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大学生 篠原 琴音【しのはら ことね】
「ったぁ!、今日も張り切っていきましょう!」
そんなことを呟きながら、朝の日差しを顔に受けて目を覚ます。いつものように鳥の囀りはピヨピヨと私の朝の癒しの手伝いをする。
「ったく、大学生にもなったんだからそろそろ私も恋に目覚める時では、琴音さん?」
今日も私こと篠原琴音は着ていたジャージをそこら辺に投げ捨て、用意してあった制服を着る。
「なんで大学生なのに制服なんてものがあるんだろうなぁ。はぁ全く、世間の大学生達は私服に高価なアクセサリーを身につけて人生を謳歌していると言うのにね。」
制服を着た正装の私を鏡を通して見てみるがイマイチパッとしないような顔をしている。この制服には気分をダウンさせるような特殊な魔力でも込められているのかと疑問に思う。
私は一人暮らしだ。誰もが見てもわかるようなこんなボロアパートに住んでいる。基本的に家にお金を費やしたくないのだ。恥ずかしながら、それよりも食のバラエティに投資したい、あとそれと貯金。今日作った目玉焼きはいい焼き加減である。これぞ半熟卵と呼ぶにふさわしい色艶。私は食事の手を進めながら、机に置いた紙に書かれた本日の任務内容を確認する。学校からの情報によると、今回の任務は少し特殊らしい。私に頼むようなこと、そこまで重要な任務なのかな?
「まぁ取り敢えず大学に行って、詳細を聞くとしましょうか。」
私は出発の準備を終え、玄関のドアを開けた。
私は聖女インフラ大学というところに通っている。一応、この国でのトップオブトップ大学である。トップ大学故かは定かではないが、この大学のカリキュラムは他の大学のカリキュラムとは大きく異なる点が一つある。他の大学よりも著しく勉学に励まないという点だ。その理由は聖女インフラ大学に入学しないと知ることはできない。しかし過去この大学の学生だった者は、さまざまな賞を受賞したり、大きな発明をしたりしているおかげで、この大学に対する国民の信頼は厚い。この大学は絵に描いたような優秀さを国へ発信している。
だがそれは表の顔だ。
聖女インフラ大学は国際機密組織インフラストラクチャー・エージェント、通称インフラの第一拠点である。インフラは聖女インフラ大学で入学した者にあらゆる教養を授け、国際任務の実行係にまで育成する。そして育成された者を使役し、インフラがこの国の秩序を守っている。しかし、任務内容にはしばしば詐欺、拉致、殺人など、世間では是とされないようなものも存在する。それゆえに、インフラは存在を世間に露呈させてしまうのは絶対に避けなければならないのだ。所謂、何でも屋の類だ。私はそう認識している。そして、その中でも私は長く組織インフラに属している。私は、インフラの中でもかなりの実力者であるということだ。だから滅多に私に任務は与えられない、いつもは館内の掃除などを行なったり、新入生の教唆などを担当することが多い。
そしてインフラには勿論学年は存在しない。全ては任務の成果によって自分の位が決定され、称号が贈呈される。高い位から、α、β、γ、δ【アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ】。もちろん私はαである。
「ようやく大学が見えてきたけど…まだそれでもかなりの歩く距離が…とほほぅ…。もうそろそろ車とバイクの免許を取りたいですね。」
毎回この地点を通過する度、同じことを言ってる気がする。
「というか、α階級なんだから車の一台ぐらいインフラは支給してくれてもいい気がするんですけどぉ。」
「それにしてもなんで今回私に任務が与えられるようになったのかが疑問。久しぶりの任務だから腕が鈍っていなければいいんですけど…。」
空を仰げば、奥の方に厚い積乱雲が目視できる。
私はその時、少し嫌な予感がした。
【Trust and lies are balanced.】
=【信頼と虚偽は釣り合っている。】