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【メチャクチャ人せい】
Episode.5
《🎼🍵side》
そんな生活が、一週間。
泣き声。
ミルク。
オムツ。
バイト。
学校。
睡眠は、削れるだけ削る。
迎えは、来ない。
最初の二日くらいは、
「今日かも」って思ってた。
三日目からは、
「まあ、忙しいのかな」に変わって。
五日目くらいからは、
考えないようにした。
七日目。
ポストに、見慣れない封筒が増えた。
市役所。
電話も、知らない番号から何件か。
赤ちゃんについての、なんか。
予防接種とか。
出生届がどうとか。
保護者がどうとか。
難しい言葉ばっかり。
🎼🍵「ああ……」
学校帰りに、市役所行かなくちゃなんだ。
今日は五時までカフェのバイト。
行けないかな。
早く終わるといいな。
◇
学校。
いつも通り。
いるまちゃんが弁当を半分押し付けてくる。
🎼📢「食え」
🎼🍵「……ありがと」
らんらんが、ノートを貸してくれる。
ひまちゃんが、次のテスト範囲を教えてくれる。
俺は普通に笑う。
普通に答える。
赤ちゃんのことは、多少頭にはある。
ミルク足りてたかな、とか。
朝、ちゃんと寝てたな、とか。
でも授業が始まれば、そっちに集中する。
考えても、どうにもならないことは、後回し。
◇
放課後。
🎼🍍「今日、ゲーセン行かね?」
ひまちゃん。
🎼🍵「ごめん、バイト」
いつも通り、少し考えるフリをしてから断る。
🎼🍍「またー?最近、気張りすぎじゃね?」
🎼🍵「稼がないと」
冗談っぽく言う。
誰も深くは聞かない。
それも、いつも通り。
◇
家には帰らず、そのまま市役所へ。
重い扉。
番号札。
待ち時間。
赤ちゃんは、家。
大丈夫だろうか。
でも、父さんは昼間いない。
静かだし。
……大丈夫。
呼ばれる。
担当の人は、真面目そうな女性。
「現在、保護者の方は?」
🎼🍵「……父親がいます」
「このお子さんとの関係は?」
🎼🍵「……」
関係?
言葉が詰まる。
🎼🍵「知り合いの方から預かってます」
女性は、少しだけ眉を動かす。
書類が出てくる。
説明が続く。
一時保護。
監護責任。
養育環境。
親権者不在。
言葉が、流れていく。
「現状、迎えに来られていないということですね?」
🎼🍵「……はい」
「今後についてですが」
ペンを渡される。
色々、書かされる。
名前。
住所。
父親の名前。
連絡先。
途中で、ふと気付く。
…………ぇ?
俺、親にならなきゃいけないの?
紙の上にある言葉。
“養育者(予定)”
予定?
予定って、何。
そんな訳、ないよね。
迎えに来るって、言ってたし。
頭の中で、あの女の顔を思い出す。
息が荒くて。
目が泳いでて。
段ボールを押し付けて。
───“お願い”
あれは。
『迎えに来る』って顔だったかな。
どっちかと言うと。
『無理。育てて』
……そんな感じだった。
ペンが止まる。
もし。
もし、それが本当だったら?
俺が?
育てる?
無理。
いや、無理とかじゃなくて。
意味が分からない。
「どうかされましたか?」
🎼🍵「あ、いえ」
手が勝手に動く。
書く。
サイン。
時間が、思ったよりかかる。
時計を見る。
カフェのバイト、もう始まってる。
予め遅れることは連絡していたけれど。
もうバイト時間も過ぎていた。
外に出て、店長にメールを送る。
『本当にすみません。あと10分後くらいには着くと思いますので』
電車に乗ったタイミングで、返ってくる。
『大丈夫だよ。今日は人手が足りてたからね。でも、次からはよろしくね』
迷惑、かけてしまった。
胸の奥が、少しだけ重くなる。
『すみません。これから気をつけます』
送信。
窓の外を眺める。
気が付けば。
赤ちゃんのことなんか、すっかり頭から抜けていた。
考えることが多すぎる。
処理しきれない。
◇
居酒屋。
エプロンをつける。
みことさんが、ふと周りを見る。
🎼👑「あれ、今日は一緒じゃないんだね」
🎼🍵「………あ」
言われて、気付く。
今日は、いない。
家。
まあでも、大丈夫かな。
父さん、帰ってきてもすぐ寝るし。
どうせ、気にしない。
俺にも無関心だったこと、あるし。
よく分からない自信。
根拠はない。
でも、たぶん。
死なない。
生きてる。
それでいい。
◇
居酒屋が終わる。
そのまま、家の近くのコンビニへ。
深夜帯は人が少ない。
レジの合間。
バックヤードで、少しだけ壁に寄りかかる。
目を閉じる。
───起こされる。
「翠宮?」
店長の声。
はっとする。
🎼🍵「すみません!」
まさかの爆睡。
時計を見る。
二十分以上。
「はは、若いな」
店長は笑う。
「成長期なんだから、深夜バイトなんかやめた方がいいんじゃない?」
冗談っぽく。
でも、少し本気。
俺は笑う。
🎼🍵「…やらなくちゃいけないので」
生活費、稼いでるのは俺だから。
その言葉は、言わない。
「…そうなんだな」
話を合わせるように、笑う。
店長は、肩をすくめる。
「無理すんなよ」
無理。
その基準も、よく分からない。
レジに戻る。
ガラス越しの夜は、静か。
家まで、あと少し。
玄関を開けたら。
あの小さな体は、どうなってるだろう。
考えない。
今は、まだ。
考えなくていいことにする。
でも。
胸の奥で。
紙に書いた“養育者(予定)”の文字が、
消えないまま、残っている。
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コメント
5件
そりゃあ学生なのにこんなにいっぱい背負い込んでたら混乱するって、、、、 女性の方???あれから何してるんだよぉ、、 一度に色々と押し寄せてきて全部を処理しきれてない感じ、、「無理する」ってことがなにか、🍵くんは良くわかってないから心配になる、、、!
まだ🍵くんは学生だし親になる意味が分からないよね、一人で抱え込まないで誰かに助けてもらってぇぇ😭😭 …っッッてか女性なにしてんのぉッッ?? 続き楽しみにしてます❤