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風見は淡白な博視と違ってしつこいから、あと何回かは中に出されてしまうんだろう。
だがまぁ、どうせ明日には緊急避妊薬をもらうつもりだ。
そんなことよりも、帰ったら風見がもったい付けて教えてくれなかったことを父親に色々聞いてみなくてはいけない。
(何で紗英の課のことに高嶺尽が口出しして来てるのぉ? 何でパパは紗英が沢山仕事押し付けられてるのに助けてくれないのぉ? 紗英が可愛くないのぉ~?)
って。
他の男たち同様、紗英が瞳を潤ませて頼みさえすれば、父親だってイチコロだ。
きっと、いくら自分より立場が上の常務からの命令でも、何とか風見に命令して、また天莉に紗英の仕事を押し付けられるよう手配してくれるだろう。
フラれアラサー余り物女な玉木天莉には、紗英みたいな後ろ盾なんてないのだから。
(さっさとまた、私の仕事をこなすコマになってよね、せぇーんぱいっ♥)
高嶺尽が紗英の課のことを気にしたのだってきっと気まぐれだ。
もうほとぼりも冷めている頃だろう。
紗英は軽い気持ちでそう思っていたのだが――。
***
(何で先輩なんかが高嶺常務と婚約してるの!? 博視はキープに過ぎなかったってこと!? 何て強かでいやらしい女なの! ムカつくぅー!)
帰宅して父親に色々問い詰めたらそんな話を聞かされて、怒りの余り頭が大渋滞を起こしてしまった紗英だ。
父・則夫は、裏でコソコソやっている事業の絡みで、目の上のタンコブ的存在の高嶺尽を、何とかして自分の支配下に置きたいらしい。
「それでな、紗英。お前にも一肌脱いでもらいたいんだが」
紗英にはよく分からなかったけれど、玉木天莉を陥れることで、ゆくゆくは高嶺尽を操れるようになるらしい。
則夫の話では、身体の自由を奪う薬入りの酒を天莉に飲ませて、調子が悪くなった天莉を休ませる体で、則夫があらかじめ押さえておいた部屋へ連れて行って休ませるのが紗英の仕事。
「一人じゃ運ぶのがきついと思ったら、横野をうまく使うんだ」
則夫の言葉に、紗英はコクッと頷いた。
天莉と面識があって、頼られると嫌と言えない天莉の性格を熟知している紗英ならば簡単な仕事だ。
(パパ、うまく出来たらお小遣いたくさんくれるって言ってくれたしぃ~。それに……)
何を思ったのか、則夫は「高嶺をわしの配下に出来たら、紗英の婿は高嶺にすげ替えてやってもいいぞ?」と言ってくれた。
則夫がどんなにバックアップしても、元の能力がそこそこの博視では大きく飛躍することは出来ないが、高嶺尽ならば放っておいても自力でどんどん高みへ昇っていけるからな?と言われたら、紗英にも妙に納得出来た。
紗英は知らなかったけれど、高嶺尽は容姿や才覚だけでなく、出自もかなりいい、いわゆるお坊ちゃまらしい。
(お婿さんのすげ替え、紗英よりパパの方が乗り気ぃ~?)
