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ふゅう@低浮上
なんでも許せる方のみ、お進みください。
らっだぁside
なんの変哲もなかったように佇むこの城は、
この国の偉大を示すかのように、聳え立っていた。
いつ見ても凄い,と感心させられるのに、
何故か、物足りなさを感じながら、門を潜った。
「ようこそいらっしゃいました」
ちょうどその時、程よいハスキーボイスが耳を打った。
顔を上げると、そこにはいつもの長い真っ黒なスーツを羽織った大柄な男が立っていた。
「…グルッペンさん」
俺はぽつり、と見上げるようにして彼の名をぼやく。
すると男は、軽く口の端を上げて微笑んだ。
こちらですよ、といつもの覇気に満ちた姿はなく、
だが統領の面影を残した彼は、本来、部下が案内するはずのものを、自らやってのけた。
「態々出向いてくださり、ありがとうございます」
ちょっと慣れない空気感から意識を逸らすように、俺はらしくない社交辞令を述べる。
すると彼は、首を軽く振って、こちらこそ。と返した。
「嗚呼、そうだ。紅茶を淹れてみたんです。一杯如何ですか?」
男は思い出したように立ち上がり、どこか遠くを見るようにつぶやく。
「じゃあ、いただきます」
そういうと、近くに置いてあったティーポットに、男が手をかけた。
「あ、俺がやりましょうか…?」
後ろにいたきょーさんが、申し訳ないというように声を上げたが、
男は、首をまた軽く振った。
「すみません、美味しくなければ飲まなくて大丈夫ですから」
慣れない手つきで栗色の紅茶を注ぐ姿を、らっだぁは静かに眺めていた。
太陽の光が反射し、男の金髪を照らす。
それにどこか目を奪われて、息を吐いた時、終わったのか、紅茶が差し出される。
「ありがとうございます」
そう言って一口、口に含んだ。
味が薄い。うまくお湯と茶葉があっていないのだろう。
正直言って、美味しいとは言い難い代物だった。
だけど俺はそれをもう一度口に含み、じっと、目の前にいる統領を見つめた。
「静かになりましたね、此処も」
俺はぽつり、と独り言をつぶやくように、息を吐いた。
「……」
男は少し少し目を見開くと、目を伏せ、自分の手元にあった紅茶を、一口飲んだ。
その表情は、どこか寂しさを寄せるものでもない、悲しみを表すものでもない。
ただ、真っ白な世界を見ているような瞳だった。
「そうですね」
男は言った。
「…らっだぁさん」
「…はい?」
「少し、昔話を聞いて行きませんか?」
「もちろんですよ」
俺はそう言って、もう一度紅茶を口に含んだ。
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コメント
2件
うわぁ!!始まり方めっちゃ好き!!今までの新作の中でも1、2を争うくらい楽しみなんやけど!?