テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
カイへ出陣する前の晩——
庭から部屋へ上がると、
ユイは、
かつてセイカが纏っていた鎧を手に取った。
縁側に腰を下ろし、
庭を眺める——
ただ、眺めていた。
鎧を大切に抱き、
愛しく、愛しく撫でる。
何度も、何度も。
「兄様……」
人の身体とは、
涙が枯れることはないのだろうか。
鎧へと、涙が溢れ落ちる。
「セイカ……」
「セイカ」
鎧に顔をうずめ、
ユイは嗚咽をあげて泣いた。
それは、
初めて「兄様」ではなく、
「セイカ」と名を呼んだ夜だった——
ふと、空を見上げる。
かつて隣に並び、
あの無数の輝きを眺めた。
最愛のセイカと——。
空が白みを帯びるまで、
ユイは縁側に座っていた。
隣には、
セイカの盃が、静かに置かれていた——。
4
#佐野家
🍓🍼いちご飴🍭🍬
290
8
桜咲かな
142
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!