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ふと、視線を感じて振り返る。布の隙間から、一瞬アレクと目が合った。
直後。
ドゴォォォォンッ!!!!!
本日一番の爆音が響き渡った。
明らかに不機嫌な表情のアレクが、壁を叩き壊しているのが見える。
その後ろでは、ベルシュタインの騎士たちが魔法集塵機で粉塵を吸い取り、職人たちが震えながらガラス板をはめ込んでいた。
(……完全に怯えてるじゃない。かわいそうに)
***
翌日。
リニューアルされたレストランは、熱気に包まれていた。
厨房は全面ガラス張り。
客席から、料理人たちの手元がすべて見える。
目の前の窯で焼き上がる、お花のピザ。繊細な飴細工を飾った、宝石のようなチューリップケーキ。香り高いハーブティー。それらが次々とテーブルへ運ばれていく。
記者会見と試食会に招かれた令嬢たちが、歓声を上げた。
「すごい……! なんてお洒落なの!」
「調理場が全部見えるなんて、これ以上安心なことはないわ!」
レオンが中央へ歩み出た。その途端、場の空気が変わりざわめきが静まった。誰もが無意識に、彼へ視線を向けていた。
「皆様。本日はお越しいただき、ありがとうございます」
記者たちが一斉に映像魔石をかざす。
パシャッ、パシャッ――。
光が室内に満ちる。
レオンは隙のない微笑みを浮かべ、ハーブティーを手に取った。
「まずは僕自身が、この店のお茶と料理をいただきましょう」
会場がざわめく。王族自らが口にする。それ以上の安全証明はない。
レオンは優雅にハーブティーを飲み、料理を一口食べた。
そして、柔らかく微笑む。
「……とても美味しいですね」
その瞬間、会場の空気が爆発した。
「わ、私も同じものを!」
「今すぐ予約を入れさせて!」
「このレストラン、王都中で話題になりますわ!」
厨房は一気に大忙しになった。
「次の皿、急げ!!」
料理長の声が飛ぶ。だがその顔は、生き生きとしていた。
私も袖をまくる。
「みんな、手が足りないなら私も手伝うわ。忙しい時ほど慌てずにね!」
毒事件で炎上したはずの店は、その逆風すら追い風に変え、今や王都でいちばん話題のレストランへと生まれ変わっていた。
──この時はまだ、この平和がずっと続くのだと、私はそう思っていた。