俺の家庭環境は最悪だ。
学校にさえ行かせて貰えないし、個室もなければ毎日家事をする始末。
よりによって自分には持病があって、動けば動くほどしんどくなる毎日だった。
「はあ…」
そうため息をつきながら満点の夜空の中、ビルの屋上にたった1人俺が立っていた。
靴を脱いでビルの柵を越え、飛び降りればこの苦しさから開放できる状態…
「持病もあって無理やり動かされるし、学校に無理やり行かされるせいでいじめられるしで…」
ふう、と一息ついて飛び降りようとしたその瞬間だった…
後ろからドアが開く音がした。
後ろを振り向くと、ドタドタと走ってくる人かと思いきや、弱った黒い蛇がこちらへよろよろと近づいてきた。
「…どうかしたのか?俺になんか用か?」
…言葉を話さないまま俺の足に巻きついてくる。
「なんだなんだ……?よく見たら体が弱ってるじゃねえか…飯でもいるか?」
そういうと、蛇は頭をこくこくと動かし、俺はたまたま持っていたのでそれに応じて飯を与えた。
「よし…っと。あまり欲しいものでは無いと思うが我慢してくれ」
さてと。
もう俺は要らない。
この蛇はきっと頑張って生きるだろう。
…俺は生きれないけど…な。
さ、足を1歩踏み出して……
「ねえ、まってよ…領主様…」
後ろを振り返ると、黒髪の少女が立っていた。
「私を救ってくれたのに見捨てる訳には行かないよ」
「いやでも俺は死ぬ運命なんだ、きっと神がそう言ってる」
「領主様は私を救ってくれた唯一の人間だよ。他の人間を当たってもみんな無視していくの…でも領主様は違った、救ってくれた…違う?」
「救ったというより最低限のことをしたまでだ…つかなんで俺が領主様になってんだ…身に合わない」
「じゃあ名前は何…?」
「…名前は伏せさせてくれ」
「なんでなの?」
その問いに俺は無を返した。
一瞬静寂な空気が流れる。
「ま、知られたくないってことだよね」
「そういうことになるが…」
「んじゃよろしくね、領主様。これから私領主様呼びするから」
「お、おう……」
「じゃあまずは私に着いてきてよ」
「え…」
飛び降りる予定だったため、ついて行くことに少し頭の中に否定が出てきた。
まあこんなに抵抗しても仕方がないと思った俺は呆れながら
「だーもうわかった、ついていけばいいんだろ?」
「物分りが早くて助かるよ、私がいるから死なないでね、んじゃ着いてきてよ領主様」
「はいはい、着いてくよ」
そういって俺は黒髪の少女について行くのであった……
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