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愛梨は暗闇の中で、かすかに響く声を聞いた。「この音符を受け取るパラ〜!!」
上空から、ふわりとピンク色の透明な音符が降ってくる。
それは水面に落ちる雫のように静かに光をまとい、愛梨の掌に収まった瞬間――暖かく脈打ち始め
こんな感じの⤴︎
「…?」
戸惑いながらも指先で握ると、その光はさらに強くなる。
「ステッキのハートの部分を取って付けるパラ〜!!」
パララの声が外から必死に響く。
「え、あ、うん…」
愛梨はステッキの先端にあるハート型の飾りを外し、音符のパーツをはめ込んだ。
*カチャン――*軽やかな音が響いた瞬間、周囲は一変した。
まるで劇場のステージ。足元に淡い光の円が浮かび、耳には聞いたことのないメロディが流れ始める。
不思議と、その歌が自分の中にすでに刻まれているような感覚があった。
(知らない音楽…でも、今なら歌える気がする)
愛梨は深く息を吸い、口を開く。
「空を引き裂く
—fit it’s like a shining thunder
激しく鋭く全身を迸る
you’ll give me you’ll give me more
never stop
FEEK SHOCK
感情と森羅万象の共鳴
君が解き放つ your love
全てを侵す偉大なワード
*♪*」
高らかに響いたその歌声は、紫の闇を切り裂く光の矢へと変わっていく。
「マジカル・アイリーン・ミラージュ!」
ステッキの先端が敵の腹部にある鍵穴へ吸い込まれるように差し込まれた。
刹那、白い閃光が爆ぜ、モングーの体が溶けるように消えていく。
闇が晴れた地面に、赤色の楕円形の宝石キーが転がった。
愛梨は静かに目を開き、それを拾い上げる。
遠く、高台の影から里香がその光景を見つめていた。
彼女は一言も発さず、闇に溶けるように姿を消した。
__________________
【オマケ:シャイン食堂】
ゴシック調の内装に、控えめな照明。
それでも料理だけは妙に映える、不思議な食堂だった。
「いただきます」
里香は背筋を正し、手を揃えて小さく呟く。
その前に並ぶのは、湯豆腐、味噌汁、玄米少々、漬物が二切れ――質素そのものだ。
「んぇ〜!? 先輩、お昼それだけですかー!? もっと食べないと大きくならないですぞ〜〜〜!?」
すでに鼻にご飯粒をつけながら、ミミカが声を上げる。
彼女の前には、まるで戦闘前の補給のような山盛りメニューが広がっていた。
大盛りチャーシューラーメン、唐揚げ六個、ハンバーグ二枚、焼き鮭一匹、そして三杯目に突入した炊き立てご飯。
里香はちらりと視線を上げ、無言でミミカの胸元を見やる。
(……なるほど。あれを支えるには、そのくらいの栄養が要るのですね)
脳裏に浮かんだことを、心の中で静かに呟く。
「“大は小を兼ねる”とはよく言ったものです…」
「ん〜〜〜っ♡ この唐揚げ、ゼツボウ並にヤミつきですぅ〜〜!」
ミミカは頬をふくらませ、唐揚げを二つ同時に頬張った。
里香は淡々とご飯を口に運びながら、冷静に告げる。
「貴女はゼツボウに食われるタイプですよ」
「えっ!? ミミカ、モングーに食べられちゃうんですか!?」
焦りで目を見開くミミカ。しかしその口にはまだハンバーグが乗っている。
「……比喩です」
里香は表情を変えず、味噌汁をすする。
「び、びっくりしたぁ〜〜〜。じゃあ、ゼツボウ味の唐揚げが出るのかと思いましたぁ〜〜!」
「……そんなものが出たら、この世は終わりです」
その呟きは、湯気の向こうで小さく溶けた。