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これは、最近演技が話題になっている目黒と阿部が、主演で共演した切ない恋の物語。
※死ネタ注意
目黒がその店に入ったのは、本当に偶然だった。
仕事へ向かう途中。
いつも利用している店は混んでいて、少し先に見つけた小さなテイクアウト専門のコーヒー店へ入った。
「いらっしゃいませ。」
その声に顔を上げて。
目黒は、一瞬言葉を失った。
カウンターの向こうにいたのは、阿部だった。
柔らかく笑って。
「ご注文、お決まりですか?」
「あ……。」
目黒は慌ててメニューを見る。
本当はいつも同じものしか頼まない。
それなのに。
「……おすすめって、ありますか?」
「おすすめですか?」
阿部が少し考える。
「今日ちょっと寒いので、カフェラテとかどうですか?」
「じゃあ、それで。」
「かしこまりました。」
阿部がコーヒーを作る。
ただそれを見ているだけなのに。
目黒の心臓はうるさかった。
「お待たせしました。」
「ありがとうございます。」
受け取る時。
一瞬だけ指先が触れた。
それだけで。
また胸が鳴った。
店を出てから。
目黒は一口飲む。
「……美味しい。」
そして思った。
明日も来よう。
___________
次の日。
目黒はまた店へ寄った。
「いらっしゃいませ。」
阿部を見つけただけで。
朝から少し嬉しくなった。
「カフェラテお願いします。」
「はい。」
その次の日も。
また次の日も。
気付けば。
毎日のように通っていた。
ある朝、カウンターにいたのは別の店員だった。
当然、阿部だって毎日働いているわけではない。
分かっている。
「ご注文は?」
「カフェラテで。」
「かしこまりました。」
いつもと同じもの。
味だってほとんど変わらない。
なのに。
店を出た目黒は、なんとなく寂しかった。
「……休みか。」
そして翌日。
「いらっしゃいませ。」
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#⛄️
kaede🍁
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阿部がいた。
それだけで。
「……よかった。」
小さく呟いてしまった。
「え?」
「何でもないです。」
自分でも単純だと思う。
阿部がいる日は嬉しい。
いない日は悲しい。
いつの間にか。
仕事前にコーヒーを買うことより。
阿部に会うことが目的になっていた。
___________
何度も通っているうちに少しずつ変化があった。
ある日、目黒が注文しようとすると。
阿部が先に言った。
「カフェラテですよね?」
「……。」
目黒は固まった。
「あれ?」
阿部が不安そうになる。
「違いました?」
「いや。」
嬉しくて。
笑ってしまう。
「合ってます。」
「よかった。」
阿部も笑った。
「いつも頼んでくれるから覚えちゃいました。」
――覚えてくれてる。
その日一日。
目黒は機嫌がよかった。
___________
それから会話が増えた。
「今日早いですね。」
「仕事の時間がいつもより早くて。」
「大変ですね。」
「でもここ寄れたから。」
「ふふ、ありがとうございます。」
別の日には。
「今日は暑いですね。」
「暑いです。」
「カフェラテ、アイスにします?」
「お願いします。」
「やっぱり。」
そんな。
ほんの少しの会話。
数分もない時間。
それでも目黒は毎日の楽しみだった。
阿部の名前も。
名札を見て知った。
何度も。
頭の中で呼んだ。
でも。
直接呼ぶ勇気はなかった。
___________
そして。
通い始めてしばらく経った頃。
目黒は仕事へ向かう車の中で、一枚の小さな紙を握っていた。
連絡先。
昨日の夜から何度も書き直した。
渡す。
やっぱりやめる。
何度も迷った。
でも。
このままずっと客と店員の関係だけなのは嫌だった。
