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ももは
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#女体化
足将軍
1,306
11
土曜日。
文化祭当日。
校内は朝から活気に満ち溢れていた。
クラスの動物カフェは大盛況だった。
華はカウンターの奥で、ねこ耳の付いたカチューシャを少し恥ずかしそうに直しながら、注文されたドリンクを作っていた。
(……こんな格好、普段の俺なら絶対にしない)
甘い匂い、笑い声、足音。普段の静かな日常とはまったく違う空気に囲まれながら、華は不思議な感覚を味わっていた。
心のどこかで黒崎の言葉がよぎるたび、胸がざわついた。
それでも今、この瞬間は——ただ、目の前の仕事をこなしている自分が、意外と悪くないと思えた。
「華ちゃん、これ次お願い!」
クラスメイトがトレイを持って駆け寄ってくる。
華は頷き、素早く次のオーダーを処理した。
乃愛の笑顔を見ていると、自然と自分の口元も緩む。
(……この騒がしさ、嫌じゃない。むしろ……)
華は心の中で小さく呟いた。
これは、ただの任務でも、ただの潜入でもない。
純粋に「今、この瞬間」を楽しんでいる自分が、そこに確かにいた。
午前中はクラスメイトたちと校内を回った。
莉音のクラスのホラーハウスでは、莉音が鬼の役で全力で叫んでいる姿を見て、華は珍しく声を上げて笑ってしまった。
「佐々木〜!朔晦さんに笑われてるぞ?」
一人の男子が莉音をからかう。
「しっ師匠!!見ないでください〜!!」
莉音が真っ赤になった顔を手で隠す。
そんな莉音を見て、華はまた笑ってしまった。
ホラーハウスを見終わった華たちは、莉音に別れを告げまた他のクラスを回った。
食べ物を分け合ったり、ゲームに挑戦したり。
華は心の底から、この時間が楽しいと感じていた。
黒崎の言葉が頭の片隅にあったはずなのに、今だけは、それすら少し遠く感じられた。
(……こんな風に、誰かと一緒に笑う日が来るなんて、思ってもみなかった)
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
それは、殺し屋としての自分には、決して許されない感情のようにも思えた。
それでも、華は今、この温かさを、素直に受け止めていた。
午後。
書道部室。
書道部の「特製うちわ作り」は、予想以上に人が集まっていた。
乃愛が一生懸命に接客をし、莉音が墨を準備し、華が次々とうちわに字を書いていく。
「華ちゃん、これお願い! 『幸せ』って書いて〜」
「了解です」
華は筆を走らせながら、自然と口元が緩んでいた。
隣で乃愛が嬉しそうにこちらを見ている。
莉音が「師匠の字、今日も最高っす!」と褒めながらも、すぐに乃愛と軽口を叩き合う。
(……落ち着くな)
(…ずっとこのままだったら…いや)
———『道を誤るなよ』
黒崎の冷たい言葉がよぎるたびに心がざわつく。
それでも、乃愛の笑顔と莉音の馬鹿騒ぎが、そのざわつきを優しく包み込んでくれる気がした。
文化祭が終了した後、三人は部室の後片付けをしていた。
「はぁ〜……楽しかったね!」
乃愛が大きく伸びをする。
「莉音くん、今日は本当にありがとう! 莉音くんがいてくれて助かったよ」
「……まあ、師匠のためだ」
莉音が照れくさそうに答えるが、乃愛に向ける視線は以前よりずっと柔らかくなっていた。
片付けが終わり、三人で校門まで歩いた。
乃愛と別れた後、華と莉音は二人で帰路についた。
「今日……良かったな」
華がぽつりと呟くと、莉音は目を丸くした。
「師匠がそんなこと言うなんて珍しいっすね」
「俺も、めっちゃ楽しかったです。学校のイベントって、意外と悪くないもんですね」
莉音は少し照れながら続けた。
「師匠、笑ってましたもんね」
「いや…そんなことは…」
「俺のクラスの出し物の時に、め・ちゃ・く・ちゃ笑ってましたよね?」
莉音がからかうように少し圧をかけてくる。
「あれは……本当に申し訳なかった」
華が控えめに莉音を見ると、莉音の顔が一瞬で真っ赤になった。
「べっ、別に気にしてないですよ!!」
「俺は、師匠が楽しめたなら嬉しいです」
(……うっ!! 師匠の上目遣い……!! 反則すぎる!!)
もちろん、華は一切上目遣いをしているつもりはない。
ただ莉音より背が小さいせいで、目を合わせようとすると自然と上目遣いっぽくなってしまうだけだった。
仕事以外で、二人きりで話すのは久しぶりだった。
二人は話しながらゆっくりと歩いた。
莉音の好きなゲームのこと、最近気になっているスイーツのこと。
華も時折、短い返事ではなく、自分の言葉で応えた。
それは、ただの高校生らしい、穏やかな帰り道だった。
———とはいえ、楽しい時間がいつまでも続くわけではないのだった。
「……バド」
「お前は俺の最高傑作や」
眩い光の裏には、当然闇が存在する。
「また…同じ過ちをするんやないで」
濃く、深く、重い闇が。
コメント
3件
いやー、めっちゃ良い話だった!華が文化祭で普通の高校生みたいに楽しんでるの見て、こっちまであったかい気持ちになったわ。特に莉音のホラーハウスで笑っちゃったシーンとか、「上目遣い」の誤解とか、ほっこりするやり取りが多くてニヤニヤした。でも最後の黒崎さんの「道を誤るなよ」って伏線がチラついてて、この平和が永遠じゃないんだろうな……。次回、闇がどう襲ってくるのか怖いけど楽しみにしてる🔥