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「ジェディ」
「なんだ?」
「おれを麦わら屋のいる所まで運べ」
「……お前はなんだってそんなにわがままなんだよ。俺の足が千切れるくらいの速度で運ぶ。千切れたらお前が直せよ」
俺はローを抱え、六式の移動技、剃と月歩を使ってルフィを探す。そして見つけた。中心街を誰かに運ばれているルフィを。あれはコロシアムの戦士たちか? まあなんでもいい。ルフィを守ってくれているのなら。
彼らの前に立つ。
「あ……ト、トト、トラファルガー・ロー!? ひひ、し、七武海…」
「お前ら、遠くへ逃げすぎじゃねえか?」
「あっその…あの…」
「そいつの覇気は戻るのか?」
「あ…そ、それが……10分必要と言われ、今はあと3分20秒」
「一刻を争う勝負だ。あとはおれとジェディが預かる」
「はい!」
俺たちはまた移動する。ドフラミンゴの見える位置の、物陰に。
それから運んでいた男、ギャッツの声が響く。ギャッツの言葉は先ほどのリク王と同じく国にいる人間たちを鼓舞する。それは大いなる時間稼ぎだ。鳥カゴを押している人たちと同じような、大いなる時間稼ぎ。
国中からルフィを望む声が聞こえる。ルフィはそれに答えるように体を起こす。
ギャッツの声が聞こえなくなり、ハウリングした瞬間、ローが能力を使いルフィとヴィオラの位置を変えた。ルフィはしっかり時間通り10分で蘇ったのだ。
「ヴィオラさん、怪我は」
「掠り傷よ、大丈夫」
「そうですか。ロー、レベッカも!」
「あぁ、シャンブルズ」
ドフラミンゴの視線が俺たちの方に向いたが、こちらに向かってくることはない。
「見ておくんだな、お前らの希望が潰されるのを」
――ルフィ……!! 頼むぞ……勝ってくれ……! 祈るような気持ちで戦いの行方を見守る。
ルフィは攻撃を受けるだけで、反撃が出来ていない。
「ルーシー!」
「ダメージが大きすぎたのか……」
ルフィがまたギア4を使い、姿を変え、上空へと飛び立つ。ドフラミンゴはそれを追い、糸の攻撃を続ける。
ルフィの腕が、大きく膨らみ、ドフラミンゴの糸と衝突する。衝撃波が広がり、一瞬目を開けていられなかったが、見なければ。彼が勝利するその瞬間を。
「あぁああああああ!!!!」
ルフィの拳が、ドフラミンゴに届いた。
「ドフラミンゴが、落ちていく……空にいるのは、ルフィだ」
少しの間滞空したルフィは、元の姿に戻り自由落下を始める。
「ROOM、シャンブルズ」
ローの能力で俺たちの方に来たルフィを、俺が受け止める。
「ルーシー!」
「彼は、大丈夫なのね?」
「あぁ。お疲れさまだ、ルフィ」
ドレスローザを閉じ込め、俺たちを殺そうとしたいた鳥カゴが消えていく。リク王の演説によって生まれた希望が、国を覆っていた絶望を打ち砕いていった。
――『消えていくのは…鳥カゴか、はたまたドフラミンゴの支配か?』
黒い雲が晴れていく。太陽が見える。
カゴの外に広がるのは自由の地、自由の空。
――『ドレスローザ国王戦! 海賊・ドンキホーテファミリー2000人 VS この地に居合わせた運命の戦士たち。その大将戦! 王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴ VS 剣闘士ルーシー!』
ギャッツの声が涙声になっていく。それでも彼は話すことを止めない。伝えることを止めない。
――『ひょ~ひゃは……ひょ~ひゃ~……ひょ~ひゃは……うっ、ううっ……』
もう、号泣して言葉が言葉になっていないギャッツ。俺たちの傍にいるレベッカもすすり泣いていた。
――『ひょ……勝者は! ルーシー!!!』
歓声が上がる。ルフィの勝利を喜ぶ声。ルフィはこの国の闇に打ち勝つことが出来た。
俺も喜びで涙が止まらない。でも泣いてる場合じゃねえよな。目元を拭い、ローに近寄る。ルフィはレベッカとヴィオラがついているから大丈夫だ。
「ロー、俺の方に体を預けてくれ。寝転がった方が楽だろ」
「ジェディ」
「なんだ?」
ローの腕が俺の方に伸びてくる。どうしたんだと聞こうとした瞬間、俺は何も言えなくなる。
「ッ……!?」
ローがキスしてきた。それも触れるだけの優しいやつじゃない。舌を絡めるような深い方。
突然のことで頭が真っ白になる。
数秒後、俺たちは離れ、唾液が糸を引く。それを見ていたレベッカとヴィオラが驚きの声を上げた。
俺は自分の顔が熱を持つのが分かった。だが張本人は俺の膝を枕にして寝息を立て始める。
「ロー、お前……ロー? 寝たのか? おい……ふ、ふじゃ…ふざけんなよ……」
俺の混乱と羞恥など知らないとでも言うように、ローは穏やかな寝息を立てていた。
その日の夜、俺たちはドレスローザの東の町、カルタの丘にあるキュロスの家で体を休めることになる。
「こんな丘の上に住んでいたのか」
「私とスカーレットにとっては、その方が都合が良かったからな。王宮とは大違いだが勘弁してくれ」
「十分だ」
キュロスはシーツやタオルを運んで持ってきてくれる。
「ロー殿、先ほど連れてきたこちらのご仁は?」
「麦わら屋の知り合いだ。拾ってきた」
「すまないが、先に休ませてもらう。腹が空いているなら家の中のものを好きに食べてくれ。干し肉くらいしかないが」
そう言って重症者たちはすぐに眠りについた。
「みんな寝るの早いな…」
「みんな、本当に疲れたはずだもの」
「こりゃ、当分起きそうもねえな」
「今はゆっくり寝かせてあげましょ」
「俺もちょっと寝る……頭の中が落ち着かねえ……」
「あら、ローの傍じゃなくていいの?」
「あいつとはしばらく距離を置く!!!」
俺は部屋の端で横になり、眠ることにした。くそ、まだキスされたときの感触が残ってる……。
首を横に振ってから俺は目を閉じて、意識を落とした。