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俺達は中央にある異様な雰囲気を放つドアを開けた。
すると、
「図書館…ですかね」
「でっっっっ…か!そしてたっっっっか!」
「規模が凄く大きいですわね。全て調べるのはこの人数でも不可能に等しいですわ」
「これならオトナなことしてもばれないね~♥」
そう、とても大きな図書館が一面に広がっていた。
前に天神が瞬殺した10mくらいある巨人よりも少し低いくらいの本棚が、軽く見まわしただけでも100はある。
そして階段の上にも同じように100以上もの本棚が大量に置かれていて、全ての棚にぎっしり本が詰まっている。
指揮が言った通りだが、9人いたとしてもおそらくはこの大量の本たちをすべて確認するのはできないに等しい。
まあ何故か衣川がどっかいってるわけだが。どうしたんだあいつ。
「やっほー☆皆、絶望の図書館…”no hope library”を見つけてくれたんだね!」
「頭幸せ野郎だ!」
「え…なんかそういうあだ名は解釈違いというか…まあいいや。この図書館、すっごい広いでしょ!なんせ、第二ゲーム以降も使える親切設計だからね!」
「第二ゲームもあんのか…」
「第三くらいまであるよ~。でね、皆これを探し回るのだるいっしょ?だから、ヒントをあげることにしたんだ!」
「ヒント?」
「ヒントは、”3つの黒い柱が指し示す先にある暗黒の書”だよ!頑張ってね!」
「ふおおおおおお!暗黒!暗黒が染み渡るううううううううううううううっ!!」
「キャラ崩壊すごいっすよ…」
「!わ、わた…じゃなくて、俺としたことが…っ!自我を失いかけていたぞ…!」
「暗黒の書って…推理しないとですかね?私頭使うの苦手で…」
「まあそうなりますわね」
俺達はいったん分かれて考えてみることにした。
すると、気づけばどこか行ってた衣川が俺のところに帰ってきた。
「暗黒の書ってこんな感じのやつじゃね?なんか降ってきたんだけどさ」
彼の手には「暗黒の書」と書かれた本があった。
真っ黒い表紙になんか禍々しいオーラがでている。
いかにも小指が憧れてそうな感じの本だ。
激しいノイズのうちに幸せが入ってきた。
「ねえ!待って!聞いてないって!おかしいよそれ!普通に謎解いてさ!ノルマ達成して!もらうはずだったのに!」
「頭幸せ?どうしたんだよ」
「なんで僕以上に幸運なんだよ!?今回なんか変なこと起きすぎだろ!天神があの代償引いてるし!あいつの幸運もあってさああ!僕の初舞台なのに!(放送禁止用語)が!blossomがやらかしてんのか!?ネームドどうなってんだああああ!!!」
「あー、あー、あー。ごめんごめん。そうそう、それが暗黒の書だよ!中身に犯人に迫れるいい事が書いてあるかもね!
読んでみよう!」
「頭幸せ野郎どうしたんだろうな」
「しらね」
「だよなー」
「この本読んでみっか?」
「そうするかー」
「おっけー」
あまりにも雑魚すぎる会話を繰り広げ、俺達は本を広げた。
まず最初に目次。10個ほど項目があり、かなり古い本なのか文字が読めないところがある。
しかし、項目名が「卯人と卯人亜種」「ウインドー族の扱い方」などであるから、おそらく日本に住む人外・大和人外についての本なのだろう。
「200ページくらいあるな。普段漫画しか読まねーから新鮮だ」
「なー、なんかここの所ぐるぐるしてあるし、なんかあんじゃね」
そういって俺が指さしたところには、赤ペンで項目が囲まれていた。
項目名は「その他の大和人外3」。
項目を一つ作ることが厳しいくらいマイナーな人外なのか、それとも特段書くことがないのか…。
まあとにかく、その章を見てみれば重要な何かはあるに違いない。
「えっと…。その他の大和人外3は、こっからだな」
「…このページには特に必要そうなのはないけど」
「一項目が見開き一ページなわけないだろ。200ページもあるんだし一項目20ページ近くあるんじゃね」
「そうだな。結構絞れてて楽だわ」
そして何ページがめくったころ、俺達の手は止まった。
そのページには大体1ページにつき2人外が載っていて、人外名にイラストを添えて特徴が書かれている。
俺達の視線の先は二ページ目の一番下だった。
そこには、「斬人」という人外が載っていた。
そして問題はイラスト。
華奢な体に似合わないほど大きい刃が腕から生え、刃からは血を垂らしている。
その流血さえも気にしないように、ほんのり笑みを浮かべている。
さながら血になれている感じだ。
そう、その見た目はまさに花芽だった。
「どういうことだこれ!?」
「一旦読んでみよう、花芽がどういうやつなのかもわかるかもしれねえ。流石にこのマッチ度で花芽が斬人じゃないってことはありえないしな」
項目には以下の通り示されていた。
斬人
分類:大和人外3類
誕生地:主に長野
隔離地:松山特区A
人口:約300人
知能レベル:Ⅽ
卯人の一部食人文化がある集落により狩られておりとても数が少なく絶滅危惧種に認定されている。
刃の部分はとても固く、ダイアモンドをしのぐほどで、とても鋭いので包丁や防具などにも使われる。
