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宿屋を出て、三人でメルタテオスの探索を始める。
まずは教会などを見てまわり、昼食をとってから、しばらく歩いたところでそれっぽいお店を発見した。
「アイナさん、ありましたね! ミラエルツと同じ感じのお店!」
「結構探しちゃいましたね。
とりあえず魔法陣は買うけど、他にはどんな素材があるのかな?」
「それでは入ってみましょう。
足元が暗くなっていますので、ご注意ください」
「うん、ありがと。
こんにちは、お邪魔しまーす」
「ひぇっひぇっひぇっ……。いらっしゃいませ……」
「「「ひぇっ!?」」」
「ひぇっ……?」
お店の人の言葉に全員で驚くと、向こうも一緒に驚いていた。
「あ、あれ……? ここ、メルタテオスですよね?
急に、ミラエルツに戻っていませんよね……?」
「も、もちろんですよ。
でも……あれ? わたし、混乱してきました」
お店の人の風貌は、いわゆる『魔女のお婆さん』といった感じだ。
この人はミラエルツで見たことがあるんだけど……。
「ああ……お前さんたち、ミラエルツのお店にも行ったのかい……?
ひぇっひぇっひぇっ……」
「はい? もしかして、ここでもお店をやっていたんですか?」
「ああ、あっちはねぇ……アタシの姉さんがやってるんだよ……」
「えっ」
一瞬驚いたものの、すぐに納得した。
なるほど、同じ見た目と雰囲気だから驚いたけど、一卵性の姉妹なのかな。
「なるほど、よく似てますね。双子ですか?」
「ひぇっひぇっひぇっ……。
アタシの上に、もう一人いるよ……。三つ子なのさ……」
「ひぇっ」
それはさすがに予想外。
「姉さんは元気だったかい……?
さすがにこの歳になると、気軽に遊びに行けなくてねぇ……」
「確かに馬車でも1週間掛かりますしね。
お元気でしたよ、お会いしたのは2回ですけど」
「そうかい、そうかい。
それじゃうちでも、気軽に買っていっておくれねぇ……」
「ありがとうございます、見させて頂きますね」
「はい、ごゆっくり……」
お店の広さはミラエルツと同じくらいだ。
置いてある品物も基本的には同じような感じだけど、薬草の種類とかが少し違うみたい。
今回お目当ての魔法陣は……ああ、良かった。結構置いてあるぞ。
それじゃ、さっさと買っちゃおうかな。
「すいません。
ここからここまでと、あそこからあそこまでと、そこからそこまでください」
「ひぇっ……?」
お婆さんは思わず、といった感じで、エミリアさんとルークの方を見た。
「ミラエルツでもこうでしたので……。
お会計、よろしくお願いします……」
「お手数をお掛けします……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――はい、代金は確かに……。
それにしてもお前さん、こんな量をぽんっと買っちまうなんて……すごいんだねぇ……」
「え? そうですか?」
「わたしたちはミラエルツで2回見ましたし、何だか慣れてきましたね」
「そうですね……」
エミリアさんとルークが何やらぼそぼそ喋ってるけど、よく聞こえないなぁ?
「ひぇっひぇっひぇっ……。
ところで、姉さんは少し変わったものを見せてくれなかったかい……?」
「変わったもの、ですか?
もしかして、『竜の血』とか?」
「おぉ……。ついに手放したのか……」
「あと、『精霊の魂』と『不死鳥の羽』と『闇の石』も買わせて頂きました」
「ひぇっ……?
まさかそこら辺をすべて出すなんて……。買う方も買う方だけどねぇ……」
「あはは、高い買い物でした」
この4つだけで、金貨140枚だったからね。
「ふぅむ……。姉さんは金に困っても、認めない人には良いものは売らない性格だからねぇ……。
よし、アタシもとっておきを出しちまうかねぇ?」
「え? とっておきですか?」
「ここまででも、ずいぶんと買ってもらったからねぇ……。
ま、お金がまだあるならの話だけど……ちょっと待ってておくれ?」
そう言うとお婆さんはお店の奥に引っ込んで、しばらくすると瓶を抱えて戻ってきた。
「お待たせしたねぇ……。
生憎と姉さんほどは持ってはいないんだけど、これがアタシの取って置きさ……」
お婆さんの持ってきた瓶の中には、キラキラと輝く石がいくつも入っていた。
「これ、何ですか?」
「ああ、これは『光の魔導石』といって――」
「全部ください」
「ひぇっ!?」
「「ひぃ……」」
「そ、そんなに即決して良いのかい……?
使い道とか、分かるのかねぇ……?」
いやいや! これって『神剣デルトフィング』の素材のひとつだよ?
神器に近い素材のひとつだよ!? ここで買わなきゃいつ買うの!
「ひとまず、とある武器に使われていたことは知ってます!
これを探してました、全部買います。おいくらですか?」
「う、うーん……。まさか全部とはねぇ……。
さすがにそう来られると、アタシもちょっとお前さんを試したくなってきちまうねぇ……」
「えー……?」
しまった、もう少し焦らせば良かった!
……でも、もう遅いか。
「分かりました。何でもどうぞ」
「ひぇっひぇっひぇっ……。そうかい、そうかい。
それじゃ何をお願いしようかねぇ……」
お婆さんはしばらく考えたあと、怪しいドクロのネックレスを出してきた。
「お前さん、例の魔法陣を買っていくってことは……アーティファクト錬金をやるんだろう?
それならちょっと、このネックレスに効果付与をお願いできるかねぇ……」
「え? そんなことで良いんですか?」
「ひぇっ……?
だ、大丈夫かね……?」
「えぇっと、大丈夫ですけど……。
あ、付ける効果は何でも良いですか?」
「何でも……?」
「いえ。ステータスが良いとか、別の効果が良いとか……」
「別の効果……。
いやいや、お前さん。アーティファクト錬金を本当にやってるのかい……?」
「やってますよ、昨晩が初めてでしたけど」
「ああ、そうだったのかい。それじゃ、まだまだひよっこだねぇ……。
まぁ、できるところまでやってごらんな……」
「……?
それじゃ、とりあえず明日にまた来ますね」
「あ、明日……? 無理はしないようにねぇ……?」
「はい、それじゃ今日はありがとうございました。
ドクロのネックレスはお預かりしますね」
……うーん?
何だか最後の方、話が噛みあわなかった気がするけど……何だろう?
まぁ、ルークのネックレスのついでに、依頼されたネックレスにも何か付けることにしよう。
付くのは何でも良いけど、良すぎるものはドクロの方には付かないで欲しいかな。
付くなら絶対、ルークの方に……ってことで、ね。