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なぜだろうか? なんで私はこの子を見るとイライラするのだろうか?
放課後の教室で涙をこぼしながら私を見る少女はしゃっくりで肩を小刻みに揺らす。
それがまた私をイライラさせる。
私は涙で濡れた頬を摘まむと、大きく体を跳ねさしゃっくりを止める。涙を溜めた目には怯えが見える。自分でもわざとらしく感じる舌打ちをして摘まんでいた頬を引っ張る。
「いたいっ」
その声にまたイラっとする。さっきからイライラしっぱなしの私は頬を押える渡邊詩織の肩を強めに押す。
よろける詩織は机に手を付き転倒を防ぐが、斜めに傾いた机から中身がこぼれる。床に散らばる教科書の中にアニメ調のキャラが混ざっていることに気付く。
「かれん……まこ?」
手に取るそれはラバー製のキーホルダー。三頭身のキャラクターの足元に書いてあるローマ字を音にして口に出すと同時に詩織が手を伸ばし、私からキーホルダーを奪い取る。
予想だにしない思わぬ行動に一瞬あっけに取られるが、キーホルダーを大事そうに抱える姿と、私に盾突いたことにイラっとした私は思わず詩織の頬を叩いてしまう。
乾いた音が響き地面に座り込み頬を押え泣く詩織の声と、自分の手に残る痛みが腕を伝わって頭に痺れとして伝わる。
やってしまったという罪悪感が痺れた頭を支配しようとするが、なんで私が罪悪感を感じなければいけないのだという怒りに似た感情が腹の底から湧いて来て、座り込む詩織の襟首を掴もうと手を伸ばす。
「弥生~帰ろうよ」
教室の出入り口から私の名前を呼ばれ我に返る。
「ん? なんかあった?」
「ううん、別になんでもない。帰ろうよ」
伸ばした手を止め友達の方を向いて答える。視界の端に涙を床にこぼす詩織の姿が見え、胸にチクチクした痛みを感じるが、気付かない振りをしてその場を立ち去る。