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自ら両親を説得すると話していた藤井田のご令嬢と比べて、なんて頼りないんだろう、と思った。
そんな瑠璃香に、晴永は「大丈夫だ」と柔らかな声を落とす。
「俺は別に、瑠璃香に祖父さんを説得してほしいわけじゃない」
「……」
「色々頑張ったあと、『お帰りなさい』って、笑顔で出迎えてくれるだけで十分だ」
晴永の力強い物言いに、瑠璃香は息を呑んだ。
「……っ」
「今回の件で、祖父さんと険悪になったとしても……。そのせいで会社での立場が危うくなったとしても……。家に帰ればお前が待っててくれる。――そう思えるだけで、俺は頑張れる」
ハンドルを握ったまま。視線は微塵もこちらへ向けられない。けれど、何の迷いもないみたいに力強く言い切られたセリフに、瑠璃香は完全に言葉を失った。
そうしてほんのちょっと遅れて、乾いた土が水を吸い込んでいくみたいに胸の奥がじんわりと熱くなっていく。
瑠璃香はずっと、自分は晴永から守られるだけの、役立たずな存在だと思っていた。
けれど晴永は違うと――、瑠璃香の存在が彼を動かす支えになるのだと、そう明言してくれた。
「……私、毎日美味しいものを作って晴永さんを支えますね」
ようやく絞り出せた言葉に、晴永は小さく笑った。
「それは最高のエールだな」
雨はまだ降り続いている。
それでも、さっきまでより少しだけ前が、クリアに見えるようになった気がした。
***
家へ着いた頃には、雨足は少しだけ弱まっていた。
それでも完全に止む気配はなく、車を降りると夜気に混じって湿った雨の匂いが鼻を掠める。
傘は晴留に返した。
駐車場に車を停めて下車するなり、瑠璃香と晴永は示し合わせたみたいに雨の中、玄関ポーチまでの数メートルを小走りで走った。
屋根の下へ入るなりほぅっと溜め息をつくと、晴永が玄関の鍵を開けてくれる。
「ただいま」
玄関扉を閉めながら瑠璃香がそう声を掛けると、リビングの方から聞き慣れた音が返ってきた。
カラカラカラ……。
回し車が勢いよく回る音だった。
「……なまこ、起きてますね」
瑠璃香が思わず笑う。
薄暗く静かなリビングの中、ケージの中でなまこが一心不乱に回し車を走っていた。
電気をつけるなり、瑠璃香たちの気配に気づいたみたいに動きを止め、回し車から降りてこちらへ駆け寄ってくる。
「お出迎えしてくれてるんですかね?」
瑠璃香がそう言うと、
「飯の催促じゃないか?」
晴永が即答する。
「夢がないですね……」
けれど、そんな何気ないやり取りだけで、肩の力が少し抜けた。
上着を脱ぎ、濡れた髪をタオルで軽く拭う。
外ではまだ雨音が続いている。
なまこのおかげで、張り詰めていた緊張が少しずつほどけていくようだった。
「温かいお茶、淹れますね」
瑠璃香がキッチンへ向かおうとするのを、晴永が首を横に振って止める。
「その前に一本だけ電話する。――そばにいてくれるか?」
鷹槻れん

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コメント
2件
なまことるりかちゃんとはるながさん、いい家族だー(* ̄m ̄)
うわあ……このエピソード、胸がぎゅっとなりました。瑠璃香が「役立たず」って自分を責めてるところに、晴永が「お帰りなさいって笑顔で出迎えてくれるだけでいい」って言うのが、もう、本当に優しくて。守られるだけじゃない、存在そのものが支えになるっていう関係性、すごく沁みました。なまこの登場でちょっと和んだのも良かったです。雨の中でも前がクリアに見えるってラスト、好きです🌙