※死ネタ
昔々、あるところに、ドイツという男の子がおりました。
ドイツは仕事で忙しいお父さんの代わりに、毎日森の奥に住むお爺ちゃんにワインやパンやチーズなんかを届けていました。
そんなドイツは、村に友達がいません。
毎日1人で危険な森に行って帰ってくるドイツのことを、村の皆は『化け物』と呼びました。
あの森に行って無事に帰ってくるなんて、強くて恐ろしい化け物でもない限り無理だから、という、なんとも短絡的な理由です。
確かに森には狼がいるけれど、ドイツは一度だって襲われたことがありません。
なぜなら、森の狼は友達だったからです。
怪我をしていた狼を助けたドイツは、狼と仲良くなり、お互いに唯一の友達でした。
ドイツはお小遣いで買った干し肉を狼にあげ、狼はお爺ちゃんに持っていく用にと綺麗な花をくれました。
そのうち、狼はドイツに恋をしました。
狼の名前はイタリアといいます。
彼はドイツが来るまで森で1人きりでした。
ようやく仲良くなれた子を好きになるまで、時間はかからなかったのです。
イタリアは何度もお見舞いの花をプレゼントして、時には狩ってきたうさぎや鳥なんかも渡しました。
森を歩く時には必ず側で守り、2人はさらに仲良くなっていきました。
「ねえ、ドイツ」
「なんだ?」
「もしio死んだら、その時はドイツに食べてほしいんね!」
ある日、イタリアは急にそんなことを言い出しました。
「な、なんでそんなこと言うんだ?!イタリアが死ぬなんて、そんな…」
「心配してくれてありがと!でもね、最近ハンターの罠が増えてきてるんよ。おかげでうさぎも鹿も減っちゃって、冬の備えができないんね。君がくれる干し肉がなかったら、今頃飢えて人里に出てたかもしれないんよ」
はぁ…とため息をつき、イタリアは困ったような顔で笑います。
「食べてくれるなら、味付けはしないでほしいな。ioの味そのままを感じて欲しいんね!トマトやバジルも入れないでね、チーズだってダメなんだから!」
狼は肉食動物だから危険だと、村では教えられてきました。
今までも狼の被害はないし、ドイツも襲われていないのですから、そんなことは決してありません。
イタリアは冗談っぽく言いますが、干し肉の値段が安くなってきていることも踏まえ、ドイツは危機感が芽生えました。
このままでは、本当にイタリアが狩られてしまう!
そう思ったドイツは、イタリアと別れた後、お父さんと話してみることにしてみました。
「父さん、どうして狼は狙われるんだ?」
「どうしたんだ?急に。そんなの、狼は危ないからに決まっているじゃないか」
「でも、今まで人が襲われたことはない。そんなのおかしいだろ!」
そう言うと、お父さんは少し黙り、やがてこう言いました。
「…もうじき冬だ、そのうちわかる」
ドイツにその意味はわかりませんでしたが、いくら聞いてもそれ以上は答えてくれません。
「今日の夕飯はシチューだ、温かいうちに食べよう」
「…わかった」
明日ハンターのおじさんに聞いてみようと思い、その日は大人しく諦めました。
翌朝、ドイツはいつものカゴにワインとパン、そしてイタリアのお土産に干し肉を入れて、お爺ちゃんのところへ向かいました。
森に入ってすぐはイタリアもいましたが、用事があると言って引き返していったので、家の近くで待っているのです。
その時、遠くから大きな銃声が。
「!な、なんの音だ?!」
嫌な予感がして、ドイツは慌てて道を引き返しました。
「ようやく仕留めた!!」
「これで毛皮が手に入るぞ!」
「よくやった!」
口々に言うのは、村のハンターたちでした。
硝煙と鉄の匂いに咽せますが、無理矢理人を押し退け、仕留めたと言うそれを確認します。
「っイタリア!!!」
そこには、血を流してぐったりしているイタリアの姿がありました。
「おい!まだ死んでるかわからないんだ、危ないぞ!」
「イタリア、イタリア!!目を開けてくれ!!」
