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「僕もまだ、です」
「駄目だよ、【秘密を知ってるクラスメイト】くんはちゃんと考えないとー」
二つ目のまんじゅうに手を伸ばしながら彼女がお節介を焼いてくる。
僕は無視して麦茶を一口飲んだ。
市販の麦茶の味、慣れ親しんだその味が美味しい。
「二人とも未来のことはきちんと考えないとね。気を抜いてると、私と同い年になってるかもしれないわよ」
「うわははっ、それはないですよー」
「··········」
彼女と先生は楽しそうに笑いあったけど、僕は笑わずにまんじゅうを一口食べてそれを麦茶で流した。
彼女の言う通り。
それはない。
彼女が四十代の先生と同じ年齢に辿り着くことはない。
それはこの場では僕と彼女だけが知っていることで、だから彼女は僕に目配せをしてから笑った。
まるでアメリカの映画に出てくる俳優が、ジョークを言う時ウインクをするみたいに。
ただ、言っておくけど僕が笑わなかったのは、彼女のジョークが不謹慎で笑えなかったからじゃない。
彼女の「私、面白いこと言ってるでしょ」という得意げな表情が癇に障ったからだ。
僕がむすっとしていると、彼女は悔しそうに厳しい目つきを僕に向けた。
僕はそれを見て、やっと控え目に唇の端を上げてあげた。
閉室後の図書室に三十分ほど居座り、僕らは家に帰ることにした。
下駄箱に着くと、夕方六時を回っているというのに、まだまだ張り切っている太陽の下で頑張る運動部員達の声が聞こえてきた。
「書庫暑かったねー 」
「そうだね」
「明日もあれやんのかー、まあ明日学校くれば休みだしねー」
「そうだね」
「·····聞いてるの?」
「聞いてるよ」
上靴をローファーに履き替えて、靴箱の並んだ昇降口を出る。
校門は昇降口を挟んで運動場とは反対の位置にあるので、野球部やラクビー部の声が少しずつ遠ざかる。
彼女はとんとんとつま先を鳴らしながら、わざわざ早足で僕に並んだ。
「人の話はちゃんと聞きなさいって教わらなかったの?」
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