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事前に買った食券を店員に渡す。
そして席につく。
しばらく会話がなく、お互いスマホをいじっていた。
「やっぱ俺気になんだよ」
こーすけとの連絡を終わらせ、自分の前に置かれている料理に箸を伸ばしながら話す。
「何がよ」
彼は片手にスマホ、片手に箸を持ちながら
返事をする。
「ヒラ絶対元気ない」
俺はヒラのことが心配でたまなかった。
「だから気のせいだって」
その言葉に、仲間の体調を考えない言葉に俺は少し苛立った。
「なぁキヨ」
そしてキヨを見つめ、低い声で言った。
「んぁ?」
適当すぎる返事が帰ってくる。
もう我慢の限界だった。
黙って彼を見つめる。
「んだよ」
ようやくこっちを向く。
「真面目な話だからスマホやめろ」
彼の眼差しを見てはっきり真剣に言った。
「…ん」
スマホの電源を切り、画面を伏せて机に箸と共に置いていた。
「お前さ、ヒラに対して冷たくない?」
外は雨の音が響いている。
窓に雨が当たる音がうるさかった。
「は?」
「いや別に…」
キヨはまた机に伏せてあったスマホに手を伸ばす。
「スマホ触んな」
その行為に腹が立ち、語尾を強めて言い放った。
俺がキヨに言葉を強く言ったのは久しぶりだった。
そのせいか、キヨは目を見開いて俺を見つめている。
この際だ。思っていたことを言おう。
「お前その癖やめろ」
「人が真剣に話してる時にスマホいじんな」
キヨは黙って俺から目を逸らし、俯いた。
「なんでヒラに冷たい?」
「ヒラがなんかしたか?」
俺の声はだんだんとヒートアップしていく。
そしてそれにつられ、雨も強くなっていった。
「いやだってラーヒーがおもんないのが悪い…」
「ヘラヘラしてんじゃねえぞ!!!!」
彼が言葉を言い終わる前に俺の怒りが頂点に達した。
俺は両手で店の机を叩き、身を乗り出して怒鳴った。
食器同士がカチャンと擦れる音が店内に響く。
そして周囲の視線が一斉に俺に集まる。
「…すみません」
周りに小さくお辞儀をして、椅子を引き直す。
俺に怒鳴られたのははじめてだからなのか、彼は怪物を見たかのような顔でこちらを見ていた。
深呼吸をして頭を冷やす。
続けて彼に問いかけた。
「あのな、ヒラすっげぇ悩んでんだよ」
「キヨに相手にされてない気がするって」
相変わらずキヨは黙っている。
「ヒラ、こーすけん家にいんだよ」
俺がキヨに話題を振る前、こーすけからヒラと一緒にいることを聞いていた。
「今から行くぞ」
「は、なんで…」
ようやく口を開く。
「謝りにいくに決まってんだろ」
「は?俺悪くねえだろ」
彼の言葉につくづく呆れた。
「お前は馬鹿か」
この言葉に加え、できる限りの冷たい視線をキヨにぶつけた。
キヨは目を逸らし俯いていた。
「いつまでもガキでいんじゃねえぞ」
そういい彼の腕を強く掴んで引っ張る。
「…ってぇよ」
キヨは俺の手を振り払おうとした。
「黙ってついてこい」
俺まだ半分以上残っている飯を残して店から出ていった。
「てかなんでお前はヒラにたいしてそんな本気になれんだよ」
彼の言葉を、すこし考えてみた。
なんで俺はヒラのことがこんなにも心配なのか。
「…昔からの友達だからだよ」
「お前らが仲悪くなんのが今1番怖い」
これが今1番恐れていることで、答えだった。
黙ってこーすけの家まで歩く。
正直この空気感がとんでもなく気まづかった。
キヨを引き連れ、こーすけの家のチャイムを押した。
「はーい」
奥から足音と声が聞こえる。
そしてドアが空いた。
「突然ごめんな」
「おおフジと…キヨ?」
こーすけは俺の後ろにいるキヨに視線をやった。
「今ヒラと二人でいるんだろ?」
「まあ、そうだけど」
「俺もキヨがヒラに対して冷たいことがずっと気になっててよ」
「こいつを謝らせに来たんだ」
俺がここに来た目的を伝えた。
「なぁ、それさ」
そして珍しくこーすけの低い声が響いた。
「意味あるか?」
「フジが連れてきてくれたんだろ?」
「キヨはまだ納得してないだろ、その顔」
こーすけはキヨの顔を見つめ言った。
「…確かにそうだな」
彼の言葉にはっとする。
「ごめんな、こーすけ」
「邪魔した」
「おう」
ドアがバタンと閉まる。
それと同時にキヨに、言い放った。
「お前さ、まじでみっともねえぞ」
「ずっと不貞腐れて」
「もういい今日は帰せ」
俺の言葉に被せるように彼は呟く。
「なんでお前が不貞腐れんだよ」
「不貞腐れてねえよ」
「あのなぁ…」
言いかけた途端、彼の低くドスの効いた声が夜の街に響いた。
「お前いい加減黙れ」
「こっちにもあんだよ」
「じゃあ言ってみろよ」
こいつの言い分を聞いてやろうじゃねえか。
「あいつ、嫌いなんだよ」
「ボケのおもんなさ、すぐ謝るところ」
「…は」
俺は嫌っている理由が幼稚すぎるあまりに声を漏らしてしまった。
「そこだけかよ」
「そこが嫌いなんだよ」
「なあ思うだろ?」
彼は続ける。
「ボケもツッコミもおもんない」
「滑ったら謝る」
「じゃあ最初っからやんなって思わねえか?」
「俺、あいつと根本的に合わねえんだよ」
あー、呆れた。
「ああそうか、そう思ってたんだな」
もうこいつを怒鳴る気にはなれなかった。
「そうだよ」
「帰れ」
「ああ、言われなくとも」
キヨの言い方にはもう腹は立たなかった。
「俺はなんであんな言い方しかできないんだ」
でも俺は、家に帰ってからキヨに怒鳴ったことを後悔した。
「俺は悪くない…」
俺は家に帰ってからも自分に言い聞かせた。
俺は悪くない。