結奈side
夢をみる。
どこからきたのか、何のために居るのか分からない暗闇で、必死に出口を探す夢。
そしてなぜか、いつも遥がいるのだ。
「っ、遥!」
呼びかけても遥は浅く私を振り返っただけで、暗闇へ消えてゆく。
どれだけ呼び止めても、その声すら闇に吸い込まれているようで意味を為さない。
どれだけ走っても、手を伸ばしても追いつかない。
そして足がもつれ、崩れ落ちた。
「結奈?どうしたの?ぼーっとして」
「ぇっ、」
我に返った直後の視界が、遥の顔で視界が埋め尽くされる。
野上と話したことで、脳が無意識に悪夢を再生していたらしい。
今こんなにも朗らかに隣で笑う彼女は、いつ死んでもおかしくないという陰の中にいる。
そんな事実は、ふわふわしていて全く実感が湧かない。
望むなら、湧かない方が良い。
「ううん、なんでもない、大丈夫」
「本当?それなら良いけど…あっ、分かった、明日の数学の小テスト心配なんでしょ?」
「違いますぅ、ちゃんと勉強してますぅ」
「ふはっ!…大丈夫だよ、心配しないで」
「え?」
「私のことだから。私が、全部背負ってるから。結奈には迷惑かけない」
「…遥?」
「野上くんを好きになったことも、自分の病気を野上くんに伝えることも全部、自分のことだから。だから、安心して?」
遥の目は、まっすぐ私を、私だけを捉えて離さない。
決意の中にひっそりと息をする憂いを、私はどれだけ感じ取ってあげられただろうか。
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