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「私はさ、彩葉には慶都さんしかいないって思う」
「えっ……」
「慶都さんは、雪都君のパパなんだから」
「う、うん。でも……」
「彩葉はお嬢様だね、うらやましいよ。可愛いお嬢様、ううん、お姫様だね。お姫様にはちゃんと慶都王子様が近くにいて守ってくれてたんだよ」
「慶都王子……」
「そっ、慶都王子。でも、お互いの気持ちや行動に誤解が生まれて離れ離れになって。好き同士なのに一緒にいられない時間を過ごしてしまった。2人の間には小さな小さな雪都王子が生まれていたというのに。だけど今、その雪都王子とお姫様の前に、超イケメンの王子様が白馬に乗って舞い戻ってきた。今度こそ、愛するお姫様と、そして可愛い王子を守るんだって」
ずっと憧れてた、白馬に乗った王子様の話。
女性なら1度は夢見るストーリー。
「お姫様もお姫様で、途中入ってくるライバルにも負けず、2人は愛を貫いて幸せになる。めでたしめでたし」
自分で言って拍手をしてる弥生。
「童話作家?」
「うん、そうだよ。私が描いたシンデレラストーリーはいかが?」
「素敵なお話だね。嬉しいけど、でも、それが自分のこととは思えなくて……」
「いったい何を迷うことがあるの? あんなにイケメンでスタイル抜群。おまけに優秀で仕事もできる。しかも御曹司でお金持ち、いうことないよね」
「お金持ちは……関係ないけどね」
苦笑いする。
「そうかな~? お金はいくらあっても困らないし。だけど、やっぱり最後は2人の気持ちだよ。2人が想い合っていたら、雪都君はきっと幸せだから」
そう言って、弥生はちょっと思い詰めたような顔をした。
「大丈夫?」
「あっ、うん、全然大丈夫。やっぱり本当の家族が1番なんだよね。わかってるんだ、ちゃんと」
その時、弥生の目がキラリと光った。
大切な友達の思いが伝わり、私の胸も苦しくなる。
「ケジメつけなきゃって思ってた。子どもにとったら、たった1人のパパで、私が彼を奪うことは……子どもから1番大切な人を奪うことになるんだよね。それって、最悪なことなんだよね」
私、どう答えればいいの?
弥生に何を言ってあげればいいんだろう。
「私、自分の気持ちに向き合えてなかった。でも、2人に話してからすごく気持ちが楽になって。今日もね、彩葉と話して、私もまたいろいろ考えることができたって思ってる」
何かを決意したような、そんな表情を浮かべる弥生。
それを見て、私も一緒に乗り越えたいと思った。
「うん。私は恋愛に対してまだまだ未熟者だけど、弥生も一緒に自分自身の未来のこと考えようよ。あの時は、私も理久先生も、弥生の気持ちを思うと、好きな人と別れるべきだなんて簡単に言えなかった」
「彩葉……」
「でも、弥生は絶対に幸せになるべきで、それはやっぱり、相手が弥生を本気で愛して、本気で幸せにしてくれる人なのかどうかだと思うんだ。今、動き出さなくちゃ、ずっとこのまま同じところで悩み続けることになるよ。ごめん……全然上手く言えない」
弥生に対して偉そうかなって思ったけど、後悔したくなくて、気づけば自分の思いの丈を精一杯語っていた。