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#ファンタジー
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#ファンタジー/SF
朝。
空は鈍く曇っていた。
ホテル街へ続く高架道路を、
レオンとジンクは並んで歩いている。
車の走行音。
ビル壁面の大型広告。
遠くで鳴る工事音。
都市はいつも通り動いていた。
半年前、
この街で国家財政管理局長官アルバート・グレイは失踪した。
だが街は、その夜だけ綺麗に忘れている。
⸻
一日目。
二人はホテルを徹底的に調べた。
アルバートが最後に目撃された高級ホテル。
搬入口。
地下駐車場。
裏口。
周辺道路。
タクシー乗り場。
警備員にも声をかける。
レオン
「半年前、この辺で騒ぎはなかったか?」
警備員
「さぁ……」
曖昧な返答。
別の警備員。
『記憶にないですね』
ホテルスタッフ。
『失踪事件?ニュースでは見ました』
だが誰も、
“その夜”を語らない。
レオンはホテル裏の細い道路で立ち止まる。
交通量は少ない。
高級ホテル裏にしては、
監視の目が薄い。
レオン
「……ホテルから直接連れ去るならここだな。」
ジンク
「誘拐ってことか?」
レオン
「いや、わかんねぇ。」
「手掛かりがなさすぎる。」
「一個ずつ可能性潰すしかねぇ。」
しばらく周囲を見渡す。
何もない。
あまりにも普通だった。
スーパー帰りの親子。
犬の散歩。
信号待ちの学生。
半年前、
国家高官が消えた場所とは思えない。
進展はなかった。
⸻
二日目。
朝から雨だった。
二人はホテルを中心に調査範囲を広げる。
監視カメラ位置。
店舗配置。
人通り。
道路設計。
ガードレールの歪み。
ブレーキ痕。
感覚を研ぎ澄ませて歩く。
ジンクは端末の地図に、
監視カメラや死角を書き込んでいく。
ジンク
「しかしすげぇ数だな。」
レオン
「今頃リオが全部見てんだろ。」
ジンク
「マジかよ……。」
レオン
「あいつならやってるよ。」
レオンは道路脇を見る。
監視カメラはある。
だが、
微妙に死角が繋がっている。
交差点。
高架下。
搬入口。
完璧ではない。
“知ってれば抜けられる”配置だった。
昼過ぎ。
二人はホテル近くの古い喫茶店へ入る。
ジンクは端末をレオンへ向ける。
地図には大量の印が並んでいた。
ジンク
「ホテル周辺はこんな感じだな。」
レオン
「俺ならさっき見た…ここを通る。」
ジンク
「こっちもあり得る。」
経験でルートを絞っていく。
レオン
「まぁ、監視映像くらい
あいつらなら全部消すだろうけどな。」
ジンク
「そりゃそうか。」
ジンクは苦笑して、
冷めたコーヒーを飲み干す。
窓の外では、
人々が普通に歩いている。
その流れを、
レオンだけが黙って見ていた
⸻
三日目。
午前。
また成果なし。
聞き込みをしても、
返ってくるのは曖昧な反応ばかりだった。
『そんな事件ありましたっけ』
『ニュースでは見たかも』
『半年前とか覚えてないです』
街全体が、
同じ方向を向いて口を閉ざしているようだった。
昼過ぎ。
二人は住宅街横の小さな公園を通る。
子ども達が地面に座り込み、
何かを見せ合っていた。
レオン
「ジンク!あれ。」
ジンク
「ん?」
子ども達の中の一人が、
銀色の何かを掲げている。
ジンク
「……鹿?」
「……VELKRONE(ヴェルクローネ)のエンブレムか!?」
高級セダン”VELKRONE”。
政府公用車にも使われる車種だ。
レオン
「ボウズ、それどこで拾った?」
子ども
「……あげないよ。」
レオン
「いらねぇよ。」
「どこで拾った。」
子ども
「んー、ついてきて!」
連れて行かれたのは、
何の変哲もない道路。
昨日も通った道だ。
子ども
「ここでジュース買って、
お金落として。」
「この下で見つけた!」
自販機の下を指差す。
レオン
「いつ頃だ?」
子ども
「1年も経ってないけど……。半年前くらい?」
レオン
「そっか。」
レオンは自販機へ小銭を入れる。
ガコン。
缶ジュースを取り出し、
子どもへ渡した。
レオン
「ほら。」
「もう戻っていいぞ。」
子ども
「ありがと、おにいちゃん!」
走って戻っていく。
ジンクがニヤつく。
ジンク
「ぶっきらぼうな割に優しいよな。」
レオン
「たまたまだ。」
真顔へ戻る。
レオン
