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「貴方達の望み通り、出口を開いてあげるわ。ハクア、案内してあげて。」
「御意。」
意外にもフウカは、“森から出たい”と言うと快く承諾してくれた。
とてもありがたい事なのだが、何かが引っかかる。言葉にできない違和感がぐるぐると頭に中を回っているのだ。
フウカが、俺たち部外者の要望を快く受け入れてくれるはずがなかった。
いくら親しい間柄と言えど、彼女は神に仕える身、軽々しく侵入者を逃すなどあってはならない。
以前侵入した時も、一週間の労働を強いられたのだ。
ー何かがおかしい
「あなたの名前…フリードって言うの?それともあだ名?」
「あだ名みたいなもん」
「そうなの」
森を抜け出したところで、ナリアが言った。
自己紹介、してなかったっけか…
「…ハクアが行けるのはここまで。
あとは、自分で行って。」
森の出口で立ち止まったハクア。どうやら森の外には出ないらしい。
「どうしてよ?
少しくらい散歩でもしたら?」
「……そういう契約。森との契約。」
ナリアの問いかけに淡々と答えてそのまま、森の奥へ消えていった。
「…フリード」
「なんだハクア。外に出る気になったか」
顔をひょっこりと出したままのハクア
言い残すことでもあるんだか…
「…これは、フウカ様だけじゃない。ハクア達からの言葉。」
「だから何だよ…早く言えって」
「…ごめんなさい。」
「は?」
いきなり謝られて、ないはずの目を丸くする。
「…そして、検討を祈る。“二人の”探し人、見つかりますように。」
「……?」
どうやらハクアは何かを勘違いしているらしい。あえてこのままにして、あとでからかってやろうか…
「…森の御加護が在らんことを」
そう言い残して、今度こそ森の奥へと消えていったのだった。
「さて、今度はどこに行くんだ?帰れるなら帰りたいけど」
「…駄目。貴方は最後まで来てもらう。」
「けっ」
「次は“転生街区”よ」
「あそこ広いんだよ…」
「隅から隅まで探す。絶対よ」
どうやら、決意が固いらしい。
「さぁ、フリード。いきましょう、」
そう笑って、薄暗い街を走っていく。
何故か、すぐに追いかけることはしなかった。
肌を突き刺すように吹き抜ける北風に当たりながら、“転生街区”の入り口に続く一本道を眺める。
特に意味もなく、ポケットに手を突っ込んでみると、何か固い物が指先に触れた。
「なんだこれ」
ポケットから出してみると、青い宝石が嵌め込まれたロケットだった。
開いてみると、オルゴールのかわいらしい音色が聞こえてきた。ロケットの中に、オルゴールも入っているらしい。
曲と共に頭に流れ込むのは、いつかの星空。
十数年前の、あの星空だった。隣で微笑む彼女…
ー嗚呼そうだ、この景色は…
「ーーーー」
思い出しかけたあの不完全な記憶が、再び奥深くに引っ込んでいった。
「貴方ねぇ…ほんっとに方向音痴なの?また私だけ歩かせて。」
明らかに不機嫌そうなナリアの声で我に返る。
「あ?ああ…悪い…」
「本当に…困っちゃうわ。宿、見つけてきたわよ」
「そりゃ…どうも…」
「ほら。行きましょ」
俺の手をしっかりと握ったナリアは、“転生街区”と呼ばれる街区の入り口へと、足を踏み入れたのだった。
長い長い旅路の序章が、ようやく終わった気がする。
ポケットの中で、例のロケットがカチャカチャと音を立てて揺れていた。
第一章「私と貴方の人探し」
ー完ー
ーー
読者の皆様、大変お久しぶりでございます…
本当にごめんなさい!!最近忙しくて…()
なかなか更新ができない状況にありました…
定期考査もあるので…また更新が途絶えてしまうこともあるかと思いますが、どうか気長にお待ちくださいませm(_ _)m
どうか2章もよろしくお願いします!!(* . .)))