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「良いこと思いついたわ!」


ポンッと手を打ったリーゼロッテは、手紙を書くと急いでヨハナに出してもらった。

宛先は、王都に居る母方の祖母ブランディーヌ。


祖父はもう亡くなっており、伯爵領は伯父が継いでいる。どうやら、祖母は伯父の奥さん……つまり、伯爵夫人とは反りが合わないらしい。

その為、王都の貴族街にあるタウンハウスには、ブランディーヌが一人で住んでいる。


最後に会ったのは両親の葬儀の時だ。

娘を無くした祖母と、母を亡くしたリーゼロッテは、お互いショックが大き過ぎて、殆ど会話も出来なかった。

かなりキツイ性格の祖母だが、リーゼロッテは嫌いではない。


(もう、喪に服す期間は終わっているはず。どうにか間に合うと良いけど……)



◇◇◇◇◇



手紙の返事を待つ間――。


テオに教えてもらっている魔力の扱い方を、更に極めるために森へと通った。

最初に湖へ行った日からずっと、時間を作ってはこっそりと森へ向かい、魔法を使う練習をしている。


勿論、バレないようには心掛けているが……。うっかり見つかりそうな時は、例の花を摘んでくると言うと了承を貰えるので、忘れずに摘んで来るようにした。


その成果もあって、今ではすっかりフェンリル並みの強さだ。


魔力の解放や抑え込み、テオのように姿を変化させる術までも手に入れた。

まあ、姿の変化と言ってもリーゼロッテに出来るのは、身体に魔力を巡らせ細胞の活性化を促し、一時的に成長できるくらいだが。

それでも、身体強化よりかなり難しかった。


基本、テオは魔獣なので教え方は……言葉で理解するのではなく、感覚的なものばかり。

だから、全てが無詠唱であり、普通の魔法や魔術とはだいぶ違うようだった。

貴族学院で習う内容を知っていれば、より理解しやすいのだろうが。


この国の社交界デビューは15歳。

そして、16歳になると、貴族は貴族学院で魔法や学問、政治、その他諸々を学べる――筈だった。

残念なことに、リーゼロッテは社交界デビュー直後に殺されたので、入学が出来なかったのだ。


それでも、家庭教師から教わっている、初歩的な魔法と組み合わせると、かなり高度な使い方ができることも発見した。


リーゼロッテとテオの特訓の影響か、領地に近い場所の魔物の姿が殆ど無くなり、見張りの騎士達は首を傾げている。とはいえ、良い方に作用しているので、森の変化について誰も文句など言う者はいない。

寧ろ、ルイスの結界が強いのだと、辺境伯領の民は新しい領主に感謝している。


しかも回復薬の貴重な素材は、湖の周りにまだ大量にあるのだ。

回復薬が量産出来れば、商業としても確立できるのではないかと、更に領地内は活気づいてきた。


(ルイスお父様は、あの高濃度の回復薬を国王陛下に献上すると言っていたわね……)


大量の花を持って帰ると、マルクがリーゼロッテとテオを丁度探していた。


「リーゼロッテお嬢様、旦那様がお待ちです」


(来たっ!)


間に合った吉報の予感に、リーゼロッテはニッコリと微笑み、ルイスの元へと向かう。

リーゼロッテが部屋に入ると、ルイスは複雑な表情で手紙を読んでいたが、顔を上げて小さく溜息をついた。


「リーゼロッテ、ブランディーヌ様からの手紙が来ているよ」


「まあ! ブランディーヌお祖母様からですか? 先日、お手紙を送ったのですが、どうしてお父様にお手紙が?」


白々しく首を傾げて訊いてみた。


「近いうちに、私が王都へ行く機会があれば、リーゼロッテを連れて来てほしいと。……寂しくて孫に会いたいのだそうだよ。リーゼロッテは、どうしたいかい?」


「私も、お祖母様にお会いしたいです。お父様、連れて行ってくださいますか?」


瞳を潤ませ懇願するリーゼロッテに、ルイスは苦笑する。どうやら、リーゼロッテの根回しに薄々気がついている様子だ。


リーゼロッテの国王拝謁の儀には、『お目付け役』として既婚女性で親戚のブランディーヌにお願いしなければならない。だからこそ、独身のルイスは、彼女の頼みを無下になど出来ないのだ。


「分かったよ。では、明後日に出発する。リーゼロッテも王都へ向かう支度をしなさい。フランツはどうするかい?」


「私から聞いてみますわ。……フランツは、お祖母様が苦手ですから」


そう、フランツはブランディーヌが大の苦手なのだ。絶対に行きたがらないのは分かっている。


案の定、フランツは


「(絶対に)行きたくない!!」


と言ったので、リーゼロッテは心の中でガッツポーズをした。フランツは可愛いが、リーゼロッテが王都でしようとする事に巻き込みたくなかった。


リーゼロッテは、王都で必要な物を全て侍女たちに用意してもらう。ブランディーヌの邸宅へ行けば、その家に仕える使用人がいる。

だから、リーゼロッテと一緒に行くのはテオだけだ。


念のため、メイド服もこっそり拝借して荷物の中に詰め込んだ。リーゼロッテは、出来たら王宮に潜り込みたいと思っていた。どうなるかは、行ってみなければ分からないが……。



――そして。


ルイスとリーゼロッテ、テオの3名で同じ馬車に乗り込むと、王都へと出発した。



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