店へ入る。
「いらっしゃいませ。」
今日も。
阿部がいた。
「おはようございます。」
「おはようございます。今日もカフェラテ?」
「はい。」
いつものように。
阿部が作ってくれる。
「お待たせしました。」
「ありがとうございます。」
受け取る。
でも。
今日は帰らなかった。
「あの。」
「はい?」
阿部が目黒を見る。
「これ……。」
紙を差し出した。
阿部が目を瞬く。
「俺の連絡先です。」
「迷惑だったら捨ててください。」
緊張しすぎて。
それ以上何も言えなかった。
「じゃあ……仕事行ってきます。」
逃げるように店を出た。
___________
その日。
目黒は何度スマホを確認したか分からなかった。
昼。
来ない。
夕方。
来ない。
「……やっぱり駄目だったかな。」
仕事が終わる。
スマホを見る。
何もない。
仕方ない。
そもそも、客から突然連絡先を渡されても困るだろう。
明日から店へ行くの少し気まずい。
そんなことを考えながら帰宅した。
着替えて。
ソファへ座った時。
スマホが震えた。
知らない連絡先。
「……。」
心臓が跳ねた。
恐る恐る開く。
『こんばんは。コーヒーのお店の阿部です。遅くなってごめんなさい』
「……。」
目黒は勢いよく起き上がった。
続けて。
もう一通。
『連絡先ありがとうございました。びっくりしたけど、嬉しかったです』
思わず顔を覆った。
「……やば。」
嬉しい。
本当に。
嬉しい。
すぐに返したい。
でも。
待っていたと思われるのは恥ずかしい。
三分くらい待とう。
そう思った。
――十秒。
「無理。」
目黒はスマホを手に取った。
『連絡ありがとうございます。迷惑じゃなかったですか?』
送信。
すぐに既読がついた。
『全然。俺も、いつも来てくれる人だって覚えてたので』
目黒は笑った。
その夜。
二人は初めて。
カウンター越しではなく。
ゆっくり話をした。
好きな食べ物。
仕事のこと。
休日の過ごし方。
くだらない話まで。
気付けば。
日付が変わっていた。
『明日も仕事ですよね? そろそろ寝ます?』
阿部から届く。
『そうですね。でも明日もお店行きます』
少しして。
『待ってます』
たった四文字。
それだけで。
明日の朝が。
待ち遠しくなった。
偶然入った。
小さなコーヒー店。
一杯のカフェラテから始まった恋が。
ようやく。
ほんの少しだけ。
動き始めた。
___________
連絡先を交換してから。
二人の距離は、少しずつ近付いていった。
最初は。
『今日も仕事ですか?』
『仕事です。阿部さんは?』
そんな会話だった。
それがいつの間にか。
『今日こんなことがあって』
『聞いてください』
何でもない出来事まで送り合うようになった。
朝起きれば連絡が来ている。
仕事が終われば、自然と阿部に連絡する。
気付けば。
一日の始まりと終わりに、いつも阿部がいた。
___________
「今日もカフェラテ?」
「お願いします。」
店で会えば今までと同じ。
客と店員。
それなのに。
阿部がコーヒーを渡しながら、小さな声で言う。
「昨日、寝るの遅かったでしょ。」
「阿部さんも。」
「目黒さんが話終わらせないから。」
「阿部さんも返信してくれるからじゃないですか。」
「ふふっ。」
そんな会話だけで目黒は嬉しかった。
阿部が笑う。
少し困った顔をする。
照れる。
考え事をすると、ほんの少し首を傾げる。
その全部が好きだった。
___________
やがて。
二人は休みの日を合わせて会うようになった。
最初はランチだけ。
次は映画。
その次は一緒に買い物をして。
気付けば。
朝から夜まで一緒に過ごすようになっていた。
「目黒さん。」
「ん?」
「これ似合うと思う?」
服を身体に合わせて、阿部が聞く。
「似合う。」
「ちゃんと見た?」
「見てる。」
「何でも似合うって言うじゃん。」
「だって似合うから。」
「参考にならないなぁ。」
そう言いながら笑う。
