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haru
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残り火
入学して少し時間が経った。
新しいクラスにも慣れてきたころ、さっそく
行事が始まる。
「なんだよ灯火の集いって」
うりが面倒くさそうに口を開く。
今はお昼休み、数人で集まって中庭でご飯を食べてる。
「ちょっと厨二病ぽいよね、たっつん好きそう」
「なんでや!!俺そんなに厨二病ちゃうで??」
冗談交じりでえとが言う。
「たしかに『俺の左目は業火に焼き尽くされた、、』とか言ってそうだよねー笑笑」
「だから俺そんなんちゃうてー!!!!!」
「眼帯つけてるやつが言っても説得力ないぞーー」
「うるせーよ!!」
ゆあんもたっつんの声を真似て厨二病を演じる。
たっつんはすかさず反発するが説得力はない。
「でも本当によく分かんないですよねー、何やるんですか?これ」
お弁当に夢中だったのあもさすがにこの行事で何をやるのかは気になるそうだ。
「なんか花火したりマシュマロ焼いたりキャンプファイヤーしたりするらしいよー親睦会とも
兼ねてるみたい」
じゃぱぱが詳しく概要を言う。担任と仲良くなるのが早かったから先生から内容を直接聞いていたらしい。
「なんか林間学校みたいでおもしろそう!!」
「たのしみだなーキャンプファイヤー!!」
みんなキャンプファイヤーという話を聞いて目を輝かす。
「…へぇ」
ただ一人を除いて。
「まあ当日になってからのお楽しみだよなー」
「てか他の奴らはどこで食ってんの??なおきりさんたちは教室で食べてるって聞いたけど」
12人で仲良しこよししているがさすがにいつでも一緒という訳では無い。もともとなおきり、シヴァ、ヒロの3人は仲がいいからよくその3人で行動もしている。
「もふどぬはあれだよ二人でいちゃいちゃしたいんだって」
「いちゃいちゃ、ねぇ」
シェアハウスのメンバーのもふとどぬくは中学の頃から交際を続けておりもう2年近くは付き合っている熟年カップルである。
シェアハウスをするようになってからは毎日2人のイチャイチャを見せつけられてメンバーは気疲れしていた。
「まぁ俺たちが非リアなことは変わりないけど明日の灯火の集い楽しもうぜ!!」
この場にいる全員に刺さる言わなくてもいい事を言ってからみんなを鼓舞する。
なんてひどい飴と鞭だ。
みんなでがやがやしながら教室に帰る。
「Hey Tatu 次の授業なに??」
「ツギハ、ブツリノジュギョウ、デス」
「うわー物理かよさいあくーー」
「その前にその変なノリに乗ってやった俺に感謝せーよ!!!!!!!」
くだらない話をしながら笑い合う。
だが、心做しかいつもよりたっつんの目は笑っていなかった。
そんなこんなで1日は過ぎあっという間に
灯火の集いが始まった。
はぁ、
大きな溜め息をつく。
少し前の方ではのあとるなとえとがマシュマロを焼いて楽しんでる。
るなえとに関しては他クラスだよな?なんでここいるんだよ、と心の中でツッコんでおく。
灯火の集いも終盤に差し掛かり本日の醍醐味であるキャンプファイヤーが始まる。
クラスごとにひとつの炎を囲いながら座るらしい。遠くから担任が移動を促す声が聞こえたのでたっつんは重い腰を上げながら移動する。
3.2.1. ファイヤー!!!
ぼおっ、と目の前に大きな炎の塊が生まれる。
パチパチと弾ける音と炎に夢中になる人達の感嘆の声が聞こえる。
あー、早く終わらんかな
炎が目の前にあるはずなのに自分の腕にはうっすらと鳥肌が立っている。
周りに気づかれないように腕を掴む。
「たっつん」
周りの声には気づかなかったけどやけに爽快な声が耳に届く。
「じゃぱぱ、」
隣いい?と聞く前にじゃぱぱは俺の隣に腰をかける。
本来なら目の前の火にはしゃいでいるはずのこいつなのに今日はやけに静かだった。
「どうしたんお前、これ楽しくないんか?」
空気が変に気まずくて話しかける。
上手く笑えてるかな
「もう大丈夫なの?」
肩が少し揺れる
「何が?」
大丈夫、もう大丈夫だから
平気なフリしよう
大丈夫上手く笑えてる。
「焚き火、平気なの?」
炎の揺れる音が耳に届く。
ぱちっ、と木が爆ぜた。
「…あぁ、」
俺は火を見つめた。
赤い炎、橙の火の粉。
空へ昇っていく煙。
少し胸がざわつく。
ぱちっ、また木が爆ぜた。
一瞬だけ。
赤い色が別の光景に見えた。
燃える天井
立ち込める煙
熱い空気
_____________________
熱かった
確かあの日は父さんが久しぶりに帰ってくる日で母さんも張り切って料理を作ってた。
途中で材料が切れたから母さんは俺に留守番しててねといって家を出た。
その日は父さんが帰ってくるのが嬉しくて1日中わくわくしててだからか分からないけど寝てしまった。
熱い
煙い
「え、?」
季節に合わない異常な暑さ、そして煙の匂い。