「さてと、ここは確か……」
数m歩いて、
ガードレール前でしゃがみ込む。
塗装の色が微妙に違う。
新しく補修されていた。
ジンク
「マジで事故があった?」
レオン
「……多分な。」
近くのベンチ。
煙草を吸っていた中年男へ、
ジンクが自然に話しかける。
ジンク
「この辺って、
前に事故とかありました?」
男
「事故?」
少し考える。
男
「あー……」
煙を吐く。
男
「半年前だったかな。」
「夜にデカい音してさ。」
レオンの視線が上がる。
男
「見に行ったら、
もう人がいたんだよ。」
ジンク
「どんな?」
男
「いや……どんなって、普通の人だよ。」
「それで救急車呼んだからもう大丈夫です、
って言われて。」
「しばらくしたら救急車が来て運んでったよ。」
レオン
「事故った奴は見なかったのか?」
男
「わざわざ見ないよ。
なんかこっちまで痛くなんない?」
「すぐに運ばれちゃったし。」
レオン
「車は?」
男
「フロントが潰れちゃっててさ、
なんか、高級車っぽかったから
あれは修理代でもバカになんねぇだろうなぁ」
風が抜ける。
レオンは黙ったまま、
歪んだガードレールを見る。
その夜、
ここで何かが起きていた。
⸻
四日目。
二人は救急搬送を追った。
まずリオへ連絡する。
リオ
『全部調べたけど、不自然なデータはないよ。』
『搬送先の病院も調べた。』
『その後の患者の足取りも。』
レオン
「偽装か?」
リオ
『わからない。』
『削除したのか
書き換えたのか
はじめから存在しないのか
それすらわかんない状態。』
『不自然なくらい全てが自然なんだよ。』
レオン
「わかった。こっちも直接調べる。」
通信が切れる。
二人は病院を回った。
救急受付。
搬送担当。
夜勤医師。
古い看護師。
だが反応は鈍い。
『覚えてません』
『記録ないですね』
『個人情報なので』
それでもレオンとジンクは歩き続けた。
12件目の病院を出た頃には、
空は暗くなっていた。
レオンは自販機の前で止まる。
小銭を入れる。
戻ってくる。
売り切れランプ。
小さく舌打ちする。
ジンク
「顔怖ぇよ。」
レオン
「元からだ。」
ジンクは笑う。
だが、
二人とも疲労は隠せなかった。
事故と失踪。
点と点は繋がらない。
⸻
五日目。
夕方。
また街を歩いていた時だった。
急ブレーキ音。
次の瞬間、
激しい衝突音が響く。
交差点。
二台の車が正面衝突していた。
ガラスが散乱している。
周囲が悲鳴を上げる。
レオンとジンクは駆け寄った。
横転しかけた車のドアを掴む。
軋む金属音。
無理やりこじ開ける。
中の運転手を引きずり出した。
ジンク
「救急車を呼んでくれ!」
数分後。
サイレンが近づく。
到着した救急隊員達は、
驚くほど迅速だった。
銀色の機器。
自動診断モニター。
神経反応スキャナ。
見慣れない装置が、
患者へ次々接続されていく。
ジンク
「おっさん!もう大丈夫だぞ!」
「……それにしても最近の救急車はすげぇな。」
隊員の一人が少し笑う。
隊員
「最新型だからね。HELIXION製の。」
レオンの視線が止まる。
機材側面。
HELIXIONのロゴ。
隊員
「1年前から順次導入されてて、来月でようやくこの辺りの救急車は全部最新型に入れ替わるよ。」
ジンク
「1年も掛かんのか?」
隊員
「そうなんだよね。」
「普通の機材と違って、車両に直接組み込むんだけど、1台ずつ順番にHELIXION本社で工事するから時間が掛かるんだ。」
レオン
「じゃあこの1年の間HELIXIONには
救急車が常に1台はあったわけだ。」
隊員
「そうなるね。
こっちは1台減るだけでも
結構大変なんだけどね。」
赤色灯が、
レオンの横顔を流れる。
半年前。
失踪当日。
事故車。
搬送。
HELIXION。
点だったものが、
初めて線になった。
ジンクは煙草に火をつける。
深く煙を吐いた。
街の喧騒だけが、
遠くで続いていた。
コメント
1件
第4話読み終わったんだけど…まずレオンくんとジンクさんのバディ感が尊すぎない??「たまたまだ」って言いながら子どもに缶ジュースあげるレオンくんに完全にやられた😭💕 で、最後のHELIXIONのとこで一気にゾワッときた!半年前の事故と失踪が繋がる瞬間の疾走感やばかった…しかも救急車の機材全部入れ替えって不自然すぎるし、絶対裏があるじゃん??続きが待ちきれないです✨更新楽しみにしてます!