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マイッキーが出かけてから、家は静かすぎた。
時計の音が、
ぜんいちの思考を一秒ずつ刻んでいく。
「……遅いな」
まだ昼。
なのに、
“もう長い”って感じてしまう自分が嫌になる。
スマホを見る。
通知はない。
既読も、未読も、ない。
「忙しいだけ」
声に出して言う。
言わないと、
胸が潰れそうだった。
ゲームを起動する。
いつもなら集中できる画面。
でも今日は、
キーがやけに重い。
マイッキーの声が脳内で再生される。
「友達」
「最近ね」
「夜には戻る」
――最近って、いつから?
考えるな。
そう思うほど、
考えが増える。
スマホが震えた気がして、
反射で掴む。
違う。
錯覚。
「……疲れてるんだよ、きっと。」
自分に向けて吐き捨てる。
信じてるって、
決めたはずなのに。
ソファに沈んで、
天井を見る。
もし。
もし、
本当に“ただの友達”なら。
こんなふうに、
息が苦しくなるわけない。
「….嫌だよ」
誰にも届かない声。
夕方。
夜。
連絡は、
来ない。
ぜんいちは、
スマホを手放せなくなっていた。
画面を伏せて、
また開いて、
意味もなくロック解除する。
あの名前。
はっきり覚えてる。
忘れようとしても、
指が勝手に文字をなぞる。
探らない。
そんなこと絶対しないって、
何度も決める。
――でも、
決めるたびに、
“知りたい”が強くなる。
「信じてるんだって……」
自分に言い聞かせる声が、
だんだん震えていく。
信じたい。
疑いたくない。
でも、
信じるために
こんなに耐えてるの、おかしくないか?
ぜんいちは目を閉じる。
胸の奥が、
じわじわ崩れていく。
マイッキーは今、
どこで、
誰と、
どんな顔して笑ってる?
考えた瞬間、
喉が詰まる。
「……やめよう」
拳を握る。
爪が食い込む。
――それでも、
通知音が鳴ったら、
真っ先に喜ぶ自分がいるのが、
一番つらかった。