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「明日の授業は······」
自分の部屋にいる咲幸は学校に配られた時間割表のプリントを見ながら明日の準備をした。
「明日の準備は終わり。もうそろそろ寝よう。」
短い針が22時を指している時計を見た咲幸はベットに向かって歩きながら独り言を言った。
“悲しい歌だね······。”
「そうね。本当に······悲しい歌ね。」
夕花梨の言葉を思い出した咲幸は白い机の上に置いている手回し式オルゴールの方に見つめながら言った。
見るからにアンティークそうなオルゴールを開けると中身は右側には手回し式の機械が入っていて、左側には歌詞が彫っていた。咲幸が歌っていたあの歌の歌詞が───。
🎼.•*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♪
オルゴールの手回しを回す度に悲しくも優しい音色が部屋中に響いていく。
あまりこの曲を聞いていくと気が気でなかった。咲幸は手回しを回すのを止めた。
オルゴールを机に置き、温かい布団の中に入った咲幸は天井を見た。天井には豆電球でオレンジに染まっていて、星空の蓄光ステッカーが優しく光っている。
咲幸は寝返るとクマのぬいぐるみが目に入った。そのぬいぐるみはくたびれていて、首には色褪せている赤と緑のチェック柄のリボンを巻いている。咲幸はぬいぐるみを抱きしめた。
「お母さん······。」
(······どうして私を捨てたの?)
咲幸は悲しい顔で苦しそうな声で母を呼んだ。勿論、咲幸の質問を答えてくれる事はなく、ただただ静寂に包まれていくだけだった。
(······早く寝なきゃ。)
咲幸はそう思いながら目を閉じた。目を閉じたと同時に涙が頬を伝い、そしてこぼれ落ちていった───······。
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