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「今日、夜空いてる?遊びたいんだけど」
「……いいよ。今日も暇」
「本当?じゃあ家行くね」
「うん」
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目を覚ます。朝の空気が部屋に漂う。カーテンの隙間から光がのぞく。部屋の中は影の冷たく湿った色で染まっている。僕はベットの上に居て、隣には見覚えのある男が眠っていた。
昨夜のことを思い出す。酔いが回っていたのだろう。やってしまった、という後悔より、そういうもんなのか、受け入れてしまう自分がいた。
「はぁ……」
昨夜の出来事によって出てきた疲れが今、排出される。あの出来事は今の僕にとって1番辛いものに感じた。高校時代の黒歴史を掘り起こされた気分だ。そんなことを彼は知る由もないだろう。
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昨日の夜。
僕は彼の愚痴を聞きながら酒を流し込んでいた。酒には強い方だったので、彼の方が先にクタクタになっていた。
彼の話を流しつつ聞いていると、彼は僕をじっと見つめた。何十秒も目が合った。彼はずっと頬を赤らめたままだ。すぐにでも眠ってしまいそうにしていた。
「どうしたの?そんなに見つめて」
「いやぁ……綺麗だね」
よく言われる言葉だった。美人とも言われないし、イケメンだとも言われない。人と会う度言われるのは「綺麗」の一言。
「ありがとう。よく言われる」
「よく言われる?みんな思ってると思うよ」
彼は微笑みながら言う。その笑みには惹かれるものがあった。彼もさぞかしモテただろう。それに、発言の一言一言が素直な言葉で純粋な彼を見ていると、自分への劣等感が押し寄せてくる。
「そうかな」
その言葉に返答はなかった。どうやら眠ってしまったらしい。ここが彼の家で良かったと思う。
僕は全ての食器を片付け、空き缶を捨てる。ついでに彼には毛布をかけようとする。もちろん、彼のものだ。そうして、彼に近づいていく。すると、目を開けた。まだまだ眠そうな目だ。
「あ、起こしちゃった?ごめん―――」
そう言い終わる前に彼は僕を押し倒した。声1つ出なかった。そのまま服の下に手を入れられる。彼の手はしなやかそうに見えたが、思うより力が強かった。
「どうした?」
「……好きかもしれない」
え、と思わず声が出る。その直後に彼は僕をぎゅっと抱き締めた。
「なんだか心地よくて。」
耳の近くでしゃべられる。顔に熱が籠ってくるのを感じた。好きって友だちとしてだろうか。そっちの方が納得できる。もし、恋愛感情としての好きならば、どうすればいいのだろう。告白を受けたのは初めてだった。
そんなことを考えているうちに彼の手が僕の身体中を触れようとする。僕はその手を何とか押さえようと手を重ねるが握り返される。今まで受けたことの無い純粋な好意を受けている。変な気持ちになってくる。
「……何する気なの」
彼は一言も発さずに立ち上がる。少しふらついている。そして僕の手を引いた。そのまま引かれ、ベットに座らされる。
「もしかして..」
「ダメかな?」
本来ならダメに決まってる。でも、もう既に変な気分になってしまっている。それに、彼の気持ちを受け入れつつある。
「…1回だけ。それ以上はなしね」
それだけいい、彼の口を手で塞ぐ。返答が来ないように、また、すぐにキスされないように。
そのまま、僕らは0時を過ぎるまで行為を続けた。
彼にそっと触れようとする。昨日よりもぐっすり眠っている。昨日のことはきっと忘れているだろう。だか、おそらく自分は彼のことを意識してしまっている。
だから、このことはもう忘れよう。こんな曖昧な関係はきっと良くない。このままでは高校時代の時となんの変化もないまま生きることになる。
彼が起きるのを待つ。最後に言葉を交わしたい。次もしも会った時はもう既に他人になっているのだから。
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