テラーノベル
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そのままの君で
「まじてムカつくんだけどあいつーー」
何人かの話し声が聞こえる。
少し暑い、夕暮れ時。
みんなが何か話しているのは分かる。
でも、何を話していたのかはあまり覚えていなかった
「のあはどう思う?」
「え私?」
急に話を振られて困ってしまう。
部活終わりの帰り道
私とるなちゃんと何人かの友達と一緒に帰っている時だった
「私はー、、まあそのくらい許しちゃうかもしれないかなー、」
いつだって喧嘩は避けたい。
私は平和主義者なんだと思う。
「やっぱのあって優しいよねー」
「わかるーー」
「そうかな笑そうでもないよーー」
こんな時はどんな顔してどんなことを言ったらいいのか。
本当に難しい
「でも何考えてるかわかんない時あるよねー」
胸の奥を、強く殴られたような気がした。
「あ、それ思った!」
「怒ったりするの?」
声が、出ない
話さないと、私だって怒ったりするよって
感情が無いわけじゃないって
「あー!!私シャー芯買わないとなんだった!」
よく通る大きな声が空気を変える
「のあちゃんついてきてー!!」
私の腕を掴んで走り出するな
遠くからばいばーいって声が聞こえるのを後にして私たちは住宅街を走る
「急にどうしたの?」
息苦しい。
最近はまったく運動してなかったからか息切れが激しい。
そんな私と比べてるなはいつもと変わらない顔でいる。
体力の差がはっきりみえるなー、これ
「のあちゃんさ、」
いつものるなよりワントーン低い声で呟く。
「なんか元気ないよね、大丈夫なの?」
冷や汗がでてくる。
大丈夫、疲れてるだけ
これは疲れてるだけだから
「別になんともないよ?るなちゃんが急に走り出すから疲れたけどね」
じとっ、とるなを睨む
もちろんネタだけど
「えでもそんな風には、」
「るなちゃん」
私の裏を見抜こうとするるなの言葉を遮る。
「今日、私がご飯作らないとだからさ、」
「はやくかえるよ」
そう言うとるなは目をまん丸にしてすぐに黙り込んでしまった。
上手く笑えてたかな
そう思いながら家へ足を運ぶ。
「のあさ、元気なくない?」
「え、」
既に帰宅していたえとからそう一言放たれる。
なんでこんなに見抜かれるのか
「今日はるなちゃんが急に私の手を引っ張って走り出したから疲れたんですーー」
「うぅ…ごめんなさい、、」
すっかりさっきの事は忘れてしまったのか
るなはわざとらしくしょぼんとしてみせる。
このままうまく流れてくれれば
「ふーん、そうなんだ」
こういう時に限ってえとは勘が鋭い。
口では平然を装いつつも鋭い目付きは変わらなかった。
いつもは鈍感なくせに
「じゃあご飯作ってくるね」
いつもより足早にこの場を去る
このままここにいたら全て見透かされてしまいそうな気がして怖かった。
背後に刺さる2人の視線が痛かったが
気付かないふりをした
「のあ」
急に低い声が聞こえて肩がぴくりと動く
「どうしたんですか?」
振り向いてニコリと笑う
だめだ、この人にはバレちゃう。
だって昔からそうだったから。
「のあ絶対なんかあったでしょ」
「そんな顔してるよ」
体が固まって動かなくなる
時間が停止したかのように表情も変えることができない
あーあ
なんでこの人はわかるんやろ
なんで昔からすぐ気づいてしまうんだろ
こんなことがずっと前にあった
_____________________
「のあちゃんっていまどんな気持ちなの?」
幼稚園の時同じクラスの子にそう言われた
私は昔、感情表現が苦手な子供だった。
嬉しいや悲しい、ちゃんと感情はあったけどそれを表情に出したり言葉で伝えるのが苦手だった、
「わ、わたしは」
こんな時どうしたらいいんだろう
どんな顔をして、なんて言葉をかけたらいいんだろう
「もう行こ」
「のあちゃんは何言っても話してくれないよ」
私は1人だった。
最初のうちは転校生だった私をたくさん気にかけてくれたり話しかけてくれたりしていた
でも、感情の起伏が激しい幼稚園児の中で
ずっと淡々としている私はまるで異星人のように見えていたんだと思う。
「さびしいなー、」
気がついた頃には私は完璧に孤立していた
あの日までは
「寂しいの?」
「え?」
見慣れない子から声をかけられた
深いエメラルドグリーンの瞳がじっ、と私を捉える
「なんでわかるの、?」
今まで、誰にも言われたことがなかった。
私が寂しいことなんて、誰も知らないと思っていた。
なのに。
初めて会ったこの子は、私が隠していたものを簡単に見つけてしまった。
「なんか泣きそうな顔してたよ?」
「なんでだろー、目かな?目が寂しそう」
頬に生暖かい感触がする
