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「最近、月城くんがちゃんと授業受けてるって聞きましたよ」
「え?あ、はい。そうですけど…」
「どんな手口を使ったんですか?」
このヅカヅカと入り込んでくる人は青葉先生。生徒からは人気もあり、下の名前、確かなおきり先生と呼ばれることが多かった気がする。
「どんな手口って…普通に、来て欲しいなって言っただけですよ」
どちゃくそに嘘だが、多分事実を言ってしまえば俺は社会的に抹消されるだろう。あんなの脅しと然程変わらないのだから。
「ふーん、あの子が?」
「意外と素直な子なんですよね」
「…そうなんですね〜」
疑り深い性格はまるでたっつんを見ているようだった。それ以外は全て違うけど。
「ところで、貴方のクラスでいざこざがあったって聞きましたけど、何かありましたか?」
「いざこざ?」
「月城くんと霧島くん、揉めたそうですよ」
「え?」
「恋がなんとか…っていうかなんで担任のあなたが知らないんですか?」
嘲笑するような笑いと同時に、彼は俺を貶してるんだと勘づく。なぜ担任なのに知らないのか、なぜ担任なのに汲み取ってあげないのか。そう捉えることも容易かった。
「申し訳ありません。俺の配慮が足りてませんでした。」
「いや別に謝って欲しいとは…」
悪い人じゃないのは分かっている。でも、俺も頑張ってるつもりだからその努力を無にされるのは話が違う。
「今後、このような事がないようにお勤めするのでもう少しだけお時間下さい。」
「え、ええ、それはどうぞ…」
これ以上話してると次の授業に遅れると思い、話を切り上げ教室に向かう。
「…いざこざの話、俺に届いてないぞ…」
うりとゆあんくんが喧嘩?いつ?どんな理由で?
──────
「恋が何とか…」
──────
先程の青葉先生の言葉を思い出し考える。もしかして、ゆあんくんかうりがどっちかに恋をした?それでいざこざになった?男同士だから?それとも幼馴染というレッテルがあるから?どちらにせよ、2人の問題なのは確かだ。教師として、話を聞かなくてはならない。
「授業を始めます──────」
チャイムがなり、持っていたチョークを置き、号令を命じる。そして、彼らに前に来るように言い、うりは怒られるのを覚悟するように、ゆあんくんは何故かるんるんでこちらに向かってくる。
「話ってなんですか」
恐る恐る聞いてくるうりに、質問する。
「青葉先生から聞いたんだけど、いざこざがあったって本当?」
さっきまでニコニコだったゆあんくんの顔が一気に引つる。
「ちょっとした言い争いですよ〜」
軽そうに言うがうりは俯いたまま。到底軽い言い争いのようには思えない。
「うり、何があったか教えてくれる?」
「だから、なんもないって…」
「今はうりに聞いてる」
そう聞いても彼は俯いたまま。ここじゃ話せないのだろうか。
「…ただの、言い争いです」
口を開いたかと思えば嘘丸わかりの答えだった。
「…ほら、うりもこう言ってるじゃないですか」
「ここじゃ言えない?それとも俺に言いたくない?」
「先生に言える自信ありません」
「…そっか、分かった」
「今回のいざこざは見逃してあげる。でも次は無いからね。」
「はーい」
「うりも、溜め込みすぎないでね」
「…はい」
“見逃してあげる”
本当はそんな言葉使いたくなかった。でもうりが本当に言いたくなさそうにしてたから。どうしたら言ってくれるかなと考えるだけ無駄だと感じたため一旦この件は忘れることに。
「たっつんに相談するべきかな…」
「誰ですか?その人」
「うわ、っ!なんだ青葉先生ですか…」
後ろから声が聞こえ、反動でびっくりする。
「よく相談に乗ってもらってる人ですよ」
「へー、そうなんですね」
「そういえばいざこざの話、なんだったんですか?」
「聞いたけど、教えて貰えませんでした」
「そうなんですね、よっぽど言いたくないか、それとも…」
「それとも、なんですか?」
「いえ、なんでも」
この人の考えてる事は本当に分からない。頭を覗きたいくらいだ。
「…ムカつくな〜」
窓から先生を探している時、大抵先生は誰かと一緒にいる。その確率でいちばん高い人は、青葉先生。さっき前に来いって言われた時もあと人の名前が出ていた。
「先生嫌ってそうなのに…なんで避けないんだろ」
まあそういうこと言えるタイプでもないか、と思い、考えることを諦めたかった。でも彼を見ていたいという気持ちが混ざりなんだか自分でも制御できないレベルにまできたんだなとちょっと感心する。
「なんだあの距離」
教師同士の距離では無い。確実に青葉先生が一ノ瀬先生の方に寄っている。そうしてずっと見ていたのに気配を感じ取られたのか青葉先生がこちらを向いた。
「…ばれたか」
反射ですぐ俺も目を逸らしたがあの人が何を考えてるのか全くもって分からずじまい。
「めんどくさい事になりそうだな」
席を立ち、あいつの所へ向かう。
「よお、うり。元気してるか?」
「さっきは言わないでくれてありがとな」
「言えるわけないだろ」
「それもそうか」
「あとお前、何か勘違いしてるかもしれないが、俺は先生に恋なんかしてねぇよ」
「は?」
「面白半分に決まってるだろ」
「この前のいざこざはジョークだジョーク」
「あんま真に受けんな」
驚いた顔をして数秒、うりはニヤリとして言い返してくる。
「あの時のお前は、冗談に見えなかったけどな」
「は、っ演技が上手いって素直に言えよ」
鼻で笑い、自分の席へと戻る。俺が冗談に見えなかった?そんなわけないだろう。あの先生は、あの人は今までの先生とは違うように見えた。だから揶揄うために俺はこうして授業を受けて…あれ、なんのために?俺が真面目に授業を受けてなんになる?いや違う、そんなはずない。生徒が教師に恋なんて有り得ないんだ。そのはずなのに…
「とられたくねぇ…」
そう思うのはなんで?
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