僕の兄は可愛い。
え?例えば??うーん、そうだなぁ。
強いて言えば今のこの状況。
「な、なんだよ、」
おっと、つい見すぎたみたいだ。
兄さんは今、大好きなアイスを口いっぱいに
頬張り幸せそうに食べている。
本人は顔に出していないつもりらしいが、
双子の僕だからこそわかる。
兄さんは顔に出やすい。
「べつにー。美味しい?それ」
「ん……うまい。あげないぞ」
「わかってるって。」
うん。やっぱり僕の兄は可愛い。
ある日、僕が飲み物を取りに行くために
こたつを通り過ぎようと した時。
「わっ、危ない」
兄がいたのだ。こたつでぬくぬくと温まり
ながら寝ている兄が。
こんなに珍しいことはあるだろうか。
なにせ、兄さんが寝落ちするのは レアだ。
いつも寝る時は少しの睡眠でも自分の部屋で
睡眠をとるし、夢の中に堕ちた事なんて
そうそう無い。双子の僕でもこの光景は
お目にかかれないのだ。
このまま寝かせてあげるか、それとも
起こすか。正直、兄さんは最近頑張りすぎ
だから起こしてあげたくない。でも
ここで寝てしまえば風を引くかもしれない。
兄さんには申し訳ないが、起きたあと自室で
寝てもらうことにした。
「兄さん、起きて 」
声をかけても中々起きない。兄さんは
そういう時すぐぱって起きるのだが、今日は
深く眠っているらしい。
身体を揺すると、んん、と声と同時に
もぞもぞと兄さんは動いた。
「おはよう。兄さん 」
寝起きの兄さんは随分とほわほわしていて
可愛らしい。僕と目が合わず視点が
とどまっていない。
眠そうな顔をしながら「ぅ~、」と唸る
兄さんは、まるで天使のようだった。
「兄さん、ここで寝たら風邪ひいちゃうよ」
「ん、ん……」
喋る事も難しいのか、兄さんはこくこくと
頷きながら適当な返事をする。
「ほら兄さん、起きろ」
「わかってる、……」
ぼーとした兄さんを僕は見つめる。
わかってると兄は言ったが、起きる気配は
ない。
僕は何となく柔らかい唇にキスを落とす。
寝起きの兄さんはされるがままで、
されても顔を赤くしてやめろと言うだけ。
本当は嬉しいくせに。
「起きないなら僕も入っちゃおーっと」
自室で寝てもらうのは諦め、僕もこたつの
中に入った。ちょっと詰めて、と小言を
言って僕は兄さんに引っ付く。
「や、…めろ」
「兄さんが起きないのが悪いんでしょ」
「…それは、」
「ね、このままもう少し2人で寝ても
いいでしょ」
「もぅすきにしろよ…」
兄さんは諦めたのか、再び夢の中へと
落ちていった。僕はまたこっそり頬に
キスを落としたあと、おやすみ、と呟いた