その感触はツーっと頬を滑り落ちていく
「え、まって、泣いちゃった!!???」
「ごめん!!おれが急に話しかけちゃったから!!ごめんね??大丈夫???」
ただ、嬉しかった
今まで出せなかった感情が一気に溢れ出た
「うれしい、ありがとうッ」
「やっぱり笑った方がかわいいね」
見慣れない少年はそう言った。
その瞬間、急に世界が色付いた。
その日から私は じゃぱぱくんに恋をした。
偶然にも私の引越し先はじゃぱぱくんの家の近くでその縁もあってかじゃぱぱくんとたつやくんと3人で遊ぶことが増えた。
ふたりと過ごしてから私は感情が表に出るようになって気づいたら私の周りには新しい友達ができた。
「じゃぱぱは俺のヒーローやから」
たつやくんの口癖。
たつやくんもじゃぱぱくんに助けられたみたい
その他にもじゃぱぱくんは色んな子を助けててみんなからヒーローみたい!って言われてた。
でも気づいたことがある。
「やっぱ俺らのヒーローだよじゃぱぱは!!」
小学3年生の頃、遊んでたボールが川に落ちたところをじゃぱぱくんが拾ってあげたことがあった。
拾ってもらった男子たちは口を揃えてそう言った
「…ありがとう、!」
笑い方がぎこちない気がした。
いつもは雲ひとつない青空のような爽やかな笑い方をする彼なのに
少し曇りがかっていた。
そこからじゃぱぱくんの顔に注目していたところ気づいたことがある。
彼はヒーローという単語に敏感だった。
人を助けること自体は好きなんだと思う。
でも、ヒーローだとかなんとか言われた時には
毎回表情が曇る。
あれ、
じゃぱぱくんのヒーローは誰なんだろう。
1回だけ聞いたことがあった。
「じゃぱぱくんって沢山助けて大変じゃない?」
この日はたつやくんがいなくて珍しく私とじゃぱぱくんの二人きりの日だった。
じゃぱぱくんが『穴場があるから』って私を連れてきた場所は綺麗なお花畑だった。
こんな綺麗な場所で話す内容じゃないことは
わかっていた。
でも何故か放っておけなかった。
「なにが?」
きょとんとした顔をして私を見つめる。
彼の瞳は綺麗だけどあまりにも深すぎて
見つめられるのは少し緊張する。
「たくさんの人助けてて慕われたり頼られたり、、大変じゃない?」
最近のじゃぱぱくんは持ち前の明るさもあるが
たくさんの人を助けているから学年中で有名だし人気になっている。
心做しか前より頼られる回数が増えた気がした
「そーんなことかー!」
「俺は大丈夫だよ」
そういう彼の笑顔は、いつもと変わらず明るいままだった
……いつも通り、明るすぎるくらいに
私は小さく目を伏せる。
本当に大丈夫なら、そんな顔しないのに
心では思ったけど口には出せなかった。
「そんなことよりさ」
そう言われた瞬間に頭になにか重みが乗っかった
目の前のじゃぱぱくんはこちらを見て微笑んでいる。
「綺麗だよ、のあ」
頭の上を触るとふわふわとした感触が手に当たった
「花冠、?」
「そう!!もっとちゃんと見てよーー!」
いつのまにかじゃぱぱくんはたくさんのお花を使って花かんむりを作っていたらしい
私はすごく真面目なお話をしてたのに、、
と不機嫌になる
でも自然と笑みがこぼれてしまう
「ありがとう、じゃぱぱくん」
目の前の彼の目が少し見開かれる
「やっぱのあの笑顔が1番好きだよ」
「のあ?聞いてんの?」
ハッとして顔をあげる
場面は花畑ではなくシェアハウスのキッチンに移り変っていた。
「ぼーっとしてる」
「……してないですよ」
「してた」
「してない」
お互い笑みが溢れる
馬鹿げた会話のはずなのに愛おしくてたまらない
やっぱ変わらないな
昔からこの人は
「何考えてるか分からないって言われたの?」
まるであの場にいたかのような言い分
「なんでわかったんですか?」
「そーゆー顔してたよ」
からかうように彼は笑う
彼はいつでも気づいてくれるらしい
「大正解ですよ」
でも
「なんか全部吹き飛んじゃった!!ご飯作るからじゃぱぱくんも手伝ってね?」
私もイタズラそうな笑みを浮かべる
実際もう言われた言葉も気にしなくなった
だってじゃぱぱくんは私のことを分かってくれてるから
ありのままの私を受け入れてくれた大事な人。
私が私のままでいられるようにしてくれた人。
世界でたった一人の
私の大切な人。
コメント
1件
もう第3話、めっちゃよかったよぉ…🥺💕 のあちゃんの「感情を出せない」過去と、それをじゃぱぱくんが「寂しそうな顔してる」って見抜いてくれたシーン、泣けた。世界が色づくってこういうことか、って思った。今も変わらずそばにいてくれるの、尊すぎる…!じゃぱぱくんのヒーローは誰なんだろうってのあちゃんが気づくところ、続きが気になりすぎる😭✨
しゃかな(本垢)
12
79
みあ🎸🍪
1,160
25