モブ春有
臭い。気持ち悪い。汚れる。 それでも俺は、梵天のために働く。 だって、そこが俺の居場所なのだから、そこの金ぐらい自分が稼いで大きくする。 そうしてないと俺のいる意味が分からなくなる。 強いて言うなら性処理?それ以外は俺がそこにいる意味なんてない。だから俺は自分がここにいて良い理由を自分で作った。
「三途くんの肌はスベスベで触り心地がいいねぇ」
「んっ…」
太ってるじじぃが俺の背中や腹を触りながら臭い口を俺の耳元に近づけそういった。俺はそれに対して客を満足させるように喘がないといけない。演技でも良いから甘い声を出さないとコイツらは文句を言う。
体を売る事は怖くなかった。いや、俺だから最初から怖くなかったまであるかもだ。なぜなら俺は子供の頃性的暴力を受けられていたからだ。理由は簡単だ。女顔だからだ。自分で言うのもなんだが、整った顔立ちをしている。そのおかげか、俺は今この歳になっても怖くなく直ぐに慣れた。出来るだけ金を稼げる、得を得れる奴に体を売る。それで梵天が回るなら大した事ない。俺が皆んなに迷惑かけた分やらないと。やらないと…やらないと…。
本当にこれで良いのかな?
「三途くん?
ヤってる最中に考え方かい?」
「あ、いや、すみません
気持ち良くてぼーっとしてて…」
「そうかそうか
それなら良かった。
三途くんも満足してて良かったよ。」
「はい…◯◯さんとの夜、気持ちいいです」
自分に反吐がでる。気持ち良くなんかない。気持ち悪い。肌なんてこんな奴に見せたくない。舐めさせたくもない。こいつの体液が俺に触れるな。荒い呼吸を止めろよ。早くこの時間を終わらせてくれ。
「有難う三途くん。
気持ちよかったよ。」
「此方こそ有難うございます 」
「はい、これ報酬ね。
金額足りてるかな?」
俺はケースに入っていた大量の万札を丁寧に数える。ざっと400万か。いい値段だ。
「はい、大丈夫です」
「それならよかった。
次も宜しくねぇ。」
口角を緩めて笑ってくる。次なんて本当はやりたくない。でも、やらないとダメだ。やったら金が貰える。金なんて、一番ココが喜びそうだろ?前は迷惑かけたしこのくらいどうって事ない。
見たくもないラブホから俺は出た。外の空気は美味しい。中の空気とは大違いだ。澄んでいて、気持ちがいい。俺はケースを持ちながら車に乗ろうとする。その時、目の前には知っている人物が立っていた。
「ココ…なんでテメェが此処に。」
「それはこっちの台詞だよ。」
ココは増悪に満ちた表情をしながら俺に近づいてきた。
「此処で何やってたんだよ…」
「じじぃの相手してた。」
ココは俺の言葉にキレたのか勢いよく胸ぐらを掴んできた。俺は珍しくココがブチギレてるためなのか抵抗せず、驚いていた。
「お前の収入額が最近大きいと思ったらこれかよ…!
なんで体売ってんだよ! 」
「…梵天が回るなら売るに決まってんだろ。
それにお前の好きな金だ、普通喜ぶだろ? 」
「俺はお前が体を売って貰った金なんていらねぇよ!
それよりももっと大事なのがあんだろ!?」
「は?
んじゃ、その大事な物ってなんだよ!」
「俺は金よりも三途の体の方が心配だ!」
意味が分からなかった。なんで自分の好きな金よりも俺の事なんだ?理解が追いつかず、俺は少し止まった。
「……意味わっかんねぇ。
聞いてられねぇわ、お前の理由。」
俺はココの手を払い、車に乗る。ココは「待てよ!」とかほざいてたけど、俺は気に留めなかった。ココの理由を受け入れたくない。じゃあ、俺は何のためにこんな気持ち悪い事をしているのか…俺を否定するなよ。俺の存在理由を消すなよ。頼むからさ、このままで居させてくれよ。
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