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翌日、学校。
京介は匠海を避けるように行動していた。
話しかけられても「今忙しいから」で片付ける。
一方の匠海も、いつもの柔らかい笑顔を周囲に見せながら、京介にだけ距離を置いていた。
「なぁ、あの二人ケンカしてない?」
「昨日まであんなに一緒だったのに」
周囲のざわめきに、京介はますます苛立つ。
(俺が意識しすぎてるだけだ……そうだ、ただの兄弟……なのに)
でも、視線の先にいる匠海が女子と談笑しているのを見るたび、心が痛む。
家に帰ると、リビングに匠海がいた。
二人とも気まずい空気のまま夕食を済ませ、無言で片付ける。
京介が背を向けたとき、匠海がぽつりと。
「京介……俺、やっぱりお前に嘘つけへん」
京介は振り返る。匠海の目は真剣そのものだった。
「“兄弟やから”って理由つけて、自分の気持ち誤魔化してた。でも……もう限界や」
京介の胸がドクンと跳ねる。
「……っ」
「俺、お前を弟以上に見てる」
静かな声が、夜の部屋に落ちた。
京介は息を呑み、視線を逸らした。
「……バカじゃねぇの……」
言葉とは裏腹に、頬は熱くて、涙が滲みそうだった。
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