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医局にざわめきが広がった。原因は一つ。四宮春樹の左手薬指に光る指輪だった。
その場にいた鴻鳥サクラは固まっていた。驚きで声も出ない。
四宮はうるさい、と言わんばかりに眉間に皺を寄せる。
「…あぁ。結婚した。まぁ、前々からしていたが指輪はどうにも邪魔で…」
淡々とした声音だった。
「け、結婚…!?…は?」ようやくサクラが声を震わせる。
指輪を指さし、どういうことだと問う視線を送ると、さらに追い打ちのように四宮は口を開いた。
「ちなみに、赤子もいるぞ。サクラ。お前が担当だ。いるだろ?四宮○○。」
「…えっ……まさか…!」サクラは目を見開き、思い出す。
「し、四宮、…??あ、あぁ…!!あ!!あの患者さんか!!…え、あれ四宮の奥さん?!めっちゃ美人だけど?!」
医局中がさらにどよめき、小松は「ほんとに?!どういうこと?!なんでそんな隠してたのよ!」と大騒ぎ。
当の本人は「騒がしい」と低く吐き捨てるだけだった。
⸻
数日後。
突然の緊急搬送。担架の上に横たわっていたのは、四宮の妻だった。
診断は早期胎盤剥離。
四宮の脳裏に、かつて同じ状況で救えなかった患者の顔がフラッシュバックする。息が詰まる。
「四宮。…大丈夫。絶対どっちも助けるよ。」
鴻鳥先生は力強く言い切り、そのままオペ室へ消えていった。
医局に取り残された四宮は落ち着かず、机に指を打ち付け、何度も立ち上がっては座り直した。
胸の奥が締めつけられる。
⸻
1時間半後。
オペ室から戻ってきた鴻鳥先生は、疲労の色を隠しきれずに立っていた。
四宮が駆け寄る。
「どうなった。」
鴻鳥先生は荒い息を吐きながらも、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「おめでとう。四宮。元気な男の子だ。」
その瞬間、四宮の肩から一気に力が抜ける。
「っはぁ、…よかっ、た…」
壁に背を預け、そのままその場に座り込んだ。
誰も声をかけなかった。
ただ、四宮の深い息遣いだけが、静かに響いていた。