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誰のせい?
冬弥said
咲希さんのいる部屋に入ると心配そうな顔をして部屋の真ん中で座り込んでいる咲希さんと目が合った。
俺はそのまま咲希さんの元へ行き隣に座った。
何から話して良いのだろうか…
俺と咲希さんの間に無言が生まれ気まずい空気が俺たちを包み込む。
そんな中先に口を開いたのは、咲希さんだった。
「ねぇとーやくん、お兄ちゃんに何かあったの?」
「それは…えーと…」
司先輩が刺されたと結論から言えばきっと咲希さんは、パニックになってしまう。
だからと言って順に詳細に話せば長くなる。
俺が悩んでいると外から救急車の音が聞こえてきた。
その音は、次第に大きくなりその音が小さくなる事はなかった。
知らない男の人達と望月さんの話し声が聞こえてくる。
しばらくすると部屋のドアからノック音が聞こえてきた。
俺たちは、何も言えずにいると扉が開いた。
扉の前には望月さんが立っていて 望月さんは、俺たちにゆっくり近づいてきた。
そして俺たちの前に座った。
「2人は、この家で待ってる事も出来るけど一緒に病院へ行く事もできるの。
2人はどうしたい?」
望月さんの説明と問いを聞いて咲希さんは、焦ったような表情をした。
「お兄ちゃん、やっぱり何かあったの?」
その言葉を聞いて望月さんは、一瞬不思議そうな顔をした。
咲希さんは、司先輩に何があったかを聞こうとした時きっとパニックになって“お兄ちゃん”と言ってしまっていた。
きっとそれもあるだろうがそれよりも望月さんは、咲希さんがまだ状況把握をできていない事に疑問を持ったのだろう。
望月さんは、俺をゆっくり見た。
「すみません…何から話して良いか分からなくて、言えずにいました…」
こんなのただの言い訳だ。
きっと俺は、咲希さんを悲しませたくなかった。
だから言い出せずにいた。
その事を察したのか望月さんは、俺を責める事なく大丈夫と言ってくれた。
「咲希ちゃん、司さんに何があったかは時間がなくて今は話せないんの
だから司さんと一緒に病院へ行くか、行かないかだけを教えて欲しいの」
望月さんは、咲希さんの手を優しく握って問いかける。
咲希さんは、下を向き少し考えた後にすぐ望月さんの方を見た。
「アタシ、病院に行く! 」
咲希さんがそう答えると望月さんは、今度は俺の方を見た。
俺の答えももちろん決まっている。
「俺も行きます!」
そう答えると望月さんは、俺たちに手を差し伸べた。
俺たちは、その手を取り救急車へ乗り込んだ。
咲希said
ほなちゃんに連れられてアタシととーやくんは、お兄ちゃんのいる救急車へ乗り込んだ。
お兄ちゃんは、救急隊員に隠れてよく見えなかったけどきっとそれくらいの大怪我をしたんだと思う。
アタシはただお兄ちゃんが生きていてくれるのを願ってる事しかできなかった。
病院についてお兄ちゃんは、すぐに集中治療室に運ばれていった。
アタシ達は集中治療室の近くにあった椅子に座って待っていた。
するとほなちゃんがアタシの手を握った。
「咲希ちゃん、今から司さんに何があったか話すつもりだけど聞きたくないとか後にして欲しいとか何か今じゃ嫌な理由あったら教えて欲しいな。」
アタシは首を横に振った。
するとほなちゃんは、よりアタシの手を握る力が強くなった。
「分かった。
じゃあ司さんに何があったか話すね」
「そう…なんだ…」
ほなちゃんの隣にいたとーやくんは、悲しそうな顔をしながらアタシの方を見た。
「すみません、あの部屋にいる時に話すべきだったのに…」
「冬弥くんは、あの時きっとまだ頭が混乱してただけだと思うよ。
…そんなに自分を追い詰めないで。」
「そうだよ。
とーやくんが悪いわけじゃないし 」
聞いた話だと女の人がアタシ達といるお兄ちゃんを見て勝手に行動に出ただけだし
…そう言えばなんでお兄ちゃんは、アタシ達とショッピングしようって言ってくれたんだっけ?
もしかして1ヶ月くらい前にアタシが3人でどこか出かけてみたいって思った時、声に出しちゃってた?
…アタシのせい?
「お兄ちゃん、死なないよね?」
視界がぼやけ始めた。
ほっぺが熱くなっていくのがわかる。
「大丈夫だよ!
司さんは、2人を置いていくような人じゃないって咲希ちゃんは知ってるでしょ?」
お兄ちゃんがどんな人なのかはよく知ってる。
たとえこの世界がアタシ達の知ってる世界じゃなかったとしてもお兄ちゃんの事は誰よりも知ってる。
アタシは、お兄ちゃんが死んじゃう事よりもまた一人ぼっちになる怖さよりもアタシのせいでお兄ちゃんが刺された事を早く謝りたい…
その気持ちがアタシを支配していく。
謝って楽になりたい。
アタシは、少しでもそんな身勝手な思いで泣いてるアタシを許せない。
そんな思いでできた涙を必死に堪えていると集中治療室から、1人の男の人が出てきた。
「司さんの傷は無事、塞ぐことが出来ました。」
その言葉を聞いてアタシは、嬉しくなり堪えていた涙が溢れ笑顔になってしまった。
「良かった!本当に良かった。 」
ほなちゃんも泣いて喜んでいた。
とーやくんも今にも泣きそうな顔をして喜んでいる様子だった。
お兄ちゃんは、しばらくは入院しなくてはいけないそうでアタシ達は家に帰された。
家に帰ってからアタシは、お兄ちゃんが刺された理由をとーやくんとほなちゃんに話した。
その話を聞いてほなちゃんは、アタシの頭を撫でた。
「教えてくれてありがとう。
でもね司さんきっと咲希ちゃんが言わなくても3人で出かけたいって気持ちはあったんじゃないかな? 」
「俺もそう思います!
司先輩の予定が空いている日がたまたまあの日で、たまたまその日の前に咲希さんが口に出してしまっただけですよ!
偶然が重なってしまっただけです」
2人は、そう言ってくれてた。
それがすごく嬉しくて アタシは、その場また泣いてしまった。
そんな泣いているアタシをほなちゃんは、優しく抱きしめてくれてとーやくんは背中をさすっていてくれた。