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カイへ出陣する前の晩——
庭から部屋へ上がると、
ユイは、
かつてセイカが纏っていた鎧を手に取った。
縁側に腰を下ろし、
庭を眺める——
ただ、眺めていた。
鎧を大切に抱き、
愛しく、愛しく撫でる。
何度も、何度も。
「兄様……」
人の身体とは、
涙が枯れることはないのだろうか。
鎧へと、涙が溢れ落ちる。
「セイカ……」
「セイカ」
鎧に顔をうずめ、
ユイは嗚咽をあげて泣いた。
それは、
初めて「兄様」ではなく、
「セイカ」と名を呼んだ夜だった——
ふと、空を見上げる。
かつて隣に並び、
あの無数の輝きを眺めた。
最愛のセイカと——。
空が白みを帯びるまで、
ユイは縁側に座っていた。
隣には、
セイカの盃が、静かに置かれていた——。