テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
朝の通学路。
並んで歩くと、すれ違う生徒たちがちらりと視線を向けていった。
「……妹ちゃん、友達に見られたら噂になんじゃね?」
悠真が小さく笑って言う。
「えっ……そ、そんなこと……」
思わず声が裏返る。
「まあ、兄貴の友達と一緒に歩いてるだけだしな」
そう言いながらも、悠真は歩幅を自然に合わせてくれていた。
咲は下を向き、ぎゅっと鞄の持ち手を握る。
――「兄貴の友達」
それだけのはずなのに、胸の奥は苦しくて仕方ない。
横を歩く悠真の影が、朝日に長く伸びて重なった。
その重なりを見つめながら、咲は心臓の音を必死に隠そうとしていた。