君がいる幸せ
咲希said
お兄ちゃんは、あれから2日後に目を覚ました。
深夜に病院から連絡が入ってきて 夜巡回中の看護師さんが来ているタイミングでお兄ちゃんは、目を覚ましたらしい。
アタシ達がその事を聞いたのは、次の日の朝、
ほなちゃんが嬉しそうにアタシととーやくんに教えてくれた。
アタシ達は、お昼過ぎに病院へ行く事に決めた。
朝ごはんを食べる時も着替えもする時も嬉しい気持ちと怖い気持ちどっちも入り混じって自由に体が動かないような気がした。
お昼過ぎになってほなちゃんの車に乗ってアタシ達は、病院へ向かう。
病院へ着くとほなちゃんは、飲み物を買うために病院内のコンビニへ行き、 その間にアタシ達は、お兄ちゃんがいる病室へ向う。
病室の前で固まっているととーやくんがアタシの背中に手を置いてくれた。
「大丈夫ですよ」
その一言を聞いてアタシは、深呼吸をして病室のドアを開けた。
ドアを開けたその先には、本を静かに読んでいるお兄ちゃんがいた。
お兄ちゃんは、アタシ達に気づいたのか本を閉じた。
「咲希、冬弥。
心配かけて悪かったな」
そう言ってお兄ちゃんは、どうしようもなさそうに笑う。
そしてアタシは涙を流して、 とーやくんは泣くのを我慢しているのか体を少し震わせていた。
お兄ちゃんは、ベッドから体を起こしてアタシ達の方へ歩きだした。
ずっと寝ていたからか途中フラついていたけどすぐにアタシ達の目の前に来てその場に座った。
そして腕を大きく開いてアタシ達の事を抱き寄せた。
「お前達に怪我がなくて良かった。 」
その一言を聞いてアタシは決心してお兄ちゃんの方を見ると お兄ちゃんは、不思議そうにアタシの事を見つめた。
声を出そうとしたが言葉が喉の奥で引っかかって中々言えない。
だんだんと涙が溢れてくる。
そんなアタシを見てお兄ちゃんは、ゆっくりとアタシの背中をさすった。
アタシは、もう一度大きな深呼吸をした。
「アタシのせいで…つかさくんに、ケガをさせちゃってごめんなさい!
こんなアタシの事、許してくれなくてもいいから! 」
言葉が口から出ていくと同時にさっきより大粒の涙が出てくる。
とーやくんは、隣で心配そうにアタシを見た。
お兄ちゃんの顔は、怖くて見られない
アタシは、自分の服をギュッと掴んでいると優しい声が聞こえてきた。
「咲希、これはオレ自身の不注意でこうなったんだ。
そんなに自分を責める必要なんてない。 」
よりアタシを抱きしめる力が強くなっていく。
温かくて安心する。
涙がだんだんと引いていく。
「子供に心配かけるだけではなく、こんなに泣かせてしまうとは…オレは、父親失格だな…」
それを聞いた瞬間アタシは、お兄ちゃんが許せなく感じた。
アタシは、少し赤くなった目でお兄ちゃんの方を見た。
「そんな事ない!
つかさくんは、アタシが3人で出かけたいって言ったら大事な休日を使ってお出かけさせてくれたじゃん !
アタシ、すっごく嬉しかった!」
「そうだよ!
司君は俺たちのために忙しい日も朝ごはんを用意してくれたり俺たちを思って望月さんを呼んでくれたりと俺たちのために色々やってくれる人が父親失格なわけない!」
いつもより力強い声で訴えるとーやくんを見てお兄ちゃんは、驚いた顔をした後に嬉しそうに涙を浮かべた。
そしてアタシ達の顔を真っ直ぐ見た。
「ありがとう2人とも
…オレの話を聞いてくれるか?」
アタシととーやくんが頷くとお兄ちゃんは、アタシ達を連れてベッドの方に向かった。
「…オレは、お前達の父親になってから知らない事だらけでオレ1人ではお前達を幸せに出来ないとも思って泣きたくなる日も少なくなかった。
だがオレの周りには、支えてくれる仲間が沢山いた。
そのおかげでオレは、お前達と一緒にいられて今もこうやって話せている。
しかしオレはきっとこれからも父親としての役目を果たせない時が多くあると思うがそんなオレを受け入れてほしい。」
アタシは自然と笑みが溢れた。
お兄ちゃんが本音をアタシ達に話してくれたからすごく嬉しかった。
「俺たちに思ってること話してくれてありがとう司君」
「アタシ達は、つかさくんの事大好きだよ!」
そう言うとお兄ちゃんは、嬉しそうにアタシ達の頭を撫でた。
冬弥said
しばらくすると病室の外から声がした。
女性と男性の声だ。
女性は、おそらく望月さんだが男性は聞いた事ある 俺のよく知る人物に声質がそっくりだった。
しかもドアの外には、その人物は2人もいる。
ドアの外でしばらく言い合った末、看護師らしき人に注意される声も聞こえた。
そして看護師が去った後すぐドアが開いた。
そちらに目をやると見覚えのある顔があった。
神代先輩に…彰人…!?
