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二十三時、三十一分。
今日が終わるまで、あと少し。
つまりはまあ、俺達の命もあと少しという訳で。
本音を言えば死ぬのは今も怖い。
でも奏斗も腹を括っているみたいだし、どうせ死ぬからと熱愛報道を放っていたのも俺だし。エイズだし。奏斗に移しちゃったし。
一緒に死んでくれたら、俺と奏斗はずっと一緒になれるし。
もし失敗しても、奏斗の心に俺は残り続けるし。
だったらやらない手は無いよね、って…結論。
俺が残っちゃった時は考えない。考えたって仕方ないし。
「こわい?」
奏斗が、薄暗いクローゼットの縄を背景にしながらこちらに聞いてくる。
強く美しくいきる、の象徴みたいな彼が、死を後ろに背負っているのは何だか非現実的で、頭がクラクラするほど綺麗だった。
「ううん、怖くない。 だって奏斗、一緒にいてくれるんでしょう?」
「当然。せらに残される方が惨めで嫌だからね」
そう、奏斗のそういう所。
一度決めたらまっすぐで、どんな無茶なお願いにだって着いてきてくれるところ、だいすき。
「にしても…これ、ほんとに吊れるの?なんか不安なんだけど」
奏斗が、縄をちょんちょんと触る。
ポールに引っかかってる縄がこころもとないのか、訝しげな顔をしている。
ちぎれちゃいそうだよね、わかるよ。
本当にこんなので死ねるのかな、わからないけど。
「死ねなかったら二人でさ、ちゃんと他の方法探して死のうよ。」
「まだ、一回目だし。」
ね、と笑えば、奏斗も、そうだね…なんて渋々認めた。
本当にこれでよかったのか。俺はよく分からない。
でも、最期の時に奏斗と居られるなんて、これ以上幸せなことはないと思う。
彼にゆっくり近付いて、後ろから抱き締めた。
肩にぐりぐりと顔を埋めて、匂いを確かめる。
「どうする?もうやろっか?」
「…そうだね、もう、今日も終わっちゃうし。 でも、もうちょっとだけ、このままがいいな」
「ちょっと…首元で喋らないでよ、くすぐったいでしょぉーが…」
「えぇ〜…いいじゃん、さいごだしさぁ…」
ふぅっ、と奏斗の耳に息を吹き入れると、「ひっ、!」と小さく声を出して身を捩った。可愛い。
擽られるの弱いものね、 そのまま片手を奏斗の指に搦めて、ぎゅっぎゅと握りしめた。
「手、きれいだね」
「…え、そう?…ねぇせらの手、おかしくない。なんでこんなに爪酷いの?ボロボロなんだけど」
「知らない、自分でも気付かないうちにこうなっちゃってるんだもん。俺のせいじゃないよ」
いや、自分のせいでしょ、って抗議の声は聞こえないふりをして、奏斗から離れた。
本当はもうちょっと触れ合っていたかったし、セックスだってしたかったけど…さすがに時間も無いし。
「そろそろ始めよっか」
「…うん」
クローゼットに入って、足場用に積み重ねた本に乗る。
支えのために縄を両手で掴めば、ギチ、と音が立った。
ちょっと狭いね、と奏斗が笑う。
これも全部出しちゃえばよかったのに、って服を指して寂しそうに言うから、その方が寂しくないでしょって返した。
「せーの、でいくからね」
「あ、待って。最後にさ、俺達の死体、見つけて貰えるようにツイートしとこうよ。」
奏斗も撮る?って聞くと、ふるふると首を振った。メンヘラみたいな趣味はないってか。
たぷたぷ、画面を触って一言添えて、ツイート。
最近ツイートしてなかったから、直ぐに大量の反応が返ってきた。凄い、面白いくらい。
「ほらみて奏斗、奏斗くんと一緒ですか?だって、おもしろい。 誰も俺らが死のうとしてることに気付いてないよ、馬鹿みたいだね」
「それもまあ…二人だけの秘密ってことで、いいじゃん」
時刻は十一時、五五分。
もうすぐ、誕生日が終わる。
スマホをクローゼットの外にぶん投げて、最後に奏斗の顔を見る。
長いまつ毛、さらっさらな髪の毛、アイスブルーの瞳。
誰より仲間想いで、可愛くて、優しくて、心配性なところ、知ってるよ。
本当は、ちょっと他の二人のこと、心配してるってことも。
…じゃあいくよ、奏斗。
うん、いこっか。
「せーの、」
ぎしッ、バタン……がたがた、どんどんどん!
……がりがり、…げほ、……ッばたばたばた、
ぎし、……ぎし、
……どさり。
#ご本人様とは関係ありません
あざらし
10
#ご本人様には関係ありません
たべ
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