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スミセス🍏年内200人目標中
スミセス🍏年内200人目標中
うっすらと明るくなってきた空。
フロントガラスの向こうに、朝焼けの気配が滲んでいる。
けれど、滉斗はまだ目を開けていなかった。
静かな車内、ほんの少し汗ばんだ額に、かすかに涼しい風が当たっていた。
夢を見ていた。
よくわからないけど、誰かに優しく触れられる夢。
頬に、首筋に、胸元に……それはどこかくすぐったくて、でも心地よかった。
そして、その手の感触には見覚えがあった。
——元貴?
夢の中で名前を呼んだ気がする。
その瞬間、熱を含んだ吐息が耳元に触れて、背筋がゾクリとした。
「……なんで、夢の中でまで……」
うっすら目を開けると、すぐ隣に人の気配があった。
まだぼんやりと霞んでいた視界の中で、はっきりと見えたのは、寝息を立てる元貴の横顔だった。
「……えっ……?」
混乱の中で、昨日の記憶をゆっくりと辿る。
打ち上げで飲みすぎて、帰れなくなって、元貴が車で送ってくれた——
それくらいまでは、はっきりしていた。
けれど、それ以降の記憶が、曖昧だった。
「……あれ、なんで……車の中?」
隣には元貴。
運転席を少し倒して、眠っているようだった。
その顔には、いつもの気怠げな余裕はなく、どこか疲れているような、安心しているような、静けさがあった。
滉斗は、ごくりと喉を鳴らした。
夢の感触が、やけにリアルに残っている。
触れられていた場所が、じんわりと火照っているような気さえした。
——まさか、とは思うけど。
ふと、自分の胸元を見下ろすと、シャツのボタンがひとつだけ外れていた。
それに、なんとなく車内の空気が、夜の間に誰かが何かを抱えていたような、そんな熱を含んでいた。
「……夢じゃなかったら……」
そう思った瞬間、心臓がドクンと跳ねた。
見てはいけないものを、体が無意識に覚えているような、
感じてはいけないものを、夢の中で感じてしまったような。
滉斗はそっとシートを起こし、身じろぎをした。
その音に、元貴がわずかにまぶたを動かす。
「……あ……ごめん、起こした?」
眠たげな声。
けれど、滉斗の顔を見た瞬間、その目が少しだけ揺れたように見えた。
「……昨日、ありがとう。助かった」
「うん、大丈夫だった? 水、ちゃんと飲めた?」
「……たぶん。なんか……よく覚えてないけど」
軽く笑ってごまかしたつもりだったけど、滉斗の胸の奥は、まだザワついたままだった。
夢の中で感じた温度と、目の前にいる元貴の体温が、重なる気がして。
——何かが、あったのかもしれない。
でも、それを確かめるには、まだ心の準備が足りなかった。
だから今はただ、こうして元貴が隣にいてくれることが、
少しだけ嬉しくて、少しだけ苦しかった。
To be continued…
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