その後ろから望月さんが顔を覗かせた。
「司さんごめんなさい。
引き止めたんですけど押し負けちゃって…」
申し訳なさそうに望月さんが謝る。
そんな事より俺は目の前の光景を見て 空いた口が塞がらない。
それに彰人と神代先輩の声が少し低くなっている事にも驚いた。
「類に彰人、どうしてここに? 」
司先輩が聞くと神代先輩がこちらへゆっくり近づいてきた。
そして俺の頬に両手を置いた。
「?」
そしてそのまま俺の頬をパン生地のように揉んできた。
「やあ司くん元気そうでなによりだよ
僕は、寧々に1週間後、帰国をするからそれまで絶対安静にしているよう言え伝えてと 頼まれたんだ。」
俺が頬を揉まれながら焦っていると神代先輩の肩に彰人が手を置いた。
「おい、そのくらいにしとけよ」
俺は、どこかしら彰人に違和感を覚えた。
ジッと彰人の方を見ていると彰人と俺は、目が合った。
すると彰人は、不思議そうな顔をした。
「なあ、その子供って司の親戚か?」
彰人が尋ねると 司先輩は、俺と咲希さんの頭に手を置いた。
「彰人には話していなかったな」
そう言って司先輩は、 彰人の方に満面の笑みを向けた。
「この2人は、世界一大事なオレの子供だ!」
その言葉を聞いて彰人は、一瞬時が止まった。
そして頭を抑え俺と咲希さん、司先輩の顔を順に見てと明らかに動揺しているようだった。
「…えーと
もしかして司が2年くらい前に活動休止期間を設けていたのって…」
「あぁ!この2人と共に過ごすため休ませてもらっていた!」
その言葉から俺たちが本当に司先輩の子供だと理解した彰人は、ため息をついた。
「それ神代は知ってたのかよ」
この時、俺はやっと彰人に感じていた違和感が分かった。
彰人が司先輩にも神代先輩にも敬語を使わずに話していた。
また俺は、謎を深めてしまった。
俺がそうなっている間も話は続く。
「ああ、僕と寧々、それからあそこにいる望月さんも知っていたよ」
神代先輩は、そう言って望月さんの方に目を向けた。
彰人も神代先輩の目線の方に目をやり望月さんの事を確認しすぐに司先輩の方を向き直した。
そんな彰人を見て司先輩は、申し訳なさそうな笑みを浮かべた。
「悪い彰人。
すっかり伝え忘れていた」
彰人は、ため息をつき仕方なさそうにした。
司先輩は、そんな彰人を見て何かを思い出したように彰人の方を見る。
「そう言えば彰人は、なぜここに来たんだ?」
その問いに彰人は、目を逸らした。
口元が少し動いているが何を言っているのかは、さっぱり分からない。
その光景を面白そうに見ていた神代先輩は、彰人の肩に手を置いた。
「東雲くんは、ただ司くんが心配でここに来たんだよ」
彰人は、恥ずかしそうに違うと言い張る。
そして司先輩は、嬉しそうに笑う。
「ありがとう彰人
それからこの2人とも仲良くしてやって欲しい!」
司先輩がそう言いながら浮かべた満面の笑みは、とても幸せそうなものだった。
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長い間体調を崩して投稿できていませんでした。 これからは、なるべく長期間投稿が途絶えないように体調管理に気をつけます。