為と、耳を愛撫する宮本に、橋本はなすすべがなかった。躰を震わせながら、抵抗の言葉を発する。
「まっ、雅輝っ…そんなに、するなって」
「したいよ、もっと感じさせたい。乱れまくる陽さんを見せて」
「乱れまくってるとこ、ンンッ、あぁっ恥ずかしぃっ」
なんとか逃げようとした瞬間に、仰向けにされた。すかさず跨った宮本は、橋本の両肩をベッドに押しつける。
「恥ずかしがることなんてない。俺だけしか見てないんだし」
「だけど……」
「これから先も、俺だけしか見ないんだよ。それとも陽さんってば俺に飽きちゃって、他の人とこういうことをしたいわけ?」
「それはない」
断言した橋本を見降ろす宮本は、無言のまま左手を優しく掴んで、じっと眺める。大切なものを扱うような所作に、橋本の胸がどくんと疼いた。
「雅輝?」
「ここにお揃いの指輪をつけて、ずっと一緒にいるんだなって考えたら、すごく幸せを感じちゃって」
「指輪をつける以前に俺の心は、おまえに縛りつけられてるけどな」
宮本は掴んでいる左手から、橋本の顔に視線を移した。注がれる視線から真実を見極めようとしているのを感じて、口にせずにはいられない。
「雅輝、おまえ以外欲しくない。俺と結婚するのはおまえだけだ」
「あ~っ、俺が言おうとしたセリフを、陽さんに言われた!!」
「今くらい、年上の俺に花を持たせろよ。いいだろ?」
瞳を細めてにっこり微笑んだ橋本に引き寄せられるように、宮本は顔を寄せた。
「その代わり、エッチなことをするときは、俺が優位に立たせてもらいますよ?」
「いっつも優位に立ってるだろ。俺が嫌がってるのを知りながら、いろんなことをしやがって」
「俺としては、嫌がることをしてるつもりはありません。だって愛してるから」
クスクス笑いながら、熱い口づけを交わしたふたり。このあと、一緒に指輪を買いに行く約束をしたのだった。