ハンターたちに止められながらも、ドイツはイタリアに声をかけ続けます。
すると、イタリアはうっすらと目を開き、ドイツを見て微笑みました。
「ドイツ…あはは…io、もうダメ…みたい…約束、守ってね…?」
「まだ息があるぞ!誰か!早くトドメをさせ!! 」
「やめてくれ!!イタリアを傷つけるな!!」
イタリアを守るように立ちはだかりますが、相手はプロのハンターで、しかも複数人。
ドイツはあっという間にイタリアから引き離され、イタリアは殺されてしまいました。
「あ…あ…うそ、うそだ…イタリア!イタリアァ!!」
カゴも落として必死に抵抗しますが、ハンターの1人に押さえられて近寄ることもできません。
「全く…お前ナチスさんとこのぼっちゃんだろ?帝国ジジイのところに行くなら早く行きな。今から解体作業なんだ、危ないぞ」
「嫌だ!!イタリアをこれ以上傷つけないでくれ!!俺の、俺の友達だから…っ」
「友達って…俺たちも仕事なんだよ、諦めてくれ。村のガキどもがいるだろ?」
「イタリアじゃなきゃダメなんだ!! 」
ドイツはイタリアの亡骸を守ろうと、何度もハンターたちに訴えました。
けれど、村には肉と毛皮を求める人々がたくさんいます。
ドイツ1人で止められるはずもなく、イタリアは解体されていきました。
牙や骨や爪は装飾品になるのでしょう。
立派な毛皮は衣服になるのでしょう。
肉はみんなに食べられるのでしょう。
悲しくて悲しくて、ドイツはずっと泣いていました。
イタリアだったものの側には、綺麗なお花がぱたりと置かれています。
きっと、ドイツのために集めてくれたお花です。
踏まれてくしゃくしゃだったけれど、ドイツが好きと言っていた花でした。
途中でイタリアが離れて行ったのは、これを集めるためだったのでしょうか。
もしもそうなら、ドイツのためだけにイタリアは命を落としたのでしょうか。
イタリアの肉は村中に配られ、毛皮は暖かそうなコートとなって、牙と爪と骨は綺麗な装飾品となって売られました。
ドイツは肉以外を片っ端から集め、一部を埋めてイタリアのお墓を作りました。
コートは厳しい冬を乗り越えるために必要だったので、ドイツは「寒さからイタリアが守ってくれる」と考えて、仕方なく着ることに。
そして、イタリアとの約束もしっかりと守りました。
「味付けはダメ…何かを添えるのも、一緒に調理するのもダメ…イタリアの味を変えたくない…」
油も使わず、薄く切られた肉をフライパンで焼き上げていきます。
焼いている時、また涙が溢れて止まりませんでした。
きっと村人たちは、冬越しの英気を養うつもりで濃い味付けにして、宴会料理にでもするのでしょう。
イタリアの本当の味を知っているのは、ドイツだけです。
お父さんはまだ帰っていなかったので、お父さんの分はそのような宴会料理風にしました。
1人の食卓で、ナイフとフォークで器用に切り分け、口に運びます。
少し弾力があって、独特の良い香りがしていて、ただ焼いただけなのにとても美味しいお肉でした。
食べている時も、涙は止まりません。
ですが、ドイツはイタリアの味を二度と忘れないでしょう。
「ご馳走様…イタリア…」
コメント
5件
やばい…今すぐその狩人共を殴りたい…
あぁ、悲しい😢サンマの腹わたのようにほろ苦い、、、! タイトル見てカニバかな?って思ったんですけど、異種恋愛、、、もっと深く刺さる性癖で歓喜乱舞しました☆ 狼のイタリア、絶対美形だから首だけは剥製とかにされたのかな、、、?なんて思ったりしてます。ドイツ君の絶望半端ねぇ、、、肉食動物の肉って基本的に硬いけど、ドイツ君それを一口一口噛み締めながら食べたんなら相当肉の味が出てなおさら涙したんかな。そうだと嬉しいな、、、お花取ってくるイタリア神獣並みに神々しく見えましたよ、ガチで。 幸せになれぇぇえええ!!!! なんでこんなにふつくしい小説が書けるんだ?私はヘドロしかできないのに、、、やっぱスゲェ好きです。