テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「如月…。如月透花って…もしかして、噂のアレか!あの白藍の俊英(しらあいのしゅんえい)!」
「え?白藍の俊英?それってあの、白藍中学校の伝説じゃん!玲瓏高の奴らが束でかかっても勝てないって…透花くんだったの!?」
白藍の俊英…それは、白藍中学校にいたとされる一人の少年のことだ。二次元の美しさと強さを持ち、ファンタジーなのではないかと思われるほど桁の外れた少年。
「どうなの?ねえ、どうなの!」
里見はキラキラとした目でこちらを見つめる。架埼裏は呆れた様子で里見を見た後、俺を見る。
「あーそうだよ、知ったところでなんも面白くねーだろ。この話は終わりだ」
「終わりにできるわけないでしょ!だって、あの伝説に会えたんだよ!僕らみたいな玲瓏最強の神威會でも勝てないような!」
「神威會?なんだそれ」
俺が訊くと、里見は少し落ち込みながらも話し始めた。
「神威會っていうのは、僕たちが所属してるグループだよ。玲瓏高校で一番強いグループなんだ!そのなかでも、僕はリーダーなんだよ」
「へー、すごいな」
「少しは大目に反応してあげろよ。里見がまた落ち込む、ただでさえ面倒な奴なんだからよ」
「ちょっと亮くん。本人の前で堂々と悪口を言うんじゃないよ。酷いなあ」
またも落ち込んでしまった里見は喋らなくなってしまった。
「そんなことよりも柿の種。俺はお前に用事があってきたんだ」
「俺は柿の種じゃなくて架埼裏だ。二度と間違えるな。それで、用事ってなんだ」
「ああ、えーと。そうだ、この高校にはなんかあるんだろ?七不思議的なものがよ」
「お!あの俊英様は実はお化けを信じるとは、実に興味深いねぇ」
突然、まったく喋らなくなっていたはずの里見が話し始めた。
「おい里見、もう白藍の俊英って呼ぶんじゃねえよ。今の俺はただの如月透花だ。それに、別にお化けを信じてるわけじゃねぇし」
「里見、落ち着け。話を戻すが、確かにこの学校には七不思議的なものはある」
「んで、どんな内容なんだ?」
少し不服そうな里見を横に、俺らは話し始める。
「まず一つ目が鬼だ」
「鬼?随分と極端で大きいものだな」
「ああ、学校の七不思議と言えば、トイレの花子さんや理科室の人体模型などを思い浮かべるだろう」
「そうだな。だけど鬼なんだろ?」
「おう。そんで、鬼って言っても酒呑童子とかの厳つい鬼じゃない。その姿は__」
「その姿は?」
「_わからない。鬼というのは判明しているんだが、なにせ見たものの情報が少なすぎてな」
「無駄に期待させやがって。だが、一匹目は鬼なんだな?じゃあ、二匹目はなんだ?」
「二つ目の不思議は小判だ」
「小判?ただの金じゃねえか」
「いや、違う。この小判は触れたものを宿主にして、そいつを従わせるんだ。どうだ、怖いだろ」
「それは不思議じゃなくてただの寄生虫だろ。まあいい、三つ目は?」
「三つ目はな、想造主だ」
「創造主?」
「想造主な。想像の想に創造の造だ」
「そんなん言ってもわかんねーよ。で、そいつはどんなんなんだ」
「想造主は、この高校の神みたいなものだ。七不思議を従えているとも言われているんだ」
「それは随分とすごい奴だな。で、そいつはどこにいるんだ?」
「目撃者の証言によると、図書館にいるみたいだな。まあ、不確かだから本当にいるかどうかは知らないけど」
「へー」
「で、透花。この三つの不思議を何に使おうってんだ?」
「何にも使わねーよ。ただ聞いて楽しむだけだ」
「うっそだー!透花くん嘘つくのへたっぴだねー。ギャップ~」
さっきの腹いせか、俺にちょっかいを出してくる。まあ、俺は気にしないけど。
「まあ、聞きたいことは聞けたし、俺は帰る。もう5時だしな」
「え!やばいじゃん!てか亮君はどうするの?」
「別に傷は深いわけじゃないから今帰れるぞ」
「お、いいね。じゃあ、3人で帰ろう!仲直りと仲良くなった証に!」
「いいなそれ。俺も透花には悪いこと言ったし」
「俺は反対だ。帰る」
俺が保健室から出ようとすると、里見が思いっきり腕を引っ張って止める。
「これは強制だよ!一緒に帰らないと透花くんが白藍の俊英だってことばらすからね!」
「…それは面倒だ。仕方がない。待ってるから早く来い」
「はーい!ほら、亮君早くいかないとおいてちゃうぞ~?」
「ちょっと待てよ!」
里見が亮を焦らす。俺は構わず玄関へ向かおうとすると、あわてて二人ともついてきた。
◇◇◇◇◇ ◆◆◆◆◆ ◇◇◇◇◇
「え!透花くん早生まれなの!僕と一緒じゃん!!おそろ~」
「ずりぃぞ里見!」
保健室での話が終わった後、俺は危うく説教してきた先生に捕まるところだったが、亮が無事和解したことを告げると、先生は不満げな顔をして俺に、「次から気を付けるように」と言ってその場を去った。もちろん、俺は「無理」と言って先生をまた怒らせてしまった。それからは三人で帰路に就きながら他愛もない話をしているのであった。
「あのさ、透花。実は明日、あの想造主に会いに行こうと思っているんだ。里見と一緒に」
「そりゃまた急だな」
「おう。そんでよ、透花も一緒に行けたらいいなって思って…」
「まあ、暇だしいいぞ。ちょっとくらいなら兄貴も怒んねーし」
「本当か!明日が楽しみだ」
「そりゃよかった」
「え!透花くんお兄さんいるの!も~先に言ってよ。じゃあ、今から透花くんのおうち行こ!」
「俺はいいけど」
「俺は良くない!なんで急に俺ん家来ることになってんだよ。聞いてねえぞ」
「そう言って本当は来てほしいくせに。ツンデレだなぁ」
「…あーもう!わかった!その代わり長居は禁止な。俺の兄貴が怒るから」
「そんなにお前の兄貴神経質なのか?」
「神経質っていうか…見ればわかる」
俺の兄はブラコンだ。それもドが過ぎるほどの。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!