目黒はまた思う。
――好きだな。
___________
ある休日。
二人で夕飯を食べたあと、夜の街を並んで歩いていた。
「今日楽しかった。」
阿部が言う。
「俺も。」
「次どこ行く?」
「もう次の話?」
「嫌?」
「嬉しい。」
阿部が笑う。
その顔を見て、目黒は足を止めた。
「あの。」
「ん?」
阿部も立ち止まる。
ずっと言おうと思っていた。
でも。
今の関係を壊すのが怖くて。
言えなかった。
それでも、もう友達のままではいられなかった。
「阿部さん。」
「はい。」
「俺。」
目黒は一度息を吸った。
「阿部さんのことが好きです。」
阿部の目が大きくなる。
「初めてお店で会った時、一目惚れでした。」
「……。」
「だから毎日通って。」
「え?」
阿部が少し笑う。
「コーヒー飲みたかったからじゃなかったの?」
「阿部さんに会いたかったからです。」
「そうだったんだ……。」
「阿部さんがいない日は、めちゃくちゃ落ち込んでました。」
「ふふっ。」
「笑わないでください。」
「ごめん。」
阿部は嬉しそうだった。
目黒は続ける。
「連絡もらえた時、本当に嬉しくて。」
「一緒に出かけるようになって。」
「もっと好きになりました。」
阿部の表情も。
仕草も。
笑った声も。
真剣に話を聞いてくれるところも。
少し照れ屋なところも。
全部。
「俺と付き合ってください。」
言った。
もう。
戻せない。
阿部はしばらく黙っていた。
その数秒が。
目黒にはものすごく長く感じた。
やがて。
阿部が小さく笑った。
「……俺も。」
「え?」
「目黒さんのこと、好きです。」
目黒は。
一瞬理解できなかった。
「……本当に?」
「うん。」
阿部が照れたように笑う。
「俺も連絡するの毎日楽しみだったし。」
「休み合わせて会えるのも嬉しかった。」
「目黒さんといると楽しいし。」
少しだけ。
恥ずかしそうに目を逸らす。
「会えない日は、寂しいって思うようになってた。」
「……。」
「だから。」
阿部が目黒を見る。
「よろしくお願いします。」
その瞬間。
目黒の顔が一気に緩んだ。
「……抱き締めてもいい?」
「今聞くの?」
「駄目?」
阿部は少し迷ってから。
小さく首を振った。
「……いいよ。」
目黒は。
そっと阿部を抱き締めた。
思っていたより。
ずっと近い。
「……目黒さん。」
「はい。」
「ちょっと強い。」
「あ、ごめん。」
慌てて緩めると。
阿部が胸元で笑った。
「緊張してる?」
「してます。」
「俺も。」
しばらく。
二人とも離れなかった。
___________
「そういえば。」
帰り道。
阿部が言った。
「付き合ったんだから、目黒さんって呼ぶのやめようかな。」
「本当?」
「何がいい?」
目黒は少し考える。
「めめ。」
「……めめ?」
「嫌?」
阿部は一度呼んでみる。
「めめ。」
たったそれだけなのに。
目黒が嬉しそうに笑った。
「それがいい。」
「じゃあ、めめ。」
「はい。」
「俺のことは?」
「……あべちゃん。」
「急に距離近くなったね。」
「駄目?」
阿部は笑って。
「いいよ。」
と答えた。
その日から。
毎朝コーヒーを買いに来ていた常連客と。
その人をいつの間にか待つようになっていた店員は。
お互いを「あべちゃん」と「めめ」と呼ぶ、恋人同士になった。
コメント
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みらさん、第26話読み終えました。コーヒーショップでの毎日が、二人の特別な時間に変わっていく過程が本当に丁寧で、じんわり心に沁みました。特に「あべちゃん」「めめ」という呼び方に変わった瞬間、距離がグッと縮まった感じがして、読んでるこっちまで温かい気持ちに。連絡先を渡したあとの「十秒。無理。」のところ、めっちゃわかるなあって思わず笑ってしまいました。この先、二人にどんな日々が待ってるのか、続きがすごく気になります。