願ったり叶ったりな父からの提案だったけれど、紗英は父親の思惑が透けて見えたことでわざともったい付けるみたいに「えっ?」と驚いた顔をしてみせた。
そうしたら案の定というべきか。則夫は畳み掛けるみたいに「腹の子のことなら心配いらんぞ? 子供ごとお前のことを受け入れさせることも可能だ。――だからまぁ、なんだ。そこは深く考えずに紗英が好きな男を選ぶといい」とやたら強気で。
言葉こそ紗英の好きにしたらいいと言いながらも、実際には高嶺に乗り換えなさいと言う願望がスケスケ。
だからこそ、元々博視とは別れる気満々な紗英だったけれど、一応建前として「えぇー、そんなことしたら博視が可哀想だよぉ?」と心にもないことを言って優しい娘の仮面で父をヤキモキさせて。内心ではニンマリほくそ笑んだのだ。
それに、何より――。
(おバカな先輩をズタボロにしてぇ、その上で婚約者をもう一度奪ってやるのもめちゃくちゃ楽しそうだしぃ~? 紗英ぇ、俄然やる気が出てきたかもぉ~♥)
***
『いつもは薬を盛る役は風見斗利彦がやっているからね。やり方は彼に聞くといい』と則夫から言われた紗英は、心の中で(うん、知ってるよぅ?)と答えていた。
ついでに風見への報酬が、ターゲットの蹂躙役に己れも加えてもらうことだということも、風見との情事の際に聞かされて知っていた紗英だ。
『あれを飲ませるとね、どんなに澄ました女でも蜜をだらだらこぼして男を受け入れるんだ。私は男だからよくは分からんが、相当気持ちいんだろうよ』
ククッと下卑た笑いを浮かべた後で、『実は今、ここにほんのちょっとだけちょろまかしたのがあるんだけど、試してみる?』と聞かれて、紗英は興味津々になった。
でも風見ともう一度するのは嫌だったので、『今度の機会にぃ~』と如何にも次があるような思わせぶりなセリフを残して、その薬を風見にキープさせておいた。
数か月前、風見がまた父・則夫から例の仕事を頼まれたと聞いたとき、紗英もその会場へ出向いて父親が押さえていた部屋とは別の部屋を取って、そこで風見が隠し持っていた薬を飲んでみることにしたのだ。
『風見はぁ~、ターゲットの女の子を好きなように可愛がってあげたらいいじゃん? 紗英だとぉ、やっぱりパパへの遠慮があってはっちゃけ切れないでしょぉ~? 代わりに紗英の方へ本来のお客さんを回してくれなぁい?』
紗英がそう提案したら、一瞬驚いた顔をした風見だったけれど、次の瞬間にはニタァーッと気持ちの悪い笑みを浮かべて。
紗英に液体入りの小瓶を渡して「契約成立だ」と耳打ちしてきた。
要するに利害の一致。
風見と手を組んで、父親の目を盗んでイケナイ遊びをした紗英だ。
(だってぇ~、何だかよく分からないお仕事の対価で接待を受けるっていう男の人たちぃ~、二人ともアスマモル薬品の社員さんだって言うんだもぉ~ん。上手くすればミライでお婿さん候補見つけるよりエリートだよぉ?)
元々淫乱で感じやすいタイプの紗英だったけれど、あの薬を使った時の高揚感は異常で。
どこに触れられても電気が走ったみたいに気持ちよくてたまらなかった。
そのうえ身体の自由がきかなくなることや、うまくしゃべれなくなることなんて今まで経験したことがなかったから、その不自由さに物凄く興奮したのを覚えている。
紗英を抱いてくれた男たちの一人――ザキと名乗っていた――がまた、特殊性癖な変態だったのも、紗英には最高過ぎて。
お尻でも気持ちよくなれるだなんて、紗英は初めて知った。
(最初はすっごく痛かったけどぉー、されてるうちにすぐに慣れちゃったしぃー、どんなに中に出されても妊娠の心配しなくていいとかぁ、お尻でのエッチにハマる人がいるの、分かるぅー)
どういう基準で選ばれた男がターゲットを抱きに来るのかは、紗英には分からない。
分からないけれど、ザキとオッキーコンビになら、いつかまた♥と思ってしまった。
***
今回はそのおもてなしの会場が親睦会で。裏パーティーの生贄候補が玉木天莉らしい。
当然紗英はルンルンで天莉を罠にハメた。
そうして――。
あの親睦会から半月余り。
玉木天莉が有給休暇で会社を休んでいる。
その間に、紗英も三日ほど流産したと言う自作自演のために、仕事を無断欠勤したのだけれど、まさかそんな自分よりも天莉の方が長く休むだなんて、驚き以外の何ものでもない。
二人の部下に突発的に休まれた風見は、仕事に追われててんてこ舞い。
もちろん紗英が休んだことはほとんど影響はなかったのだけれど、問題は天莉が休んでいることだ。
このところずっと残業続きで天莉の仕事の穴埋めをしている風見だったが、へっぽこ風見の手に負える量の仕事ではないらしい。
(先輩がいないと風見も大変なんだぁ。ふふっ。何かいい気味ぃ~♪)
少なくとも紗英が入社してからずっと、こんなに長期間天莉が休んだことはない。
(博視と駄目になった時でさえ頑張ってたのにねっ! せんぱぁ~い、ご愁傷さまぁ~♥)
さすがに凌辱の限りを尽くされて、相当こたえたに違いない。