目を覚ましたら 俺は、
炎に囲まれていた。
火事だ。
逃げないと。
頭ではわかっていた、でもいざ目の前に直面してみると体が動かなかった。
ただの火がまるで恐ろしい怪獣に見えた。
動けなかった。
そこで俺の記憶は途切れている。
多分煙を吸い込みすぎて倒れてしまったんだと思う。
幸い、俺は助かった。
家が直るまでの間は、父さんの実家で暮らすことになった。
それからしばらくして、俺はいつもの日常に戻っていった。
でもひとつ違うのは俺から火事の記憶が消えたこと。
このまま消えたままだったらよかったのに。
「たっつーーーん!もう遊べるの??」
1週間ぶりに見るじゃぱぱの顔。
いつもと同じ顔。
「おう!!今まで遊べなかった分遊ぼうな!!」
火事の記憶が消えてたから俺はいつも通りに戻った。じゃぱぱと川で遊んだり林の中を探索したり草原でねっころがったり。
日常に戻った。
はずだったのに
「今日は河川敷で近所のおばちゃんが焼き芋焼いてるらしいから行こうよ!!」
そう言われてじゃぱぱと一緒に河川敷に行った。
その日は寒かった。
「今日は寒いし焚き火でもするかい?」
「うん!!したい!!」
おばちゃんがチャッカマンを貸してくれた。
普段なかなか火に近づけないからかじゃぱぱはテンションが高かった。
火を、つける。
ぼおっと音を立てて一気に火ができる。
脳裏に焼き付いた。
火が。
あの時俺は火に囲まれてた
火、、
「はーッ、はっ、はッッ」
「たっつん、??」
息が、できない
「!?」
「たっつん!!!」
目の前がまっくらで見えない。
火がある、火が
真っ赤で、怖くて、暑くて
たすけて
「たっつん!!!!!」
「はっ、」
気がつくと目の前にはじゃぱぱの顔があった。
いつもの笑顔とは程遠い。
怯えと心配と恐怖の目がこちらに向いていた。
「あ、、え、 おれなにしてたの、」
俺が声を出した瞬間ほっとしたかのように眉毛が下がった
「よかったー、、たっつん」
「死んじゃうかと思ったよ」
俺、生きてるのか
「…おれ、な」
ぽつりぽつりと話し始める。
忘れていたはずなのに鮮明に思い出せた。
あの炎を
じゃぱぱは黙って話を聞いてた。
こんな真面目な顔してるじゃぱぱは見たことがなかった。
「だから、多分おれ火が怖いんや」
「ははっ、バカみたいやなーー俺」
何とか笑って誤魔化す
迷惑かけちゃいけないから
また忘れればいい話、大丈夫こわくなんかない
こわくなんか、
「あ、」
頬を一筋の涙が滑り落ちた
「ごめ、こんなはずじゃ」
泣きやめ、泣きやめ、と思いながら目を擦る
ドンッ、と大きな衝撃が体に走る
「たっつん、」
じゃぱぱが俺を押し倒してた
覆い被さるように、何かから守るように
「じゃぱぱ、??」
何が起きてるのかわからなかった
じゃぱぱの体温しか感じ取れなかった
「おれがいるよ」
「次はおれがたっつんを守るから」
「俺がヒーローになるよ」
そう言いながら強く抱きしめられた
「じゃぱ、ぱ、?」
その瞬間、立ち込めていた煙が消えた気がした
爽やかな空気が舞い込んできた気がした。
俺の目にはじゃぱぱしか写っていなかった
「絶対、俺が助けるよ」
「大丈夫」
幼いじゃぱぱが笑った
ぱちっ
「たっつん?」
やけに低くなった声が聞こえる。
目を開くとそこには
さっきより随分大人になったじゃぱぱがいた。
そうか、昔の記憶か
「ぼーっとしすぎな」
相変わらず脳天気な顔で歯を見せて笑う。
まったくなんなんだこいつは
「誰のせいやと思ってんねん」
あの日からじゃぱぱは俺のヒーローになった。
炎の怪獣から助けてくれた俺のヒーロー
俺だけの、ヒーロー
もう既にキャンプファイヤーの火は消えかかっていて残り火だけがゆらゆらと揺れていた。
俺の中にもまだ火がついている
この火はあの日からずっと大きくなっている
「なあ、じゃぱぱ」
「ん?」
俺の中の火が大きくなる気がした
「じゃぱぱは俺の、」
喉まで出かかった言葉を飲み込む。
「俺の?」
「…なんでもないわ!!さっさと行くで!!」
こんなこと言っちゃいけない
「なんだよ気になるじゃんかーー」
言っちゃいけない気がする
言ったら終わってしまう気がする
俺の炎が小さくなっていく
あの日からじゃぱぱは俺だけのもの
絶対に誰にも渡さない
そう思った。
俺の中の炎が気付かぬうちに外に飛び出るほど大きくなっていたなんて
その時の俺はまだ知らなかった
コメント
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お話もですが、タイトルつけるのうますぎます!続き楽しみにしてます♡
うわっ、これ胸熱すぎる…!! 「俺がヒーローになる」って幼いじゃぱぱが言ったあのシーン、もう完全にやられたわ。たっつんの過去とか火のトラウマの描写が生々しくて、読んでるこっちまで息苦しくなった。最後の「俺だけのヒーロー」って締めも最高に刺さる。 この先、たっつんの"炎"がどうなるのか、めっちゃ気になる🔥