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私の名前はエレシア・ベネット。ブラウンの髪にブラウンの瞳、愛らしいと言えば聞こえはいいが、要するに「どこにでもいる」貴族の令嬢だ。伯爵家の一人娘として、ドレスの裾を汚さず、優雅に微笑むことが私の務め。屋敷には使用人が揃い、毎晩のディナーは豪華で、舞踏会ではそれなりの求婚者も現れる。安定した裕福な暮らし。平民の女なら誰もが羨むような人生のはずだ。
なのに、心の底ではいつも苛立ちがくすぶっている。原因はわかっている。あの娘――ミーティア・シルヴァだ。この世界が、前世で読んだ小説『蒼の癒し手』の舞台と同じことに気づいた瞬間から、彼女の存在が私の心を締め付ける。ミーティアは平民の生まれながらにメイドの過去を持つ亡き祖母が王族と懇意であったことから、王家の血筋を持っていることが発覚した少女。白金の髪は夜空を照らす月光のように輝き、蒼い瞳はさながら深海で輝く宝石のよう。彼女の屈託のない笑顔は貴族も平民も問わず万人を魅了し、彼女の「癒しの魔法」は傷や病を瞬時に癒し、絶望すら希望に変える。この王国で唯一無二の力だ。彼女はまさに、物語のヒロインそのもの。


一方の私は? 小説のページにすら登場しない、名もなきモブ以下の令嬢だ。貴族として最低限の魔法は使えるが、特別な才能も血筋もない。ただの「平凡」。前世では普通の会社員だった私にとって、この退屈な安定は耐えられない。新しい人生、新しい世界だからこそ、ミーティアのような輝きが欲しい。皆の視線を集め、物語の主人公として歴史に名を刻みたい。


だが、貴族令嬢が妙な行動を取れば、親に「体調不良」や「静養」を理由に屋敷に閉じ込められる恐れがある。だから私は、嫉妬の炎を胸の奥に押し込め、いつも通りエレシア・ベネットと言う貴族令嬢を演じる。舞踏会では微笑み、茶会では上品に振る舞う。誰も私の心の叫びに気づかない。気づかなくていい。それでも、ミーティアを見るたびに、心がざわつくのだ。


私はあの子、あの子はわたし。

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