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干潮。
ひろは、支給されたブキを確認しながら、岸の先を見ていた。
恒は、少し離れた位置でインクをチャージしていた。
「……ブキ、何?」
恒が声をかけてきた。
ひろは、画面をちらっと見せる。
「スパッタリー。」
「動き回るやつか。ひろ向きだね。」
「恒は?」
「バレル。動き回れないやつ。」
「じゃあ、僕が回るから、恒は撃ってて。」
「了解。」
会話は短い。
でも、再会してから初めてのバイトにしては、呼吸が合っていた。
潮が引き切ると、シャケが一斉に現れた。
ひろは、前線に出て小回りを利かせながら金イクラを拾い、
恒は、後方からカバーと納品をこなしていた。
ひろの動きは、前より鋭い。
恒は、それを見ながら、少しだけ安心していた。
でも、ふとした瞬間。
恒が右側から「後ろ!」と叫んだとき、ひろの反応が一瞬遅れた。
あれ?
恒は、何も言わなかった。
でも、それ以降、ひろの左側から声をかけるようにした。
納品の合間も、ひろの右側を自然にカバーするように動いた。
ひろは、それに気づいていた。
恒が、察してくれてる。
右耳のこと、言ってないのに。
でも、ちゃんと見てくれてる。
ありがたいと思った。
でも、口には出さなかった。
バイトが終わる頃には、ふたりの動きはほぼ噛み合っていた。
「おつかれ。」
恒が、ひろの左側から声をかけた。
「うん。……久しぶりにしては、悪くなかった。」
「次はもっと合わせられるかもね。」
「……うん。」
再会してから初めてのバイト。