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”ガラガラ”
病室の扉が開くと、緑がかった黒髪をした、宝石のような翡翠の瞳を持つ美少年が現れた。
「・・何があったんすか?」
「っえ・・?」
「・・あの時、何があった?」
「!あ、あの!!!」
白いベッドから身を乗り出してそう、呼びかける。
「十分聞こえてるから寝てて」
「っあの中には今までの試合映像が全部入ってるの!!!!(写真も)」
、、声が少し上ずってしまった。
青年は一瞬ポカンとした顔をして、
「・・サッカーの話?」
と首を傾げた。
あれ・・??
「なんで、し、ってるの!!!??・・ですか」
「・・だって、兄ちゃんの名前呼んでたし・・ファンなのかなって・・」
「に・・兄ちゃん・・?」
なんか似てると思ったら・・!!
「いっ糸師冴選手のおっ弟さん!?」
彼は整った顔をまたこてんと傾げて、
「そうだけど、気づいてなかったの?」
と不思議そうに言う。
呆気にとられて口をパクパクさせるだけの私に、高校生ぐらいの推しの弟と名乗る少年に
「俺、糸師凛。よろしく」
と言われ、本物やん、、ガチじゃん、、と感動していたが、携帯のことを糸師凛くんに言うのは気が引ける。。
が、美しい翡翠がこちらをじーっと穴が開くほど見つめる。本気だということが伝わりすぎて申し訳なくなってきた。
「寝落ちしちゃって・・そしたら手に持ってた携帯、見知らぬ女性にぶん捕られて・・ホームに落とされちゃった・・。」
全部話すといつの間にか深刻な表情になっていた。
「・・・頭の傷は?」
頭??・・後頭部を手で触ると、布のような感触が肌を通して分かった。包帯されてる。。きっと相当爪が食い込んでいたのだろう。糸師凛くんは血が出てた、と話す。
「そっか。嫌なもの見せちゃってごめんね」
そう溢すと別に、と返ってきた。
「もうすぐでアンタのお母さん来るかな」
アンタって・・。
「来るといいけどね。」
そう返しながら、私は一つ疑問を抱いた。
「・・ねえ糸師凛くん」
「フルネームやめて気持ち悪いから」
「・・気安く呼んでごめ「凛」
「へ・・?」
「凛で良いよ」
「え、でもそんな」
「良いから、そう呼んで」
「ど、どうも」
なんとも不思議な気持ちだった。なぜ私は推しの弟に下の名前で呼ぶように言われてるのだろう・・。
すっごく嬉しすぎるけど、喜びすぎると傷が開いて痛む。
「そうだ、アンタ名前何?」
「・・〇〇」
「ふーん・・良い名前じゃん」
「・・そりゃどーも」
自分の推しの弟に名前を褒められる謎の現象が今、病室で起こった。
「災難だったな」
「あ、、まあ。。」
ホントに辛い。。死にたかったくらいだけど、凛くんと会えたから地獄もいいけど天国も良いなあ・・なんてば馬鹿なこと考えてると、
真正面からじっとこちらを見つめてる凛くんと目が合った。
「どうしたの??」と尋ねると、
「笑うと顔やら痛くなるって辛くない?」
あー。
「ホントよねー?wあいたた・・」
「・・ねえその人いつも江ノ電に乗ってんの?」
「いや、今日初めて見かけた。。」
この答えに凛くんはふーん、と明らかに適当な相槌を打ちながら病室を見渡していた。
「俺、この号車じゃないから分かんねーけど、次からその時間にしよ」
「だ、大丈夫なの??狙われるんじゃ!?」
「それはあんただろ。また狙われたら〇〇のこと守ってやるよ」
え、、ちょっと胸ときめいたわ。。優しいところもあるのね〜
「ありがとう」
凛くんはその時いた客なんかよりもずっとずっと良い人だった。初対面のこんな私を守ってくれるなんて。
「何歳?」
「15」
「そっか、私17」
「兄ちゃんと同い年。」
「ふふ。そうね。」
おにいちゃんのこと大好きで、大事にしてるんだな。。良い弟を持ってるね〜私の推し様・・。