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遥人side.
遥人「今日も絡まれてんやん、ゆーちゃん。」
蓮「生徒会、そんなに大変なんだな。」
なにやら見知らぬ先輩に肩を組まれどこかへ連行されているゆーちゃん。と、そんな彼らを傍観する僕ら二人。
蓮「…ゆうは最近本当に忙しそうだが、一人の時間を確保しなくていいんだろうか。」
遥人「わからんけど、まあ言うてくるやろ。ゆーちゃんやし。…それより…」
遥人「先輩がゆーちゃん連れてってもーたし、僕らははよ飯にしよ。」
昼ご飯の時間。暖かく緩んだ空気。そんな廊下を幼馴染と歩く。その時、聞き慣れた声で僕を呼ぶ声がした。
女子生徒A「あっ、あの…遥人くん。」
またか、と相手とれんに聞こえないようにため息を吐いて
遥人「あ〜、すまん。僕、幼馴染と食べる約束してんのよ。…でも、また誘って?」
女子生徒A「…あ…う、うん、そっか…わかった…。」
足早に去っていく女子生徒の後ろ姿に、れんが声を上げた。
蓮「……よかったのか。俺とはいつも食べているし、たまには他の友人と…。」
遥人「ええねん、れんで。…いや、れんがええ♡」
蓮「そうか。」
からかいのつもりで言ってみた言葉がさらりと回避された。…まあ、こうなるのは知っていたが。
屋上の扉を開けて、れんを当たり前に先に通した。
設置されているベンチに座り込むと、二人同時にふ、と一息つく。
ゆーちゃんが用事でいない昼休みは、いつも二人でここに来る。屋上と言えば昼食を食べるのに人気なスポットだと思われがちだが…皆、あまり屋上に馴染みがなく人の影は滅多に見ない。
お弁当の包みと蓋を開けた。れんのお弁当も視界の端に見えるが、中身は僕のと似ている。…それはなぜって、れんのお弁当も僕が作っているから。
れんは絶望的に…いや、人一倍料理が苦手だ。もちろんれんのお母さんには遠慮されているが…去年の春に僕が押し切った。
蓮「…はる。弁当、今日もありがとう。」
毎日のように感謝を述べてくるれんに小さく頷いて、自身の割り箸を割った。
蓮「…はる、今日も…交換するか?」
れんはそう言い、お弁当箱を僕の方へ寄せた。
遥人「ええよ。なに欲しい?…当てたるわ、ポテサラ。」
蓮「流石だな。」
遥人「ほな僕はミニトマトも〜らお。」
ミニトマトに刺さったピックを摘み、口に運んだ。ぷちっという小気味のいい音と共に甘酸っぱい味が口の中で弾ける。
遥人「…んま。…ん、れん。」
ポテトサラダをれんの口に運んだ。そうすると、れんはいつも大人しく僕の手から頬張る。…正直に言うと、この瞬間のためにお弁当を作っていると言っても過言ではない。
蓮「……美味しい。」
遥人「そ。よかった。」
少しの間、二人で黙々とお弁当をつついた。しかし、無言の時間は苦ではなかった。幼馴染だからだろうか。
蓮「ご馳走様、美味しかった。」
遥人「お粗末様。…まだ休み時間余っとるけど…どうする?」
蓮「今日は…予鈴まで屋上にいたい気分だ。駄目か?」
上目遣いで見つめられると、胸が締まった。無意識なのもわかっている。断る理由もない。
遥人「駄目なわけないやん、一緒にいよ。」
蓮「…ああ。」
蓮「…はる、最近の勉強はどうだ?」
遥人「勉強?…んー。ぼちぼちやな。赤点避けれればそれでええ。」
蓮「…はるはもっと自分の将来を考えた方がいい。」
いつもより眉を寄せて見つめてくるれんに、肩をすくめる。
遥人「将来って言われてもなぁ。」
蓮「…はるはどこの大学に行きたいんだ。」
遥人「僕?僕はまだ決めてへんなぁ。」
蓮「そうか。ならテストは平均でも70以上は欲しいな。」
淡々と伝えてくるれんに、少し口が引き攣る。
遥人「最近の単元で70以上って。あんなん取れるんゆーちゃんとれんくらいやろ。」
蓮「コツを掴めばそう難しくないぞ。今度家来るか?」
遥人「ん、行く。…でも自分の勉強はええん?」
蓮「俺はいい。もうワークは5周したし、過去問も解いた。」
遥人「…ほんまれんて…。」
れんは昔からこうだ。やりすぎなくらいやることやって、見合った結果を叩き出してくる。
遥人「変わらんな。」
蓮「そうか?」
雑談もそこそこに、予鈴のチャイムが鳴った。
遥人「…ん。行こか、れん。」
差し出そうとした手を空で止めて、下ろした。蓮は気にせずに頷く。
一組教室の前でれんにひらりと手を振って、自分の席にうつ伏せになる。
遥人「…は〜。」
遥人(…好き。とか、心の中でしか言えん。)
少し熱くなった自分の頬を叩いて、なにかから逸らすように窓に視線を向ける。
祐希「遥人?」
聞き慣れた声に名前を呼ばれ、反射的に肩が揺れた。
遥人「…ゆーちゃん、お疲れ。」
祐希「…?お疲れ…なんか疲れてる?」
遥人「いやぁ…別に。ちょっとな。」
祐希「…そっか。」
ゆーちゃんはなにかを察したように頷いて、自分の席に戻っていった。
…そうして今日も一日、何の変哲もない昼休みが終わった。