刃が一度折れると一生もどることはないので、最近は保護のため刃を取ることは禁止されている。
刃に栄養がいく分、身体は未発達な場合が多く一度病気にかかると多くの場合死んでしまう。
そのため特効薬が研究されているものの、数が少ないので難航している。
性格はとても人間に酷似していて、協調意識が強い。
「…なんだ斬人って。衣川知ってるか?」
「知らねー。300人だろ?それに特区Aだし…ガチで絶滅危惧種だな」
「てかこれ…やっぱ花芽…なのか?でもあいつ能力で刃出してるって…」
「うーん、じゃあそれが嘘で、本当の能力は別にある…とか?」
「嘘って…この状況で嘘つけるか?」
「花芽とは言うて2日くらいしか過ごしてないんだから分からんだろ」
「…でも覚悟決まりすぎてるだろ…」
その時、この重苦しい雰囲気に軽い足音が響いた。
足音がだんだんとうるさくなり、俺達の会話は反比例するように小さくなり、やがて聞こえなくなった。
背後に感じる、温かいような冷たいような視線が、”あの”人じゃないと信じたくて。
それを信じるために振り返らないといけない。
しかし振り返ったら、それこそ絶望の事実が俺を切り裂くことになる。
彼女の腕に生えた鋭い刃で。
「お二人とも、暗黒の書はどんな感じですか?」
「…花芽」
「斬人のお話ですか?300人しかいない種族が目の前にいるんですよ。人生でも一回も出会えない人がいるような種族に、こんな変な状況で会っちゃって。光栄なことですよ?」
「なんだよその態度…やっぱ能力じゃないのか、その刃」
「はい。本当の能力は別にありますし、その能力で…」
「貴志さんを殺したんです」
「え、嘘だろ」
「衣川さんが言うならわかるけど…木更津君がそれ言うの?じゃあ一緒に考えてみよっか。まず、木更津君から見て絶対に貴志さんを殺せない人は誰?」
「え…っと…まず俺だろ?それから…」
「木更津君は天神さんのことは見てないの?」
「あ、言われてみればずっとあいつの方見てたな。じゃああいつも無理か」
「貴志さんにあってない人も無理なんじゃないかな」
「貴志に…?」
「貴志さんは、ほとんどの時間木更津君と過ごしてたよね。だから、木更津君があってない人も無理なんじゃないかな?」
「じゃあ…小指と音端と…衣川もあってなかったっけ。あと猫手?」
「残ってるの誰かな?」
「……花芽」
「だね、分かったでしょ?しかも私貴志さんを見守ってて~って言われたから、なおさら」
「おかしいだろ…なんで殺せるんだ…」
「方法ってこと?私の能力で」
「いや、理由だよ理由!まだ2日くらいしか…!」
「そう?別に昔からなんかあればできるんじゃない?私の事木更津君はまだ全然知らないんだしさ」
「…でも…でも…!」
「信じたくないの?そっか。あ、衣川さんが暇になっちゃうよね。ちょっと練習しない?」
「…れん、しゅう?」
「そう、練習。これから多分私はみんなと戦うことになっちゃうから。だから、駆け引きみたいなのに慣れとこうよ」
そういうと、花芽は俺に手をかざす。
「私の、本当の能力。acting tragedy」
すると、俺の体は一瞬浮き上がった。
「木更津っ!」
衣川がこちらに走ってこようとしている。
しかし、なんだかその様子が遠い出来事のように見える。
今の俺はどんな状況なんだ?俺は今どこにいる?
俺の視界がぐらっと揺らぎ、地面に着地した感覚がじんわりと伝わる。
その三秒後ほどに、右足に激痛が走った。
俺は、この感覚になった時に何が起こっているのか知っている。
人呼んでこれは骨折だ。
「木更津ー!頼むから全力で逃げてくれ…!」
衣川の声が本棚越しに聞こえる。
おそらくだが、本棚の上を通り上から落とされたと思われる。
「無理!足!足が!おれて…!」
「はぁっ…?マジか…!」
「かわいそうに…でもこの状況ですから、次は衣川さんですかね?」
「…そう、だな…足はやめてほしいところだが…右はいいぜ、右は。俺左利きだからさ」
「私も左利きなんですよね。お揃いですね」
「acting tragedy」
「lightning magic!!」
花芽の能力で衣川の体が宙に浮くのが見えた。
そして衣川は能力で雷魔法を出している。
しかし、その軌道は花芽からズレている。
「やっぱり難しいですよね、遠距離で何かするのって」
「…ん?」
するとカチっという音が鳴った。
と思えば周囲が赤いライトで照らされ、パトカーのようなサイレンが鳴り響く。
そして、なんだか周囲が熱くなって…
上の方を見ると炎が迫ってきている。
どうやら衣川が何かのボタンを押したらしい。
衣川の体がまた戻ってくる。
「…なんでこれを知って…」
「さっき見つけたんだよ。偶然な」
「…まあそういうことにしておいてあげましょうか。普通なら”殺してない人”は知らないはずなんですが」
「助かるな、ありがとう。これは惚れるのも納得のやさしさ」
「衣川、何起こってるか分からんけど助けてくれたってことか?」
「いや、お前がこっから助かるかはお仲間が来てくれるかにかかってる。ま、頑張って脱出しようぜ」