コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「はぁ…」
何度目かも分からないため息がこぼれる。それもこれも全て目の前にいる男のせいなのだ。
クラピカはとある町を歩いていた。治安も良いし、清潔感もある。だからこそ油断していたのだ。
向かいから歩いてきたガタイ良い男に軽く肩をぶつけてしまった。ぶつかってしまったのだから、謝るのが道理だろうと思い、男に謝罪の言葉を口に出す。
「すまない…大丈夫か?」
「いってぇなァ!?骨が折れたかもなぁ??どう落とし前つけてくれるんだァ?」
男は所謂当たり屋というものらしい
「肩をぶつけただけだと思うのだが…それと、お前が道の真ん中を歩いているのが問題だと思うが?」
クラピカはつい言ってしまった。
すると当たり屋の男は面白いぐらいに顔を赤くして激昂した。
「てめぇ!!調子に乗ってんじゃねぇよ!!」
そう怒鳴り散らしたと思えば、殴りかかろうとする。
(暴力でしか訴えられない下衆が…!)
心の中で呟き、その拳を躱そうとした。が、後ろから爽やかな男の声がした。
「いやー、ごめんね?俺の連れが迷惑をかけたね」
と声の持ち主がクラピカの肩に手を置く。
…は?お前など知らないのだが?とでも言うかのようにクラピカは肩に手を置いた男を見る。
その男は黒髪黒目の青年だった。すらっとした鼻に大きな目、ハリのある唇。俗にいうイケメンである。
黒髪の青年は、クラピカと目が合うと当たり障りのない笑みを浮かべ、当たり屋の男に向き直った。
当たり屋の男も、一瞬間呆気にとられた顔をしたが、すぐに苛立った顔に戻る。
「お前の連れは躾もなってねぇのかァ!?こっちは怪我したかもしれねぇんだよォ?慰謝料よこせよ!」
当たり屋の男が黒髪の青年に詰め寄った。
クラピカは焦った。関係の無い男がこの当たり屋の男に殴られるかもしれないと思ったからだ。
「待て!彼は…!」
そう叫ぼうと思った次の瞬間
「ガッ…!!」
当たり屋の男は倒れてしまった。いや、倒されてしまったのだ。黒髪の青年が当たり屋の男の顔面にストレートを決めたからである。そして、クラピカの腕を掴むと、一目散に走り出した。
「はぁ…はぁ…」
クラピカは肩で息をしながら黒髪の青年に問いかけた。
「あなたは、なぜ私は助けたのだ?」
「うーん?なんとなくだよ?」
黒髪の青年は息を乱した様子もなく、爽やかな笑みを浮かべながら質問に答えた。
そんな事あるわけないだろう、とクラピカは思う。頭の調子が悪いのかと思い青年を見ると、青年は面白そうに笑った。
「強いて言うなら、お前みたいな綺麗な人が変な男に絡まれてたから、物語の王子様みたいに助け出そうと思った。それだけ」
やはり青年はどこか頭の調子が悪そうだ。
「…理由は全く理解できないが、助けてもらったのは事実だ。礼を言う、ありがとう」
クラピカは青年に頭を下げる。
「お礼を言われることはしてないよ」
男はそう言ってから、あっ、という顔をした。
どうしたのだろかとクラピカが思ったのと同時に
「俺はクロロって言うんだ。お前は?」
名前を教えてくれた。そしてクラピカも自身の名前をクロロに教えた
「紹介が遅れた。私の名前はクラピカと言う。」
表情の変わらないクラピカにクロロは笑った。
「お前、せっかく顔が綺麗なんだから笑えばいいのにな」
クラピカはクロロの言葉に顔を顰めた。
「お前…何を言ってるんだ…」
クラピカはため息を吐いた。それを見てクロロはまた笑った。
「お前は本当に面白いやつだな。ところでなんでこの町に来たんだ?」
クロロは一通り笑いを済ませるとクラピカにそう尋ねた。
「ハンター試験を受けるためだ」
クラピカはハンター試験を受ける会場に行く途中で、当たり屋の男に絡まれてしまったのであった
「ハンター試験、ねー。そうだ、俺も一緒に行ってもいい?お前といると飽きなさそうなんだもん」
クロロの発言にクラピカは目眩を覚えた。
「お前、大丈夫か?少し頭を冷やしたらどうだ…」
「俺は至って正常だよ。着いて言っちゃダメー?」
尚もクロロは言った。
「ダメだ」とクラピカが言えば、
「いいじゃん」とクロロが返す。
そんな会話を何度か続けたところで遂にクラピカが折れたのであった。
「…はぁ、わかったよ…」
数分でクラピカげっそりとした顔になってしまった事は仕方ないことである。
対象的にクロロはイキイキとした顔をしていた。
クラピカは何度目かのため息を吐いた。
ハンター試験の会場に行くためには船を乗らなければならない。
クラピカとクロロは船着場を目指して歩いていた。
「俺は19歳。好きなことは読書。お前は?」
クロロはクラピカに話しかけた。
「…年は17だ。好きなことはお前と同じだな」
クラピカは仕方なしにと質問に答える。
「へぇー。クラピカは女の子…であってるの?」
クロロは続けて質問する。
「まぁ、生物学的に言えばそういう事になるな。」
とクラピカは返す。別に男と思われても良いと考えるほどクラピカ自身の性別に無頓着であった
「ふーん。なるほどねぇ」
クロロは暫く考え込んだ後にこう言った
「俺もっとお前のこと知りたいかも」
「はぁ…勝手にしろ…」
こいつには何を言っても無駄。と短い付き合いでも分かるほど執拗いヤツだ
クラピカはもはや、諦めの境地に立っていたのだった。
ここから数日、船着き場を目指して2人は旅をした。