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💛さん視点
『しばらく俺の家でゆっくりしてて』
退院してから勇斗の家にお世話になっている。
グループ仕事の日にあんな騒ぎを起こしておいても太智や柔太朗、舜太達は俺を責める事もなければなにがあったのか教えろとも言われない。
ただ、メンバーのグループLINEはあの日の柔太朗からの【じんちゃんなにかあった?個人宛でもいいから連絡頂戴】で止まったままだった。
事務所からもマネージャーからも【復帰時期を今調整しているので暫く佐野さんの家で待機しててください】と連絡が来たきりだ。
ゆっくりしていろと言われても何もしないのは申し訳なさすぎる。
忙しくしている勇斗にせめてのお礼代わりに家の事をやることにした。
とはいえ、出来ることなんて限られてる。
簡単に掃除機をかけたり、溜め込まれている洗濯物を衣類の洗濯表示を確認して仕分けて洗濯乾燥して畳んでいく。
(なんか、同棲中のカップルみたいだ…)
不意にそんな事を思って今の状況が非日常な中に出来た甘い時間のように感じて嬉しくなってしまう。
勝手に冷蔵庫を開けて、中身を確認して馴れた手つきでネットスーパーで食材を調達する為の注文をする。
ついでに勇斗の個人LINEに今日の帰宅時間を確認するメッセージを送った。
すぐに付く既読と【21時には帰る】のメッセージ。
【了解】とだけ返して料理の支度を始めた。
穏やか過ぎる日々。
まるで、恋人は死んだ××ではなく勇斗なのではないかと錯覚してしまえるほどに身体も心も今の生活に馴染んでしまっていた。
(あぁ、早く勇斗に会いたいな)
帰ってきた勇斗に抱き着いて、キスをせがんだらどんな顔をするのだろうか?なんて考えていたからか油断していたのかもしれない。
「…なに?これ」
なんとなく開いた自分の個人ファンクラブのアプリには心配の声とネットニュースの件の説明を求める声が寄せられていた。
ネットニュースの内容がわからず、近頃ネットスーパーの買い物とレシピ検索にしか使っていなかった自身のスマホで気付けば情報収集をはじめていた。
🩷さん視点
【帰ったら話がある】
仁人から送られてきた本日2度目のメッセージ。
普段なら気にも止めない短文に胸騒ぎがした。
そこから仕事の時間を巻くためだけにマネージャーや現場のスタッフさんに相談してなんとか予定よりも1時間も早く終わらせることができた。
(何も無ければいい)
祈るような気持ちのまま送迎車で帰路に着く。
ここ数日が幸せすぎたのかもしれない。
仁人を守るという名目での同居生活のはずが、毎日同じ空間で過ごしていく中で気付けば恋人のような関係を築いているかのような錯覚を引き起こしていた。
今朝も仁人が『いってらっしゃい』と玄関まで見送ってくれた。
その姿が可愛くて思い出すだけで顔がにやけそうになる。
それだけで1日の忙しさを乗り越えられてしまう、そんな生活を終わらせるなんて嫌だと思う自分がいた。
「佐野さん」
「…はい」
「あまり考え込まないでください」
「到着しましたよ」というマネージャーからの一言と共に言われた言葉は心配を含んでいるように感じた。
「あれ?俺考え込んでるような顔してましたか?」
笑って誤魔化すも、付き合いが長いからか簡単に見抜かれてしまう。
主役を張れるぐらいまで演技の仕事を頑張ってきたつもりなのにな…。
「吉田さんはみんなで守りましょう」
“気負う必要はない”と言いたげにされて思わず笑った。
(俺の本当に悩んでた事とは違うんだけどな…)
「はい、みんなで守り抜きましょう」
送迎車を降りる前にしたやり取りのおかげか幾分か力が抜けた気がする。
大丈夫、何があっても仁人の手を離さない。
決意を固めてマンションのエントランスの扉をくぐった。
転がもう少し長くなりそうです💦