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夜。静まり返ったリビング。
匠海は机に肘をついて、京介をまっすぐに見つめていた。
「俺……京介のことが好きや」
京介は瞬きを繰り返す。
「……は?」
「弟やとか、生徒会とか、関係あらへん。俺は一人の人間として、お前を好きやねん」
匠海の声は落ち着いていて、嘘のひとつもない。
京介の心臓はバクバクとうるさく鳴り響いていた。
「……な、に言ってんだよ……」
京介は視線を逸らし、必死に笑い飛ばそうとする。
「アホか……兄弟やぞ、俺ら。そんなの……おかしいだろ」
匠海は真剣な目のまま、京介に問いかけた。
「京介は……俺のこと、なんとも思ってへんの?」
京介は一瞬言葉を失い、唇を噛む。
(……思ってる。けど、それを“好き”って呼んでいいのか分かんねぇ)
「……悪い。俺、まだそんなふうに見れねぇ」
ぽつりと落ちた京介の言葉は、刃のように鋭く匠海の胸を刺した。
匠海は表情を崩さず、短く息を吐く。
「……そっか」
それ以上、何も言わなかった。
いつもなら軽口で誤魔化すのに、今日の匠海は沈黙を選んだ。
その沈黙が逆に京介を追い詰める。
「……ごめん」
京介の声は小さく震えていた。
匠海は立ち上がり、部屋を出る前にだけ振り返る。
「謝らんでええ。……でも俺の気持ちは変わらへんから」
ドアが静かに閉じられた。